三百六十二話 腰抜かしちゃう

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。

冬休みのある寒い日…。

私はサタン様に会いに行くことになった…。

サタン様は新宿都庁で働いているらしく…。

都知事になれなかったので…。

都知事の元で秘書をやっているらしい。

そういうわけで、私とグレモリーは…。

山手線で新宿に向かったのである…。

新宿駅はすごい複雑な構造で…。

すごい迷いやすいという…。

それは置いておいたとしても。。

サタン様は何か怒りやすい性格らしいし…。

なんにせよ休みの寒い日に出かけるのが嫌だ。

やっと新宿駅に着いて…。

サタン様に会おうと言うときに…。

私は道に迷ってしまって…。

駅構内の端で泣き出してしまうのであった。

誰も助けてくれないこの東京砂漠で…。

ずっと泣いている私…。

何分泣いていたかわからなかったが…。

銀髪ですごい綺麗なお姉さんが…。

私に優しく声を掛けてくれた…。

私は泣きながらだけれど…。

都庁に行きたいのですと伝えた…。

するとそのお姉さんも都庁勤務だという…。

渡りに船とはこのこと!?

私はお姉さんの手を取り…。

やっと立ち上がれたのである…。

銀髪のお姉さん(すごい美人)が。

落ち着いてから都庁に向かおうと仰るので…。

私とお姉さんは小さな喫茶店に入った…。

小ぢんまりとして、照明も暗い喫茶店…。

泣き崩れて、目が赤く腫れていた私を…。

お姉さんは気遣ってくれたのだろうか…?

お姉さんはコーヒーとサンドイッチ…。

私はお姉さんの奢りで…。

ホットココアを頼ませてもらった…。

お姉さんは腰?が痛いらしくて…。

椅子に座れないので…。

立ってコーヒーを飲んでいる…。

銀髪で美人で背も少し高いお姉さん…。

立っているだけで、なかなか目立つ…。

でも、お客さんも少なくて…。

さすが、東京の新宿駅…。

お姉さんが立ってコーヒーを飲んで…。

サンドイッチを食べている…。

そんななんとも言えないシチュエーションも。

お客さんと店員さんはスルーしているのであった。

私もホットココアをいただいて…。

お姉さんもほとんど食べ終えていた…。

やっと落ち着いてきた…。

優しいお姉さんに助けてもらって本当によかった…。

私たちは喫茶店を出ることにした…。

お会計はすでに済ましている…。

そのままお店を出る…。

「ごちそうさまでした。本当に助かりました」

私はお姉さんに改めてお礼を言った…。

「いいのよ、これぐらい…」

そう言って、お姉さんは微笑んでくれる…。

なんて優しいお姉さんなんだろう…。

こんなにいい人がいて、東京も捨てたものではない…。

私は心底そう思った…。

私はお姉さんの案内で…。

新宿駅西口を出て、都庁を目指した…。

お姉さんが案内してくれたので…。

ほどなくして、都庁に着いた…。

お姉さんは慣れた様子で都庁に入っていく…。

都庁で働いているから、当たり前か…。

都庁のエントランスは金属の謎オブジェがあって。

かなり広くて、荘厳であった…。

「あなた、都庁にどんな用があるの?」

お姉さんが聞いてきたので…。

私は秘書の人に会いたいと伝えた。

お姉さんはエレベーターに乗りながら…。

「偶然だわ。私、都知事の秘書をやっているのよ」

さも驚いたように、お姉さんが言った…。

え!?お姉さん秘書をやっているの!?

秘書は今現在2名いるらしい…。

サタン様はそのどちらかと言うことだ。

まさか、このお姉さんがサタン様!?

そう思っているうちに、エレベーターは止まった。

私はお姉さんにギュッと手を握られて…。

とある部屋まで連れて行かれた…。

重厚な木製のドアを開くと…。

かなり広い執務室に私は通された…。

お姉さんは私が入ったのを確認して…。

ドアの鍵をしっかりと閉めてしまう。

なんで、鍵を閉めてしまうの…?

「ここが私の執務室よ…」

お姉さんは今までの笑顔はなくなっていて…。

冷たい雰囲気の横顔であった…。

「貴様、魔界で余と会った人の子であるな?」

さっきとは口調が全く違う声でお姉さんは言う。

「覚えておるか?余の名前はサタンである…」

やっぱり、この人がサタン様だ…!?

私は、びっくりして尻餅をついてしまうのであった。

「貴様のこと、ずっと探しておったのだぞ…」

人の姿をしたサタン様の瞳が青白く光っている。

私は腰が抜けそうなのを必死で堪えるしかなかった。

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