百四十五話 合鍵

喫茶店『天使の扉』での最初のご奉仕を終え、帰路につく私…。


憧れで愛おしい翼さんの部屋に帰るんだ…。


翼さんの部屋を、私たちの愛の巣にするんだ…!


初めてのお勤めで心身ともに疲れた身体を、翼さんのベッドで癒すのだー…。


そんな淡い妄想を打ち砕くように、隣を歩く摩耶…。


歩きスマホをしながら、歩いている摩耶を注意しようとする私…。


摩耶のスマホを取り上げ、私の頭上に掲げる…!


取れるものなら取ってみなさい…!!


摩耶は必死にジャンプしながら、私が取ったスマホを取り戻そうとする…。


それでも、摩耶の低身長では取れないのであった…。


摩耶はジャンプするのをやめたので、諦めたと思ったのだけれど…。


その数秒後、摩耶が私の脛に渾身のローキックをお見舞いしてきたのだ…!!


いわゆる弁慶の泣きどころにクリーンヒットする摩耶のローキック…!!


私はあまりの痛さに、片膝をついてうずくまってしまう…。


その隙に、摩耶は素早くスマホを奪い去った…。


やられた…。摩耶め…。やはりこいつは好戦的だな…。


この私に片膝をつかせるとは…!?




意気揚々と自分のスマホを取り返して、歩き出す摩耶…。


私に捨てセリフを言って、悠然と歩き出す摩耶…。


ククク、摩耶め。勝負に勝って戦いに負けたのだ…。


その事実にまだお前は気づいていないのだろう…。


そのまま翼さんの部屋に歩いて行っても、合鍵を持っているのは、この私なのだ…!


ふふふ、愛しの翼さんの部屋に入れなくて、キョドって無様な摩耶の姿が眼に浮かぶ…。


その姿を数分眺めて堪能してあげようかしら…?


そう思っているうちに、摩耶は翼さんのアパートの階段を登り始めている…。


天界の禁断の扉を開闢するのは、この堕天使ノアが持つ悪魔の鍵が必要なのだ…!


どうしても開けてほしいなら、この堕天使ノアにひざまずくが良い…。


そんな中二病妄想を、心の中でしている私…。




そうこうしているうちに、摩耶は翼さんの部屋の玄関の前に立った…。


当たり前だけど、鍵しまっているわよ…。摩耶め…。


しかし、摩耶は自分のホットパンツのポケットから、自然な動きで鍵を取り出した…。


ま、まさか摩耶も翼さんの部屋の合鍵を持っていたのか…!?


私はその衝撃な事実に、愕然とするのであった…。


たまに翼さんの部屋にお泊りする摩耶だから、合鍵持っていても変ではないのか…。


ちきしょうめ、合鍵持っているのは私だけだと思ったのに〜!?


なんで翼さんは、私に合鍵渡したんだよ〜?


私の疑問をよそに、摩耶は当たり前のごとく玄関の鍵を開けるのであった…。

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