三百二十二話 食べ終わった

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


私と藍さんは私の服を見に原宿までやってきた。

ラフ○ーレ原宿でゴスロリ服を見ている私…。

やっと気に入った服とマントが決まって…。

それらを藍さんに買ってもらったのだ…。

私もそのままゴシックダーク系な服を着て…。

お店を出た…。すっごくいいお洋服だけれど…。

あまりにお高いので、着てるだけで緊張してしまう。

あとで、お金稼いで藍さんに返した方がいいのかな?


私はネットで見た謎のお菓子、マリトッツォ?が食べたいのだ。

パン生地の間にクリームがいっぱいで美味しそうー!

藍さんがマリトッツオの美味しいお店をスマホで調べてくれた。

山手線の原宿駅の近くにあるらしい…。

少し歩くけれど、致し方ない…。

原宿駅前まで歩いて、その店は見えてきた…。

全面がガラス張りの瀟酒な店舗…。

原宿のお店は全面ガラス張りのお店が多い…。

お店の中が外からも丸見えで、ショーウィンドウ的な意味合いなの?

私は今でも場違いな気がして、怖気付いてしまう…。

藍さんは全然気にしないで、もうお店の中に入っている。

商品が並んでいるケースもガラス張りで、とても綺麗…。

私はスタンダードなクリームだけのマリトッツォを頼む。

藍さんはフルーツが付いてるマリトッツオを頼んでいる。


結構天気が良かったので、私たちはテラスに出て食べることにした。

ホットドリンクも頼んだけど、陽気がいいのでちょっと失敗したかも。

私はホットドリンクを一口飲んだ…。

身体の中までぽかぽか陽気になって、少し暑い。

エスプレッソ染み渡る〜。すごい美味しい…。

そして、やっとマリトッツォを食べてみる。

クリームが多すぎて、すごい食べにくそう〜。

イタリア、ローマで生まれたこのスイーツ。

マリトッツォはパン生地自体のことを本来言うらしい。

古代ローマでは蜂蜜やレーズンを入れたパンだった。

日本のように、クリームをいっぱいに入れた形のものは…。

マリトッツォ・コン・ラ・パンナと呼ばれるものなのだ。

そんなことをネットで調べながら、食べようとしたのだけれど。

やっぱりクリームがいっぱいありすぎて、食べにくい…。

ずっと見ていても致し方ないので、食べてみることにした。

クリームが濃厚で美味しいけれど、やっぱり口の周りが…。

クリームだらけになるよ〜。恥ずかしい…。


私の口の周りは、すごいクリームだらけになっていた。

藍さんにそれを見られて、口の周りクリームだらけだしと笑われた。

もう、見られたくなかったのに。すごい恥ずかしいよ〜。

そしたら、藍さんが私の顔を両手で掴んで…。

なんと、私の口の周りのクリームを舐め始めた…。

ふぇぇぇぇぇ!?そんな舐めて取らなくてもいいよ…。

私は抵抗したいけれど、顔を押さえられているのでできなかった。

やめてとか言いたかったけれど、口を動かすと…。

藍さんの舌と私の舌が、合わさってしまいそうで怖い…。

藍さんと舌を絡めたら、それは深い口づけになってしまう。

それだけはダメ!口づけは翼さんにとっておかないと…!

私は藍さんの為すがままにされてしまうのであった。


藍さんはほとんど私に付いてたクリームを舐め終えていた。

ノアっちについてたクリームすごい美味しかったし!

だそうで…。なんか少し私の唇まで舐められてしまったような?

藍さんと私はズッ友だから、これぐらいいいのかな??

陽キャの女の子は友達同士で、写真撮る時キスしたりするらしい。

友達同士なら、口に付いたクリーム舐めてもらうのも当たり前なのかな?

私は以前は友達がいなかったので、よくわからない…。

藍さんは呑気に今度は自分のマリトッツォを食べている…。

あ、藍さんずるい!フォークとナイフで食べている!

そういう食べ方あるなら教えてくれればいいのに…。

私は知らないから、手で掴んで食べちゃったよ…。

藍さんは優雅にパン生地をフォークで切って…。

それをクリームにつけて食べている…。

食べ方まで綺麗で気品があるんだから…。

よく見たら私の分のフォークとナイフもあった。

初めに気づけばよかった…。

私も藍さんの真似をして、食べてみる…。

程なくして、私たちはマリトッツォを食べ終えたのである。

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