二百三十五話 学校に通うの?

大天使と天使側の人間に狙わているというので、翼さんの部屋を出ていくことになった私。

愛しい翼さんと別れるのは辛いけれど、天使側の人間はとても残酷らしいので…。

翼さんに逃げるように言われたのだ…。

私の身体は勝手に翼さんの部屋を出て行き、駅に向かって歩いている…。

まる、翼さんの天使の力に操られているように…。

否、まるでというか、本当に翼さんの力に操られていたのである…。

翼さんと別れても、翼さんに抱かれているような、ふわふわした感覚…。

その途中で、契約した女悪魔グレモリーとまた出会ったのであった。

グモリーの家に行くことにした私…。

グレモリーはどんどん歩いていく…。

どうやら御茶ノ水方面に歩いているらしい…。

私は疲れているので、あまり歩きたくはないのだけれど…。

土地勘がない私は、はぐれないようについていくので精一杯であった。

水道橋に行くか行かないかの手前、その間にこの辺学校が多くない!?

大きな建物が多いと思って、夜でよく見えないけれど…。

どうやらその建物たちは学校なのであった…。

学校が多く、夜なので当たり前だけど生徒も先生もいなく…。

あたりは人気がなく、静まり返っていた…。

東京には珍しく、閑静な街並み…。

朝は通学する生徒で溢れかえっているんだろうなぁ…。

中高生も多いだろうし、大学生も多そう…。

いろんな制服の女の子や、オシャレな私服の大学生のお姉さんもいっぱいいそう…。

べ、別に変なことを考えているんじゃなくて…。

昼間は賑わっているけれど、夜はかなり人がいない静かな街って…。

大きな建物が、得体の知れない大きな獣に見えて少し怖いのだった…。

閑静な街をあるいていると、突然大きな建物が出てきて…。

大きな獣か化け物が、こちらを見下ろしているような気がして…。

すごく怖いのであった…。

「ご主人様、ご主人様の生活についてはこのグレモリーにお任せください」

突然、グレモリーに言われて、私はびっくりしてしまった。

グレモリーは学校の間を通って、小さなビルにたどり着いた。

そこに地下に行く階段があって、そこを降りていく…。

なんのビルかわからないぐらい老朽化している…。

ここがグレモリーの家なの???私は不審に思った…。

「ようこそ、我が家へ。自分の家だと思ってくつろいでくださいご主人様」

階段を降りたところにあるドアをあけ、その中に案内してくれるグレモリー。

怪しすぎるけれど、私は意を決して、グレモリーの家に入っていく私であった。

廃ビルのような外観のビルだったので、かなり不安だったけれど…。

グレモリーの家の中は、ラグジュアリーな室内だった…。

紫を基調にした壁紙、絨毯、椅子、テーブル…。

グレモリーは紫が好きなのかな???

濃い紫が部屋一面敷き詰められているようだった…。

その天井にはものすごいでかいシャンデリアがぶら下がっている…。

まさかの暖炉まである…。

そこにはこれまた紫色の不思議な炎が燃えていた…。

不思議な感覚な部屋だった…。

そこまで至るまでの、玄関は大理石…。

廊下には分厚い絨毯が敷き詰めらている…。

こんな小さなビルに、こんな大きな部屋があるのかと思うぐらいの大きさだった。

「おじゃまします…」

玄関から靴を脱ぐ…。脱ごうとしたけれど、靴を脱ぐスペースがなかった。

「ご主人様、そんなにかしこまらないでくださいませ、ここは洋式なので靴もそのままで」

そうか、靴は履いたままでいいのか…。なるほど。

絨毯の上を靴のまま上がって歩くのはすごい違和感があった。

なんかすごい悪いことをしている気がする…。

そして、玄関から入った時から気になっているのは濃厚な香り…。

麝香とローズマリーが混ざったようなすごい濃い香り…。

なぜ、混ぜたし、すごい変な香りだ…。

翼さんのシトラスの爽やかな匂いが、思い出された…。

私はむせかえるような匂いに、気分が悪くなってきた…。

グレモリーはそれを察したのか、自分の指をパチンと鳴らした。

そしたら、部屋の香りがローズマリーだけの香りになった。

少しはマシになったけれど、ローズマリーもかなり強烈な匂いなんだよね。

「お許しください、ご主人様、私、薔薇の名前がついたものが大好きなのです」

ローズマリーは決して、薔薇ではないのだけれどね。

確か、ローズマリーは魔除けの効果もあったはず、いいのだろうか???

「そうです、さすがご主人様。博識でいらっしゃいますね」

グレモリーさん、私の心をいつも読まないでください…。

「魔除けの効果とか神聖な場所とか、そういったものを踏みにじった時魔性もまた上がるのです」

グレモリーは、意味がよくわからないことを言った…。

例えば、教会のミサとか神聖なものを反転すれば、黒ミサになるとか…。

悪魔にとって、物事を反転させること…。教義に反することが望ましいらしい。

二律背反…。そんな言葉が浮かんだ…。

グレモリーの言うことは少しはわかるが、私には関係ないようにも聞こえた。

「それよりも、ご主人様、今後のことを話しましょう」

グレモリーは私に椅子に座るように促した…。

テーブルを挟んで、向かい側にグレモリーも座る…。

「ご主人様は、私の家に住んでもらうことにして、寝室もございます」

廊下の途中にドアが複数あったので、それのどれかが寝室なのだろう。

「ここにただ住んでもらうには退屈でしょうから年頃のご主人様には学校に通ってもらいましょう」

え?え?え?学校通うの??学校も嫌だから家出してきたのに…。

「ダメです。若い人の本分は学業にあります。学舎で色々なことを体験し学習してもらいます」

グレモリーさんは悪魔なのに、すごい真っ当なことを仰いますね…。

「近所に女子校があります。丁度いいでしょう、春から編入してもらいますからね」

この近辺、本当に大学や高校が多かった…。それを見越した所行なのかな。

「近年できたミッション系中高一貫校の女子校があります…」

グレモリーは、学校のパンフレットをテーブルの上に差し出した…。

なになに、神田ミカエル女学院…?

神田川のほど近くになるから、神田とついてるらしい…。

ミカエル女学院という名前は、なかなかオシャレだけれど。

そこに神田がつくとなんとも…。一気に庶民的に思える学校名だ…。

「ほらほら、ご主人様、今年から制服の色も選べますよ!」

パンフレットをめくると、真っ白なブレザーを着た女生徒たちが微笑んでいた…。

夢と希望を紡ぐ我が校へ、ようこそ!とか書いてある…。

夢も希望もない、絶望している私への当てつけのような文句だった…。

そして、なんで真っ白なブレザーなのだ。

お昼にカレーうどんとか食べたら悲惨なことになってしまうでしょう…!?

よく見ると制服は選べて、真っ白なブレザーか、黒のセーラー服かで選べるらしい。

私は黒のセーラー服の方がまだいいかなぁ…。

「ご主人様の美しい黒髪に真っ白なブレザー、似合うと思いませんか?」

私の気持ちを読めてないグレモリーは、勝手に盛り上がっていた…。

絶対、この人、私に制服を着せたくて高校に行かせる気だ…。

私は、かなりげんなりしてしまうのであった…。

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