三百六十話 新宿駅の喫茶店
「ごきげんよう」「神のご加護を…」
朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。
学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。
そう、ここは神田ミカエル女学院…。
中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。
天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?
その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。
ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。
制服は翻さないように、静かに歩き…。
清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。
この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。
否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。
冬休みのある寒い日…。
私はサタン様に会いに行くことになった…。
サタン様は何か怒りやすい性格らしいし…。
なんにせよ休みの寒い日に出かけるのが嫌だ。
そうグレモリーに伝えたのだけれど…。
一刻も早くサタン様に会いに行きましょう!
というので、渋々私は炬燵から出て…。
出てというか、半ば無理やり出されて…。
サタン様に会いに行くことになったのである。
家から出たあと、歩きながら…。
私はグレモリーにサタン様がどこにいるかを聞いてみた。
グレモリーの話によると、サタン様は新宿にいるという…。
しかも、新宿都庁で働いていて…。
都知事を目指していたけれど、なれなくて…。
都知事の元で、秘書をやっているという…。
現都知事の女性の御威光がまだ十分強いそうだ。
ちなみに秘書の正式名称は、政務担当特別秘書という名称。
本来都知事の指名がなければなれないそうだが…。
サタン様は魔力を使い、秘書になれたという。
私たちは山手線に乗り込み…。
それでも、無事?私たちは新宿駅に着いた…。
しかし、新宿駅はすごい迷いやすい魔境…。
新宿駅の構内はかなり複雑な構造で…。
迷う人が多数いるという…。
駅から出られない。遭難者が出るらしい…。
とかそんなバカな…。と言う噂も多数聞くらしい…。
世界一の乗降客数を誇る新宿駅…。
ギネスブックにも載っているらしい…。
1日で360万人以上の乗降客数がいるらしい…。
電車が着いたホームからして結構な人混みだった。
新宿駅から西口に出れば都庁へ行けるらしい…。
私は必死にグレモリーの後に着いて行ったのだけれど。
グレモリーの脚が結構速くて…。
ついに私はグレモリーとはぐれてしまったのであった。
私は慣れない新宿駅で…。
しかも遭難者も出ると言う魔境で…。
迷子になってしまったので…。
途方に暮れて、涙が出てきてしまった…。
周りは忙しそうに早歩きで立ち去る通行人ばかり。
私のことなんて誰も気にしてないようであった。
これが噂に聞いた東京砂漠か…。
私は悲しくて、しゃがみ込んでもっと泣き出してしまう。
誰も助けてくれないと思い…。
ずっと泣いている私…。
何分泣いていたかわからなかったが…。
銀髪ですごい綺麗なお姉さんが…。
私に優しく声を掛けてくれた…。
私は泣きながらだけれど…。
都庁に行きたいのですと伝えた…。
するとそのお姉さんも都庁勤務だという…。
渡りに船とはこのこと!?
私はお姉さんの手を取り…。
やっと立ち上がれたのである…。
「ずっと泣いてたの?目が腫れてるわよ?」
綺麗なお姉さんに言われて…。
私は狼狽えてしまうのであった…。
今はお姉さんが私の手を握ってくれている。
だから、もう涙は出ていないのだけれど…。
そんなに目が腫れているのかな?
「少し、落ち着いてから都庁に向かいましょう」
そうお姉さんが言うので、私は着いて行った。
新宿駅の中の喫茶店に入って行く…。
都内の駅構内にははいろんなお店がある…。
都内だと当たり前かもしれないけれど…。
私の住んでいたところの駅はこんなに広くなくて。
お店も売店ぐらいしかなかったなぁ…。
新宿駅は特に広大で…。
え?こんなところに喫茶店が…!?
というようなこじんまりとしたお店であった。
お姉さんは慣れた様子でそのお店に入っていく。
店内は薄暗く、落ち着いた雰囲気であった。
あと都内の店には珍しく客もまばらだった。
これなら、私の泣き腫らした目も見えない…。
お姉さんが気を遣って、この店にしてくれたのかも?
お姉さんはサンドイッチとホットコーヒーを頼んで。
私はココアを頼んだ…。
すぐに頼んだ物が、トレイに乗って出てきた。
電車に乗るのを急いでいるお客様でも大丈夫なのだろう。
店員さんはすごいテキパキして、対応が早かった。
お姉さんはスマホをかざして、支払いをした…。
すごいキャッシュレスだ。大人だ…。
「あ、あのお金は…?」
私が恐縮して、聞いてみる…。
「いいの奢りだから。私が誘ったんだし」
お姉さんはさも当然と言う感じだった。
助けてもらって、ココアも奢ってくれるなんて。
なんて優しいお姉さんなんだろう…?
私は感動してしまうのであった。
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