二百三十二話 茫然

「悪魔と契約した人間を天使たちは赦さないでしょう…」

女悪魔グモレリーと契約したことが速攻、翼さんにバレてしまった私…。

どうしよう、どうしよう…。どうしたらいいかわからない…。

「ノアちゃん、悪い事は言わないわ…。今からここから逃げなさい」

え?逃げる!?翼さんと別れなければいけないの!?

「そう、もう私とも一緒にはいられない。店長と天使側の人間達がノアちゃんを狙ってくるでしょう」

「あそこに来ていたお嬢様、ノアちゃんをいつも指名していた二人組覚えているわよね?」

覚えている…。私が咀嚼したものをいつも食べたいと言っていたお嬢様方だ…。

「店長は大天使で、もうノアちゃんが悪魔と契約したことを感づいてるかもしれない」

店長は大天使で、第七感セブンセンスとか千里眼というスキルがあるらしい。

第七感と表記しているが、あらゆるものを超越した感性らしかった…。

お店に来ていたお嬢様二人は店長が契約した天使側の人間…。

その中でも精鋭で、教会に属しているエクソシスターズらしかった。

らしかったと書いたけれども、私にはちんぷんかんぷんな話である…。

「あの二人は天使側の人間、しかも悪魔側の人間を狩ることが任務の人間…」

悪魔側の人間を狩る任務をする天使側の人間…。

そんな存在がいるのか。私は冷や汗で体がぐっしょりになった。

「特にあの二人は残忍だと聞いているわ。悪魔側の人間を殺した後の欠片を食べると言われている」

欠片って肉片ってことですか???恐ろしすぎる…。

悪魔とか悪魔と契約した人間を、いたぶり殺すのが趣味らしい…。

非常に危ない二人らしかった…。

赤のボディコンの女性は、炎属性で炎獄というスキルで異端者を焼き殺すらしい…。

無口だった女性は、スキル自体あまり知られてなくて戦闘スタイルも謎らしかった。

翼さんが色々説明してくれるが、私は全部理解できなかった…。

何より、翼さんが別れなければならないのが嫌だった…。

「だから、荷物をまとめて早くここから逃げなさい。なんならノアちゃんの実家に帰りなさい」

翼さんは私のリュックを持ってきてくれた。そして着替えも手伝ってくれた。

「私が早くあなたの魔力を浄化できればこんな別れにならなかったのに…」

私はいきなり翼さんと別れることになり、また涙が止まらなくなった…。

「ノアちゃんの実家なら、あの二人の担当地区とは離れすぎているから当分は安心よ」

翼さんは電車賃としてお金を渡してくれた。

私は、翼さんと別れたくなくていやいやと首を横に振る…。

私は涙が止まらず、嗚咽しか出なかった…。

「ダメよ、わがまま言わないで…。私はノアちゃんの敵になりたくないの…」

すっかり着替えて、リュックも背負った私をまた翼さんが抱きしめた。

もうこれで、お別れなのであろうか??悲しすぎる…。

いやだ、いやだ翼さんと別れたくない…。

翼さんは優しく私の身体を支えて、エスコートするように部屋の玄関まで誘導する。

私の身体は不思議なことに全く言うことが聞かず、翼さんのなすがままだった。

私は涙が止まらないし、嗚咽で今も何も言うことができない…。

その間に翼さんは玄関のドアを開けて、私が出ていけるように誘導している…。

私の身体はもう、玄関の外に出てしまっていた…。

「こんな形でお別れなのは悲しいけれど、ノアちゃんさようなら…」

翼さんは一筋、とても綺麗な涙を流して、私にお別れの挨拶をする…。

私だって、こんな急な別れは嫌です…!

私の身体はまだ言うことが聞かず、不思議な感覚だった…。

翼さんは泣き笑いのような笑顔を私に向けながら、玄関を閉めた…。

私の身体は依然まだ、翼さんに抱きしめられた温もりが残っている…。

私は呆然として、閉まった玄関の扉を眺めてるしかなかった…。

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