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ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』レポート⑤

▼コラム
『100人のつながせのひび』 とは何だったのか ― 2023年総括(後編)

前編はこちらから

●ターニングポイントを振り返る

前述のとおり、このイベントは10年間を振り返り、これからの新たなステージへの準備をするための企画ですが、10年に渡り発表した作品をアーカイブとして並べてみることで、私たち自身が、カンパニーのおいたちや変遷を改めて見つめ直す機会にもなりました。例えば、作品のコンセプトや演出が、上演写真や衣装をパッと見るだけでも大きく変化していることに気づきます。

2019年、初めて滞在制作をした体験は、カンパニーにとって特に大きな出来事でした。それまで自らを縛っていた既成概念や思い込みに気づいて、そこからゆるやかに解放されるような機会を得たのです。思い返せば2014年、2016年、そして2020年にもその転機はあったように思います。これらの年は、私たちにとって挑戦の連続だった年です。しかし、私たちにとってこの変化は少しずつシームレスに起こった変遷だった認識もあります。

2022年のランドスケープシアター 『たびするつゆのふね』  撮影:脇田友

2020年以降のランドスケープシアター(風景演劇)では、特に「時間」が1つの大きなテーマとなっています。ゆったりとした時間の流れを求め、自らの時間を見つめ直すことで、時代の潮流に乗ったり大衆を追うことなく、一人一人が周囲の世界に潜む美しさや深さに気づく「環境」として設定された作品のあり方を提示しています。 2021年は、自然の息吹と共に流れる等速ではない時間感をテーマに据え、より静かな動きを模索し始めました。
そして、2022年以降は、現代アーティストとのコラボレーションを契機に、更なる静寂と引き算の美に焦点を当て、目には見えないけどたしかにある記憶の中の世界や、忘却や喪失といったテーマが浮かび上がってきました。

2023年『あなたはきえる』撮影:脇田友

●100人のつながせのひび とは何だったのか

『100人のつながせのひび』は、今回のイベントのタイトルではありながら、この1年間のあゆみの一歩一歩であり、心地のようなものの総称であったように感じています。
セレモニーの最後の言葉は、「行ってきます」でした。この場所は10年前にしてみれば大きな目的地でありながら、次の出発地であり、通過点でもあります。旅するパフォーミングアートカンパニー、と私たちが名乗る通り、常に目的地を更新しながら、これからも舞台表現に関わる多くの挑戦を続けてゆきたいと思います。

撮影:脇田友

ソノノチ結成10周年イベント『100人のつながせのひび』レポートまとめ



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