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三十一話 アンドロイド

VR中二病キャラに、説教される私。
なんだなんだと、周りの人たちが集まりだした。
私はたまらず這いずり、その場を逃げた。
VR中二病キャラに説教されるのは、まだいいけど。
人混みが苦手な私は、逃げ出したのだ。

ようやくラジオ会館の入り口まで、這い出た私。
ふぅ、なんかひどい目にあいそうだったな…。
混みすぎでしょラジオ会館。
まぁ触れる最新VRアニメキャラいるんだから致し方ないか…。
平日でも、この混雑。
さすが秋葉原。さすが未来都市アキバ!

私が悦に浸っていると…。
「ちょっとお話しいいですかぁ?」
すごいかわいい声が、響いた。
キンキン響くアニメ声だ。
振り返ると、ものすごい可愛らしいメイドさんがいた。
髪型はブラウンのモブカット。
目がまん丸で、瞳は虹色に輝いている。
瞳の真ん中はハートマークだ。
顔の輪郭も、まん丸で、鼻も口も小さく可愛らしかった。
しかし、一目でこの子は人間じゃないとわかった。
「安心してください。私はこの街を案内しているAI搭載アンドロイドです!」
少し前に流行っていたAI搭載型アンドロイドだ。
秋葉原には、メイド型がたくさんいる。
VRが流行る前は、アンドロイドが流行っていた。
いろんな店、個人の家、アンドロイドと結婚する者までいた。
今では、都会はアンドロイドがいるのは、当たり前になっている。
当たり前の風景になってしまい、誰も珍しがらない。

私もなんだアンドロイドか…。と思い、無視して歩き去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくださぁい!」
私の腕をガシッと掴み、引き止めるアンドロイド。
「ちょ、ちょっと離して!」
私は思わず言ってしまう。
「お願いします!私にこの街…アキバを案内させてくださぁい!」
「い、いえ間に合ってますから…」
「そう言わずに!なんでもしますからぁ!」
今なんでもするって言った…?
しかし、なんでこのアンドロイドこんなに食い下がってくるんだ?
「私ここアキバを案内するAI搭載型アンドロイドとして配備されました…」
まぁ、それは話からしてわかる。
「最初は皆さんとても珍しがって、私に話しかけてくれました」
唐突に始まるアンドロイドの自分語り…。
「でも、今ではアンドロイドそんなに珍しくありません…」
「それはそうでしょうね。今はみんなVRに夢中よ」
今も歩きVRをして闊歩している人が多い。
歩きVRは、視覚を大幅に遮るので絶対やめましょうとアナウンスがかかっているのにも限らずだ。
「もう誰も私に話しかけてくれません!誰も私をチヤホヤしてくれないんです!」
要はこのアンドロイド、チヤホヤされたいだけなのか…。私は呆れてしまった…。

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