二百七十七話 フィギュア

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて…。

神田ミカエル女学院に転入することになった私…。

教壇の前で、自己紹介することになったけれど…。

空腹と緊張で、教壇の前で気絶して倒れてしまう…。

私は身体が弱いふりをして、担任の先生に頼んで保健室登校をさせてもらう。

新しいクラスに馴染めそうになかったのだ…。

そんな毎日を送り、どうにか?学院生活にも少し慣れてきた頃…。

慣れてきた頃と思っていたら、なんと夏休みに突入してしまった。

明日から夏休みかー。七月も終わりで八月になる…。

早いなぁ、今年も半分もない…。このまますぐに秋になればいいのに。

そう、私は暑いのが大の苦手なのである…。

灼熱の夏の太陽の下を少しでも歩いていると…。

すぐに皮膚が真っ赤になって、日に焼けてしまうのです…。

せっかく雪のような真っ白な肌に生まれたのに…。

私のような可憐で繊細な美少女は、真夏の太陽は大敵なの…!

というわけで、夏休み前日はゆっくり?寝て…。

学校に行かなくていいという晴れやかな日を次の日迎えたのです…。

朝目覚めて学校に行かなくていいと思うと気分も晴れやか!

天候が晴れていても、その紫外線の下に出なくてもいいのです…。

これほどいいことがあるでしょうか…?

二度寝しようしたら、グレモリーが起しに来て…。

なんと私に来客があるという…。

誰だろうと着替えて行ってみると…。

昨日会ったばかりのギャル?の鈴木藍さんだった…。

藍さんは夏休みに入ったので遊びに来たという…。

私は藍さんを招き入れて、朝食を一緒に食べようと誘った。

食卓の大きなテーブルの席について待つ2人…。

程なくして、グレモリーが3つのカップ麺を持ってきた…。

またカップ麺か…。飽きないな、グレモリーも…。

しかし、よく見たら違う!これはカップ飯だった!?

「ご主人様これすごいんですよ!お湯を注ぐとスープとご飯ができるんです!」

グレモリーはすっごい嬉しそうに説明する。

ちなみにグレモリーは魔界から来た悪魔で…。

魔法詠唱なしで、お湯を注ぐだけでできるカップ麺等が好きなのである。

「カップ飯っすか!あっしもこれ好きなんすよ!ラッキー!」

藍さんも喜んでいる。好きなんだカップ飯…。

三人前のカップ飯にお湯を注ぐグレモリー…。

しかし、カップの蓋にどうしても隙間が空いてしまう…。

指で抑えるには熱いし、どうすれば…?

どうすれば…。どうすればいいんだろう…?

「そんな時はこれですよ!ご主人様!アキバで買ってきましたよ!」

そう言うとグレモリーは胸の谷間から何やら出してきた…。

出したものをカップ飯の蓋の部分に置く…。

置くと言うかその物体はうまい具合に蓋のところに座ったのだ!

こ、これはヌードルストッパーフィギュア!!!

しかも、プレミアがついて少し高い代物だ…。

三人前のカップ飯の蓋にちょこんと乗るフィギュア…。

「おぉぉ、あっしはキャラとかわからないけど、これはテンアゲっしょ!」

藍さんは瞳をキラキラさせて、フィギュアを見つめている…。

「ご主人様のご友人も喜んで頂いているようでよかったデスー!」

というか、よく三体のフィギュアが胸の谷間に入っていたなグレモリーさんよ。

「あ、あのグレモリー…さん?私のフィギュア取り替えてくれない?」

私は恥を忍んで、グレモリーにお願いをした…。

なぜかというと、グレモリーのカップ飯に座っているフィギュア…。

だいぶ古いアニメの好きなキャラクターだったのだ…。

私みたいな中二病のキャラ…。私の推しキャラ…。

「?いいですけど?じゃぁ、取り替えますねご主人様!」

グレモリーはすぐフィギュアを取り替えてくれた…。

やった!このキャラも自称闇の魔族なのだ …。

ゴシックロリータの服も似合ってかっこいい…。

小さいフィギュアだけど、造形もなかなかのものね…。

脚を覆っているニーソもすっごいかわいい…。

ぐぬぬ、もう少しで足の付け根が見えそう…。

ち、違うの!?べ、別に変態じゃなくて…!

どんな下着履いてるか気になっただけなの!?

私は誰に弁解しているのだろう…?

そんなことしてたら、程なくしてカップ飯が出来上がった。

みんなフィギュアをどけて、蓋を開けて食べ始めた…。

「いただきま〜す!!熱いけどおいしいし!」

藍さんは元気よくいただきますを言った…。

私も慌てて、小さい声でいただきますをいう。

グレモリーもいただきマス!とカタコト…。

確かに出来立てのカップ飯は熱かった…。

でも特製スープとご飯が絡まって結構美味しい。

クーラーが効いてるけど、なんで真夏にこんな熱いものを食べているんだ?

疑問に思うけど、三人でハフハフ言いながら食べるのもいいかな?と…。

思う私であった…。

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