三百三十六話 スキャン

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


私は二週間の謹慎を終えて…。

教室での初めての授業を終えた…。

不安だった自己紹介の挨拶もお辞儀だけで済み。

安心した私だったけれど…。

クラス委員長の奥井さんから言いがかりを受けたり…。

友達の藍さんとあまり会話もできないまま一日が終わった。

学校はそれほど楽しい場所ではないことはわかっているけど。

なかなか、うまくいかないなと思う私であった…。


授業とホームルームが終わって…。

帰ろうと思ったら、宮園花子さんが待っていてくれた。

花子さんは前に私が助けた女の子だ…。

私と花子さんは一緒に帰ることになって…。

手をつないで下校した…。

花子さんは学校の寮に住んでいるらしく…。

今度、寮に遊びに来てほしいと言われた…。

遊びに行くのは全然構わないのだけれど…。

花子さんは私のことをお姉さまと呼んで…。

すごい慕ってくれている…。それだけならいいけれど。

すぐにわたしに抱きついてくるのだった…。

寮に行って2人きりになったら何かされそう。

そう思ってしまうのは私の考え過ぎだろうか?


私の住んでいる家は学校からすぐ近くなので…。

ほどなくして、家にすぐ着いてしまった…。

私は女悪魔のグレモリーに今お世話になっていて。

住んでいるのもグレモリーの家なのだ…。

グレモリーの家の玄関を開ける私…。

グレモリーはすぐにお出迎えしてくれた…。

グレモリーは花子さんも中に招いてくれた…。

私たちはダイニングテーブルの椅子に座った…。

「今、夕飯の支度しますからね」

グレモリーがエプロンをして、キッチンに向かう…。

エプロンなんてしてるけど…。どうせインスタントでしょう?

待っていると、カップ麺とポットを持ってきた…。

「お待たせしました!3分でできる魔法のカップ麺です!」

三人前のカップ麺にお湯を注ぐグレモリー。

「花子さんごめんなさい。うちはいつもこんな食事なんだ」

私は申し訳なくて、花子さんに謝ってしまう…。


花子さんの方を見ると、すごい瞳をキラキラさせている…。

カップ麺を、あまり食べたことがないらしい…。

お湯を注いで、3分少々待てば熱々のカップ麺の出来上がり!

そのことがすごい珍しく映るらしい…。

グレモリーがドヤ顔でカップ麺の説明をしている…。

花子さんもなんてすごい技術なんでしょう!?と驚いている。

案外この2人は意気投合できそうである…。

「ところで今日は鈴木藍さんはご一緒じゃないですか?」

グレモリーが不思議そうな顔をしている…。

私は藍さんはカラオケ行ったよと答えた。

多分もうちょっとしたら、帰ってくるのではないか?

3分経ったので、いただきますとカップ麺を食べることにした。

花子さんがいなかったら、今はグレモリーと2人きりだった。

ここに花子さんがいて、一緒にカップ麺を食べているのが不思議だ。

熱くて辛いカップ麺を食べながら、私はそう思うのであった…。


それからカップ麺を食べ終えて…。

くつろいでいる私たち…。

私は胸ポケットから、理事長先生から頂いたカードを見ている。

カードは見る角度によってキラキラと虹色に輝いている。

よく見たら背景に百合の花があり…。

その手前でお祈りをしている天使の絵のカードだ 。

クラス委員長の奥井さんが言うには4枚しかないカードらしい。

ゲームで言えば、URクラスのカードなのかな?

まぁ、今日はこのカードがあってよかった…。

私がすごい闇属性だからといって奥井さんに襲われそうになった。

守護天使を召喚して、戦闘態勢に入ってしまったのである。

私の中に眠っている堕天使魔王で応戦できないこともないけれど。

それだと、私が悪魔側の人間だと言うことがバレてしまう…。

この天使のカードを奥井さんに見せたらどうにか納得してもらった。


「ご主人様!そのカード大天使カードじゃないですか!?」

グレモリーが驚いて、そう言ってきた…。

「なんでご主人様が大天使カードなんて持っているのです!?」

やっぱり悪魔側の人間の私が大天使のカード持っているなんて…。

どう考えても、おかしいですかね?あはははは…。

私は学校の理事長先生から頂いたと説明した…。

「あの理事長はやはり…」

グレモリーはなにやら思慮深い表情をしている…。

「ご主人様はそのカードの使い方わかってます?」

使い方?そもそも使おうなんて思っていなかった…。

わからないよとグレモリーに言う…。

「何か媒体を使えば、カードから大天使を召喚できるのです」

カードから大天使を召喚できるのか!?すごい!

隣で花子さんがすごい驚いた顔をして固まっている…。

「ご主人様のスマホを貸してください…」

そう言うグレモリーに私のスマホを貸した…。

グレモリーは私のスマホに手のひらをかざして…。

「闇の盟約により、このスマホを召喚の器に…」

なにやら呪文?めいたことを呟いている…。

「はい、できましたご主人様!」

そう言って、グレモリーはスマホを返してくれた…。


「ご主人様、カードをスマホのスリットにスキャンしてください」

スマホのスリット?そんなものが…。

私のスマホ側面に、溝ができていた…。

ちょうどカードをスキャンできそうだ…。

でも、こんなもの前はなかったけれど…。

グレモリーの呪文でできたのだろうか?

私はスマホの電源ボタンを押した…。

「あ、スマホの電源は入ってなくても平気ですよ」

グレモリーはそう説明してくれる…。

私は大天使カードをスマホのスリットでスキャンした。

「我が闇の契約に基づき、大天使をここに召喚する!!」

思わず、私は中二病モードになり声高に言ってしまった。

スマホの画面に、大天使の姿が現れ始めた…。

召喚といっても、スマホの画面に出るのか…。

慈愛に満ちた優しそうな大天使だった…。

名前も書いてある。大天使ガブリエル…。

このカードは大天使ガブリエルというのか…。


大天使ガブリエル…。

名前を聞いたことがある人も多いであろう。

すごい有名な大天使である…。

聖母マリアがイエスキリストを受胎した時…。

そのことを告げた天使としても有名である…。

絵画にもなっている受胎告知…。

私はそのぐらいの知識しかない…。

でも、すごい天使なのは間違いないであろう…。

「お、お姉さまの後ろに…」

花子さんがすごい狼狽えている…。

私は自分の後ろを見ると…。

慈愛の満ちた瞳をした女性が立っているではないか!

その女性の背中から翼が生えており…。

頭上には天使の輪っかが乗っている…。

誰もが想像するであろう、天使の姿だった…。

手には百合の花を持っている…。


本当にガブリエルを召喚してしまった!

私もびっくりしてしまって、絶句してしまった…。

「さすがご主人様ですね!召喚の儀を一発で出来てしまうなんて」

グレモリーがすごいドヤ顔で言っている…。

なんで、グレモリーが偉そうなんだよ…。

グレモリーがそんなだから少し落ち着いてきた。

「本当は大魔王と会って大魔王を召喚して頂きたかったのですが」

グレモリーは少し残念そうな顔をしている…。

「でも、これで召喚の練習はできましたし。万事OKです!」

練習で召喚された大天使ガブリエルって…。どうなの?

なんだか背後にいるガブリエルさんに申し訳ないような…。

それから数分が過ぎているけれど…。

一向に消える気配がない大天使ガブリエル…。

ど、どうするのよ!?これ!?

私はなんだか途方に暮れてしまうのであった…。

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