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2023年7月6日 今年の平和宣言に対する「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」要望書提出(取材メモ)

8月6日の広島原爆の日、平和記念公園で開かれる平和記念式典で、広島市長が発出する平和宣言の内容をつめる作業が続いています。5月に広島で開かれたG7サミットで各国首脳たちがまとめた「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」に、核抑止力を肯定するようなフレーズがあったことや、核兵器禁止条約についての言及がなかったこと、さらには「被爆者」という言葉すらなかったことについて問題視している広島市の平和団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)が7月6日、広島市に対して要望書を提出しました。

広島というまちは、1945年8月6日の体験をもとに、世界に対して何を訴えてきたのか。核兵器のない、戦争のない世界を目指す人々の輪の中で、どういう役割を担っていくのか。核兵器禁止条約の発効や、広島選出の総理大臣の誕生、そしてG7広島サミットの開催を経て、その立ち位置が大きな転換点にあるように見受けられます。広島の「アイデンティティ」に関わる大切な問題で、多くの人たちが考え、議論するべきことだと考えたので、申し入れの内容をアップします。

(背景事情の理解のために、記事のリンクなどを加えています)


広島市の檜垣智弘・平和推進課長(右)に要望書を手渡すHANWAの足立修一代表

HANWA代表足立修一さん:
(要望書読み上げ)広島市長 松井一実様、平和宣言に対する要望。本年5月のG7首脳サミットで発表された核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンは、ロシアによる核兵器の威嚇や使用は許されないと批判する一方、我々の安全保障政策が核兵器はそれが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、ならびに戦争および威圧を防止すべきとの理解に基づいている、と述べています。
被爆地・広島が否定してきた核抑止力を肯定し、それを広島の地から世界に発表したことを私達は大変残念に思います。また本年11月には第2回会議がニューヨークで開かれる核兵器禁止条約のことを完全に無視する声明には怒りさえ感じます。
今年の平和宣言では、核および核抑止力を肯定するG7首脳広島ビジョンは、核廃絶を求める広島市としては容認できないこと、核兵器禁止条約への参加を日本政府や世界各国に訴えることを強く求めます。それから最近の広島市の平和行政に関する疑問を声明としてまとめましたので添付いたします。2023年7月6日「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」代表足立修一

広島市平和推進課・檜垣智弘課長:
平和宣言に対する要望ということなので、平和宣言の作成がどのようになされるかをまず説明させていただきたい。

平和宣言の作成にあたっては例年、被爆者や有識者などで構成する平和宣言に関する懇談会を年3回程度開催させていただいて、そこでのご意見を参考にしながら、市長自らが起草するということになっております。今年はこれまで5月と6月に2回ほど開催し、その懇談会において、平和宣言に盛り込む時代背景を踏まえた事項という中で、今年はG7広島サミットに言及すべきだろうということで出席者の意見が一致しているところなんですけども、どのように言及するかについては、今月3回目の懇談会を開催し、そこでの内容を踏まえた上で固めていく。

ですので、私の方から現時点でこうなりますとお答えできない状況。いずれにしても、被爆者をはじめとする広島市民の平和への思いが広く国内外に伝わるような宣言にしていきたいと、事務方として考えている。

この中で強く言われている核抑止力ですが、広島市がこれまでどのような説明をしてきたかを改めて説明させていただく。


広島市の檜垣智弘・平和推進課長

広島市は核抑止論についてどのように説明してきたか、どのような意思表示をしているか。まず核抑止論については、「核のボタンを握る為政者が理性的な判断をできる」ということが前提と考えているんですけれども、核による威嚇を行う為政者が現に存在するという現状を目の当たりにしたことで核抑止論はもはや成り立たないということを強く訴えている核兵器が存在する限り人類は甚大な危険におびえ続けなければならないことが明らかになったと受け止めていると強く訴えておりまして、今後、核兵器による被害を受けることがないようにするための唯一の手段は核廃絶しかないということを訴え続けてきている

これは、長崎市長とともに核兵器禁止条約の締約国会議でも、ことあるごとに訴えているというのが立場でございますので、核抑止論を否定してくださいというところは、皆さんと考えが全く一致しているとご理解いただけたらと思います。

その上で、先ほど申し上げた通り平和宣言については、第3回の懇談会の意見などを踏まえて市長が起草することになりますので、どうなるかは私の方から申し上げられないし約束もできないんですけれども、広島市の核抑止論に対する考え方を踏まえるならば、これまで通り核抑止力についてはきちんと否定するということ、核兵器禁止条約への参加を日本政府に求めることについても昨年もずっと訴えてきておりますし、引き続き入るような方向になるのではないかということは申し上げられると思いますので、私が書くわけではないので何とも約束できる話ではないけれども、おそらく皆さんのご期待に沿えるような内容になるんじゃないか。

HANWA運営委員でNPO法人ANT-Hiroshima理事長の渡部朋子さん:
きちっと核抑止論を否定し、そして日本政府に対しても核兵器禁止条約を批准する方向で、そしておそらく今年の第2回の締約国会議にも参加をというようなことが平和宣言の中で述べられるかと思いますが、こと、核軍縮に関するG7広島ビジョンについては、今広島市はどう受け止めていらっしゃるのか。

HANWA運営委員・ANT-Hiroshima理事長の渡部朋子さん

檜垣課長:
広島ビジョンについて、特に核抑止論の部分にいろんな意見があるのは存じ上げておりますし、それぞれの皆さんが受けとめて感想を持たれてご発言されるかは自由ですので、こうあるべきだとかこうだとかいうことはないんですけれども、そこの部分は、核抑止論反対の立場なので我々としても納得する部分ではない

ただ、広島ビジョン全体を捉えてきたときに、今回核保有国を含むG7首脳が合意したG7初の核軍縮に特化した独立文書というものが採択されたという事実と、このビジョンの中で、全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現に向けたG7首脳のコミットメントというのが再確認されていると。

具体的には、核兵器を減少させる行動を逆行させてはならないということ、核兵器のない世界は不拡散なくして達成できないこと、ここが一番我々がずっと訴えてきたことを強く支持してくださってるところだと思ってるんですけど、被爆の実相への理解を深めるためには、他の為政者や世界中の若者を広島・長崎に訪問させたい、それを促したいということが明確に明示されていること。そういったことを、まずはいい点だと捉えておりまして。

これまでNPT再検討会議が2度にわたって交渉が決裂して最終文書が採択されていない状況を踏まえた場合、核軍縮の取り組みが現在停滞しているという状況の中にあって、十分ではないにしても、各国首脳から全てのものにの安全が損なわない形での、という条件がついた形にはなってしまいましたけれども、核兵器のない世界の実現を目指すというメッセージが明文化されて世界に発信されたことについては、一定の評価をすべきではないかというのが広島市の立場です。

渡部さん:
そうですか。この広島ビジョンについては、それぞれその評価の仕方があるとは思うんですけれども、私には、この中にいくつか気になる点がありまして、実際にその核を持ってるG7の国自らの核軍縮を始めることは一言もないですよね。

檜垣課長:
そうですね。

意見交換の様子

渡部さん:
相手を一方的に非難している。この態度は、広島ビジョンという、広島という名にふさわしくないんじゃないかと思っておりますし、一言も「被爆者」という言葉がない相手を非難して、しかし自らの核については正当性を、と受け止めかねられない。非常に国益重視のビジョンだと思いますので、広島の立場は人類益だと思うんですね。そういったことがこの中に書かれていないと私は受けとめております。ですから、私達、というかこれは私の意見ですけれども、あるいは被爆者の皆さんの中には、これが発表された直後に、本当に号泣してお電話いただいた方があります。それから怒りを込めて批判された方もあります。そういった方々の声も、きちんと市長に私はお届けしたい。そういう意見があると。

檜垣課長:
わかりました。はい。

渡部さん:
やはり「広島」というときは、核兵器廃絶するんだという。サーロー節子さんは「トーチ(たいまつ)」と言われますけど、旗をずっと掲げて人類益の立場で常に世界に対して発言をするということではないかと思いますので、そういったことをぜひお伝えいただきたい。

檜垣課長:
わかりました。それと、すいません。広島ビジョンのところが非常に期待外れだった面があるという意見が多い、特に被爆された方の中に多いというのは我々も認識してるんですけど、G7サミット全体がどうだったか。我々もうちょっと積極的に評価してもいいんじゃないかと思っておりまして

これまで我々、「迎える平和」を推進してきている立場で、世界中の為政者に、ぜひ核兵器廃絶の第一歩として、広島来て被爆の実相を見てくれと。それが、核兵器のない世界を目指す第一歩だとずっと訴えてきておりまして。これまで核兵器保有国の現職の首脳で誰が来たかというと、2016年のオバマ(米大統領:当時)しかいなかった。

それが今回、核保有国4カ国を含む現職の首脳たちが、一斉に広島に来て、ゼレンスキー大統領もいらっしゃった。広島サミットが決まった際に、我々が国に対して強く求めた内容というのが三つございまして、一つは、ぜひ資料館を視察してくださいと。それから被爆者の声を聞く機会を設けてくださいと。それから、慰霊碑にお花と祈りを捧げてくださいと、これをお願いしてきました。

時間が短いんじゃないかとかいうご批判もあるでしょうけれども、限られた時間の中でそれらをすべて実現していただいたのは、これは非常に大きな意義があったんじゃないか。

それから、慰霊碑参拝の際、国家間のイベントでありながら、広島市長に、慰霊碑の趣旨や「ヒロシマの心」を直接首脳たちに説明する機会を与えていただいた。そこで、憎しみを超えた平和への希求というものがヒロシマの心だという趣旨のことを直接、各国の現職の首脳たちに市長の言葉でお伝えして、強く受け止めてもらった。ここについては、非常に広島でやった意味・意義があったと思っている。

広島ビジョンについては、ちょっと期待外れだったというふうなご意見があるというのは十分認識しております。

左から渡部朋子さん、足立修一さん、藤元康之さん

渡部さん:
やはり、これがG7首脳の広島ビジョンとして世界に出ておりますから、いろんな点でやっぱり、これがいわゆるこれまで広島が願ってきたビジョンではないんだと、できれば平和宣言の中で明確に否定していただくことができれば、私としては非常にありがたいと思います。なぜかといえばですね、国の立場ではないですね、広島は

檜垣課長:
そうですね。

渡部さん:
ですからそういう点では、やはりこの広島ビジョンに対しても明確に平和宣言の中で語って、宣言していただくことができれば、とお願いしたい。

檜垣課長:
そういった意見があったことは伝えます。

渡部さん:
これまでもずっと、広島の平和宣言というのはその立場から宣言が出ていたと思いますので、それを考えていただき、この地に眠る人たちが本当に心から歓迎できるような平和宣言であればと願っております。

HANWA顧問の森瀧春子さん:
私達にはずっと、G7サミットが広島で開かれる以上は、という多くの要望があった。にもかかわらず、19日の第1日目の夜にはもう核軍縮に関する広島ビジョンができて、それがいわゆるG7首脳による討議の結果とは思えない。すでに下書きができていたんじゃないか。というのは、例えば、広島ビジョンの中に原子力発電のことが多くスペースを割かれているんですけど、例えば、ドイツでは脱原発の政策をとっていますし、そういったところで、討議の上、広島ビジョンというものが作成されたとは思い難い面があります。

HANWA顧問の森瀧春子さん(左)

やはり、広島ビジョンという名前を付けるからには、広島がこれまで築いてきた核絶対否定の思い、被爆者をはじめとして、先人たちがずっと訴え続けてきて、世界での共通認識になっていることを前提とせず、あくまでやはり7カ国の軍事同盟ではないんですけど、そういったところでの軍事力の評価というものがなされたという面が非常に強いと評価している。

しかもわざわざ核抑止力について肯定する、改めて認識する文章を入れたということには非常に怒りを感じている人が多い。これは、広島市民だけじゃなくて、世界、例えばICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)とかいろいろな国際的な世論の中で言われている。不信感を持たれている。G7とは何だったのかという

ですから私は、広島から発せられる今年の広島市長の平和宣言に、広島ビジョンを高く評価するような表現というのは決して入れていただきたくない平和宣言の今までの役割、世界に果たしてきた役割を貶めることになりかねない。そういう状況があると強く思っています。

市民の意見を集約してと言われるなら、やはり市長さんが、しかも最終的には市長が執筆されるということですので、ぜひ、間接的ではあるんですけど、そのあたりを伝え、納得される・されないに関わらず伝えていただきたい。

檜垣課長:
それはもちろん伝えます。ちょっとすいません、広島ビジョンの作成、事前に作ってたんじゃないかとかその辺について外交上の様々な調整がなされたもんだろうと私も推察しますけれども、そこを我々が作成したものではないので、何ともお答えしようがないところではある。

平和宣言の中で、毎回懇談会の後、非公開でやらせてもらってるんでそのあと市長がマスコミに対してぶら下がりで、今日はこんな議論ありましたっていうのを公表してるんで、その範囲で申し上げますと、G7について、ビジョンのことを触れてはどうかみたいなことってのはあんまりなくて、皆さん市長が各国の元首・首脳に対しての趣旨を説明した原爆ドームを保存する意義を直接説明したっていうところをすごく評価していて、それをぜひ盛り込んでほしいということをみんなから言われたみたいなことを、終わった後のぶら下がりで言っていましたので、こんなことがあったというような話はあるかと思いますけど、G7広島ビジョンがどうだとかああだとかいうところはちょっと何とも言えない。


広島市の檜垣智弘・平和推進課長

森瀧さん:
市長は、「広島ビジョンを核軍縮への道しるべとして、その影響を評価して生かしていく」という風なことを発言されてますよね。言葉はちょっとその通りではないんですが、そういう趣旨のことを。それを私を見て、松井市長がどういう風にこの広島ビジョンを捉えられてるのかな、と疑問に思いました。

檜垣課長:
先ほど評価してるポイントって具体的に何個か挙げさせていただいたんですけど。核兵器を減少させる行動を逆をさせてはならないとか、被爆地訪問を促すとか、そういったところについて、そういった賛同できる部分について具体的に進めていきたいという趣旨じゃないかと推察するんですけど。ちょっとどういう場面でどういう話をされたのかちょっとわからないんですけど。

森瀧さん:
記者会見か何か、記事で拝見しました。

檜垣課長:
決して核抑止力をサポートするみたいな話では絶対ないと思いますので。

森瀧さん:
もちろん。

HANWA顧問の森瀧春子さん

檜垣課長:
我々核抑止論を明確に否定しておりますので。

森瀧さん:
今まで核兵器絶対否定と言われてきてる立場ですから当然ですけど。

実際の行動が一致しなければ、やはり市民の不信を買うのではと思ってます。やはり国に対して、例えば資料館は十分な時間見られたということなんですけど。ただそのときに、広島市長や広島県知事、そして何よりも原爆資料館の館長さんは、入口を迎えられただけだと聞きましたが、そんなことがありうるんですか。どんな方が来られても、館長および広島市長が直接案内されるんじゃないですか。

檜垣課長:
そこはどう実際どうだったか把握しておりません。

森瀧さん:
把握してください。


HANWA顧問の森滝春子さん(中央)

渡部さん:
おそらくこの広島ビジョンのペーパーの中には、今具体的におっしゃった、これまで広島がやってきて、その中できちんと評価できる観点もあるかもしれない。ですが、全体的にはやはりこの核抑止政策を肯定するような論調になっている。というところで、この広島のビジョンについて、市長がいろいろ発言なさるときに誤解を招くのではないか。これまでの広島の立場と。それは危惧をしております。

あくまで、これまでやってきた長年にわたって先人の皆様が築き上げていただいた広島からの世界に対する平和の発信ですね。核絶対否定、核兵器廃絶、あるいは核廃絶、もっと踏み込んで核廃絶という立場が広島市はあくまで変わりなくその立場なんだというのが明確にわかるということが、とても大事な観点ではないかと。

檜垣課長:
今回、6月定例議会で12人中7人が、G7の評価をどう思うのかという質問だった。それに対して、もちろん先ほど申し上げたようなところを評価ポイントに挙げられてますけど、市長は必ずその核抑止論は、我々は明確に否定するということを付け足しておりますので、そういった誤解はないとは思いますけれども。

渡部さん:
それは本当に大いに期待をして8月6日を迎えたい。本当に心配をしている状況がある。そしてそれがやはりこの文章から、最終的な評価を考えるときには文書ですよね。こういったG7とかは。やっぱり世界にモノを言うっていうところがありますので、その文書については、明確に、市長がご自身、あるいは広島の人類益の立場で、否定すべきところは否定する、肯定するとかですね、そこはわかりませんが、それはぜひ、私達としては期待を込めて、平和宣言を待ちたいと思います。落胆と失望をもう、被爆者の皆さんにさせたくないんです。

檜垣課長:
ですから、これまでの経緯とかを踏まえて、確約はできないし約束もできないし、手続き上私には何の力もないんですけど、これまでの経緯を近くで見ているものとして申し上げるならば、核抑止論は否定するし、核禁条約への日本政府への参加も求める内容になるよう調整されるんではないかと思います。

(以下、平和宣言への要望書と合わせて提出した「広島市平和行政の変質を問う声明」について)

森瀧さん:
これは HANWAとしての、この間の広島市の平和行政への、いろんな疑問を含めて、全体的に見た場合に非常に大きな転換をしてきてるんじゃないかという意味で、HANWAとしてその世論へのアピールとして作ったものです。要請書とかではないがぜひ見ていただきたい。

一つは、先だっての29日、パールハーバーの真珠湾公園と、広島の平和公園との姉妹公園協定が結ばれました。

(参考記事)

あまりにも突然のことでしたよね。ほとんど市民の意見を聞く場面はなかった。その位置づけに、「本市としても戦争の始まりと終焉の地に関係する両公園の提携が、悲しみや憎しみを超えて、平和と和解の架け橋の役割を担う」ものだと位置づけて、アメリカからの申し入れを受け入れたと言われてますけど、それはちょっと本質的に両公園の歴史的な位置づけというものが違うのではないか。

片や、戦績公園ですよね。

そこに展示されてるのは、例えば疎開児童を運んだ対馬丸の艦船も、戦勝とされている。いろんな戦艦への攻撃、撃沈の中の一つにそういうものが入れられてるような、戦勝したことを誇る記念公園の役割も果たしている。そういう意味で、アメリカの歴史上の位置づけはそうかもしれませんけど、広島側から見ると、平和公園というのを、まさにアメリカの原爆投下によって瞬時に無辜の民がたくさん殺され、その後も遅れた死を担わされてきてるわけですから。そういう霊を祀るというか祈る場であり、そこから世界に再びこういうことが起こらないようにというメッセージを発していく場ですよね。

だから本質的に違うと思うんです。それをなぜ、姉妹公園協定を結ばれたのか。

(参考記事)

憎しみを越えてと言ったことは、アメリカが原爆投下が歴史的に間違いだという評価を自ら下して、犠牲者に対して謝罪する、そういう行為の先に、そういう許しとか和解とかという道が開けるんだと思うんですね。

その辺の、まったく明快な説明ができないような協定を結ぶというのは、あくまでやっぱりG7を前にしたアメリカ側からの申し入れということでにわかに起こったことだと思う。それはもう済んでしまったと言えば協定されてしまっている。

今度はそれをもとに、青少年の平和活動に役立てるとか、平和教育に役立てるとかいろんなことが出てますよね。それは非常に問題だと。そういう点で、平和教育のひろしま平和ノートの、今非常に話題になってるはだしのゲンの削除とか、第五福竜丸の削除とかと連なってるんじゃないかなという気がするんですね。

(参考記事)

それはやっぱりはだしのゲンは24ヶ国語に、ここにおられるANTの渡部さんなんかも、そんな一翼を担ってやってらっしゃるんですけど、世界中に広がっていて、なぜこれを広島の平和教育から削除するのかという疑問が飛び交ってます。国際的に広島への不信が高まっている。それが単なる広島市だけじゃなくて我々にも向けられています。だからその辺が非常に問題であると訴えていきたい。姉妹公園協定の問題もです。全部詳しくは時間がないので言いませんけど読んでいただけたら。

もう一つ、最近あのイギリスが劣化ウラン弾をウクライナにも提供して、多分使ってるんだと思うんですけど、戦車と一緒に協議をしたわけですから。それは私達が長く広島として取り組んできてます。2001年のイラク戦争の頃からですね。その結果、広島市のホームページにも明確な記述が、非常に短文ですけど、核心をついた正確な表記がされるに至ってるんですよね。それが突然消えてしまってることに気がついてしまったわけです。3月29日に消されて、なぜなのか。ちょうどイギリスが劣化ウラン弾を供与すると問題になった頃なんです。私達がそれに対して取り組み出して、ウクライナではとにかく使ってくれるなと。戦車をやっつけるのに最も強力な武器である劣化ウラン弾ですが、それが残すのは放射能の被害。バルカン紛争やイラク戦争、湾岸戦争といろんなのところで使われて被害が広がっている。

今回、ウクライナで使われたら、ヨーロッパ全体に影響を及ぼすものであるというような、そういう時点でなぜ消されたのかも非常に疑問に思って、そういうことをあわせて考えて、 G7を契機にそういった方向に行ってしまったら広島市の平和行政がどうなっていくのかなという非常に心配と懸念を持っております。

檜垣課長:
わかりました。一つずつちょっとコメントさせていただいてもよろしいですか。こういったご意見があるということは十分認識いたしました。

まず、パールハーバーの件です。これはこの協定書は当課が所管する案件ではございませんので、こうした意見があったということは所管課である国際化推進課の方にはきちんとお伝えしようと思いますけれども、彼らがいろんなところで説明している中で私も耳にしているものがあるんで一応ご紹介しておきますと、戦争の始まりと終焉の地に関係する両公園の提携は、戦争の終焉の地に関係するとの表現については、1945年8月6日に広島に原爆が投下され、同月15日に戦争を迎えたということを示すものであって、原爆投下が戦争の終結を早めたという主張を認めたというのはちょっと解釈に飛躍があるように思います。

そもそもこの今回の提携なんですけど、既に昭和34年6月に市議会において決議されているホノルル市との姉妹都市提携に基づく国際交流というのが、都市間の連携協定というのがございまして、それをより具体的に加速させるものであると私どもは受けとめておりまして。

森瀧さん:
なぜこの時期なのか。

檜垣課長:
所管課においてこういったものを追加で提携することが、国際交流に資すると判断されたものだろうと思いますけれども。こういったご意見があったよというのは、きちんと伝えさせていただきます。

それからひろしま平和ノートのはだしのゲンの件についても、こちらも当課が所管する案件ではございませんのでこういったご意見があったということについては教育委員会の方にきちんとお伝えしますけれども、これも聞いている範囲で状況を申し上げますと、今この改定については、一定の事業、事業時間内で学習目標を達成するために、より使いやすいものという観点から教材を見直したものですと、見直しにあたっては平成25年に策定した平和教育プログラムというものがあって、それから6年たった平成31年に平和教育プログラム検証会議というものを設置して、これは学識経験者とか校長らで構成する外部の会議体らしいんですけどそこで平和教育プログラムを検証していただいて、改定の必要性を検討した結果一部見直す必要があるとの結論になったというふうなことを聞いております。こちらもこういう意見がありましたよということをお伝えさせていただきます。


広島市職員の手元資料

劣化ウラン弾の件は、我々当事者なので、ちょっと説明させていただきたいんですけど。劣化ウラン弾の記述が削除されたことが、日本政府からの指示ではないかとみたいなことをおっしゃってると思うんですけども。当該ホームページってのは、よくある質問の回答という、広島市のホームページの1項目であって我々が全体を所管している平和とか原爆とかのコーナーではないところに、質問よくある質問一覧みたいのがダーッとあって、その中の一項目で。

その中の1項目で先ほど多分おっしゃられたイラク戦争とかあった頃に、約20年ぐらい前のにそのときに多分話題になっていたので、作ったものだと思われます。20年間ずっと更新することなく、その内容が掲載されてきたということで、実は私この職3年目になるんですけども、大変恥ずかしい話ですが、こういったものがホームページに、平和のコーナーは全部把握してるんですけど何が出るか、そういったところにそういったものが載ってるってのはちょっと存じ上げてなかったそこは反省すべきところではあるんですけども。

この度3月27から28日にかけて、複数の市民の方から、記載されてる内容に事実誤認があるというようなご指摘を受けたんです。これは多分、今おっしゃったようなウクライナの関係する報道があって、検索される方が増えたんだと思うんですね。

あんまり今まで検索されることなかったけれども、そういう報道があったために検索される方が増えてきて、この記述は事実と異なるんじゃないかという指摘を27日から28日にかけて複数の方から受けたんです。我々その指摘された内容を踏まえて当課で改めて記載内容を確認したんですけど、もう一度ちゃんと調査する必要があると判断いたしまして、3月29日に、削除ではなく一時的に公開を停止したという経緯がございます。31日に修正した内容に改めてアップし直してるんですけど、30日の時点ではこういう経緯があったんで一旦停止、ということもホームページ上に出させていただいている。あまりその辺は伝わってなかったみたいなんですが、3月31日付けで修正した内容を改めてホームページに掲載した。

ですので、これは日本政府から圧力があったとか、そういった指摘・憶測はまったくの見当違いということなので、皆様の信用のためにも、あんまり事実と関係ないことを言われない方がいいんじゃないかなと思います。そういったことは一切ありませんので。あと修正内容については、広島大学の先生であるとかいろんな専門の方に確認した上でですね、人体環境への影響について、WHOなど国際機関による調査ではこれまでのところ確定的な結論が出ていないという事実を踏まえた上で、見え方によって少し退化したみたいな見え方になってるかもしれないです。

それは、現在決定的な結論が出てないということを踏まえて書き直したものにはなってるんで、それを専門家の意見を聞きながらですね、広島市としては正しい情報を発信しなきゃいけないので、そのようにさせていただいたんですけど。

一方で本市としては、そうした危惧とか懸念がある以上は、本市として使用すべきでないという考え方をそういう立場をより強く明確に修正文の中でお示ししてるんです。それまではこんなに悪いことだみたいなことしか書いてなかったんですけど。新しい修正内容については現状、世界的にはこんな風に言われてるけれども、そうした危惧がある以上、広島市としては使うべきではないということを明確に示した内容で修正しておりますのでここについては我々としてはその一連の対応について何ら不備はなかったと考えております。


意見交換の様子

HANWA事務局長の藤元康之さん:
その点についてはちょっと事実確認だったと思いますので、いろいろ事実確認した上で、修正することもやぶさかではございません。

渡部さん:
(パールハーバーと平和公園の姉妹公園協定の件)23日に新聞報道で知って、29日に調印でしたね。あれでは市民に考える時間もない。どんな意見があって、この枠組みが本当に広島にとっていいのかどうか、昭和34年からハワイの姉妹都市も含めて市民同士の交流が重なってきたことはよう知っております。本当に皆さんやってこられました。だけど、そういった方にもおそらく何もないところで突然あっという間に調印に至った。しかも、市長がお一人でアメリカの大使館に行って調印された。やっぱり市民の目から見ると不自然だと思うし、もっとやっぱり私達が開かれた議論をして、一体これは歴史的な視点から見ればどうなるのか。

戦争の始まりと終焉、今ご説明いただきましたが、そういう表記が本当に正しいのか。歴史家の視点も入れて、そしてこの枠組みで提携することが広島にとって良いのか。もちろん未来志向でお互いが交流することは大事ですけれども、この協定をする前にきちっと議論すべきではなかったか。それがなかったことが残念。

檜垣課長:
わかりました。そこはしっかり伝えます。

渡部さん:
そして、これ5年間で何も異議がなければ(協定継続)ということですから、やはりそれまでに本当に開かれた議論の場を作って、いろんな意見を出して、これは広島市の将来にも関わることだと思いますし、その中で具体的に出された提携案についても丁寧に吟味していかないといけないんじゃないかと。

そういう広島市の姿勢を本当に望んでいますし、それがおそらくあるべき姿ではないかと思います。あと劣化ウラン弾のこととかあるんですが、もう少し広島市の皆さんに私がお願いしたいことは、もう少し市民、しっかり議論をできるだけの時間、あるいはそれだけのことが考えられる情報を開示していただきたいんですね。

市議会での議論も、あったと聞きますが、議員の方に聞きましたら、ほとんどありませんとおっしゃいましたね、ペーパーだけ配られた。それはないだろうと。やっぱり「国際平和文化都市」は、民主主義のきちんとしたルールに基づいて、この町をやっていくんだっていう姿勢が見えないっていうことは、平和都市の名前にはちょっとどうかなと思ったりして心配をしている。


渡部朋子さん

もちろん私達市民も考えますけれども、行政の方でも今の、最近割と何となくですけども、そういったことが多いような気がしますので、変えていっていただきたいと思います。これはどうでしょうか。

檜垣課長:
もちろんそういったご意見をお伝えさせていただきますし、私の胸にも刻んでおきます。

渡部さん:
そうしてください。やっぱりこれからでも遅くないと思うんですよ。このことでやっぱり広島市の方もそういった、みんなで考える場、意見を交換する場を作っていただくなり、市民の方でもやっぱりそれを開いていった方がいいと思います。

もう決まってしまったからではなくて、今からでも遅くないと私は思いますので私自身も考えていきたいし、幅広い議論こそが今本当に大事だと思いますので、そうであってほしい。ぜひともお願いをしたいと思っています。

HANWA運営委員で広島YMCA職員の中奥岳生さん:
ハワイのことで一言。僕はYMCAに勤めております。1959年に広島市とホノルル市が提携をしまして、1960年に浜井市長(当時)がホノルルの市長をYMCAに連れてきていただきました。そして1961年からYMCAはホノルルYMCAと交流を始めて今年まで続いております。その都度、私は子供たちは広島から行くときは、パールハーバーに行きます。そして広島からハワイから来ていただくときは広島の平和公園に来て平和について学んでいくというようなことを続けています。


HANWA運営委員で広島YMCA職員の中奥岳生さん(左)

今回このようなことがあったのでどう対応したらいいのかなみたいなところもあります。なので、こういうこともしっかり、今こういう姉妹公園提携というものが結ばれたんだけど、君たちはどう思うかっていうなところは一つのテーマにして平和を考えてもらうというふうにはしていきたいと思う。

あまりにも急だったので、今年ハワイの方たちが来るんですね。なので今スタッフでどのように対応していくか話していますので、そういうお話があった場合は、少しお時間いただいて、いろいろ市民の方々の中で議論をしていただき、時間もとっていただいてやっていただくようにしていただければ非常にありがたい。ですから浜井市長が繋げてくれた縁ですので、私達もこれは大事にしていきたいなと考えております。すいません。以上です。

終了後、ぶら下がり。

記者:
森瀧さんに。改めて、今回要望された内容についてもう一度お気持ちを。

森瀧さん:
平和宣言については、従来から何度かこういう申し入れ(をしてきています)。HANWAだけじゃなくてかつては数団体一緒に、核兵器禁止条約を求めるときには、20何団体が一緒に行動した。特に松井市長になってから、禁止条約ができたにもかかわらず、自分を主語として、広島市自身を主語として、禁止条約の締結・批准を国に求めるという文言がなかったんです。「被爆者は願っている」という形ではあったんですけど。そういうのが広島市の平和行政として許せないということで、強い申し入れをしてきました。


森瀧春子さん

近年はそんなに私達がとんがって要求するというような問題もあまりなく、それ以来禁止条約のことも市として書いておりますし、「核兵器は絶対に絶対悪だ」という立場で言われてきたんですけど、今回のG7後に、ほとんど報道でしか私達は情報がないんですけど、ある意味危機感を持ったわけです。広島ビジョンを規定に今から活動していくかのような、NPTも含めてですが、広島ビジョンは使えるものではないというのが実際の実感ですから。

一番問題なのが、先ほど、核抑止に基づく、それをあくまで今必要なんだということを前提にしていくものですから。広島ビジョンの中でいろんなこと言ってますけど、そこがあるだけで私達は容認できない。広島市にはやはり広島ビジョンを否定してほしい。そこが一番強い要求ですね。やはり、世界に対しても、広島市には責任や義務があると思うんです。そういう意味で改めて注視していかなくてはならないと思っている。

記者:
森瀧さんに。平和行政の変質を問う声明に関連して、まとめのようなお考えを少しお伺いできれば。「変容」というと、これまでこうだったものが今こうなってきている、というイメージだと思うんですけど、そういう形でいくと、広島市がこうあるべきなのに今こうなってるというような、一言お願いできますでしょうか。

森瀧さん:
やはりG7広島サミットが、すべての問題の出発点にあると思う。しばらく前から準備を受け持っている広島市、いろんな意味で次々に、今までなかったような姉妹公園の協定もそうですし、平和教育の変質というものがあって。

実は、『はだしのゲン』だけじゃなくて第五福竜丸も削除する。そして代わりに、憎しみを超えて和解ということを主張する人の文章が入ってきている。そこまでは書いてないんですが、そういった、一番広島市の平和行政の基本である平和教育が変えられていく。それもG7サミットを起点にしてるんじゃないか。この2月頃からの動きがどうも、危機感を持たざるをえない方向に進んでいる

やはり私は、広島市として主体性を持ってG7サミットに向き合ってほしかった。やはり批判的な立場から、広島市民を代表して、ただ歓迎して受け入れる一方というのは、機運を醸成してことに資していくという表現をしてますよね。広島ビジョンはじめG7サミットは。そういう評価自体が問題だと思います。

やっぱり私達が一つずつのことだけを取り上げていたんじゃダメかなと。これを放っておくと、広島市の平和行政なるものが大きく転換していく一大転機に今立たされているんじゃないか。それを私達がやっぱり直視して、そうならないように、運動の側から働きかけていかなくちゃいけない。

さっきの劣化ウランの問題も、そういう事実はそうでしょうけど、実はWHOとかIAEAとかっていうのは劣化ウランの人体の被害、因果関係ないとずっと言ってきてるわけですね。あれだけ私達も実際に行って現地調査をしてそれを広島の科学的知見である原医研とか金沢大学で分析をしてもらって、それと現実に起こっている数々の子どもたちの白血病であるとか放射能によると思われる被害、それをどう説明するのか。それを否定するんであれば、そういうことを非常に端的に書いてありますよね。

市が当時の私達の主張をそのまま入れているんですよ。実は。我々の文献の中にある文書。それをそのぐらい市が一緒に歩んでいた。放射能被害に対する記述が消えたというのを聞いて、私はもうかなり、ここまでやるかなという気がしたんです。

それは、今まで20年ほっておいたと言っても、今また劣化ウランの問題がウクライナで使用されるというそのときにあたって、たった数行のものを削除していくということが、非常に小さな問題ではないんじゃないかという気がしました。

そういう意味で、ぜひメディアの皆さん、今の私達では広島市の行政の全貌を把握するのは難しい。後追いになっちゃうんです。今度のパールハーバーと平和公園の協定のことも。だから、その辺の情報を、私達にできうる限り、提供していただければと思っています。

記者:
もう一点関連して、その上で望むものは、声明にも最後と言っていただいてますけど、「いずこの国の権力に対しても、核の非人道性を訴える義務があって、国家権力に媚びず」という部分でしょうか?

森瀧さん:
そうです。私はそう思ってます。広島市は一地方自治体ですが、やはり被爆して、たくさんの人を瞬時に殺されて、今も多くの被爆者が苦しんでる。それを守る立場にあるわけでしょ。それを告発しないと核が現に世界中にあるし、今に核戦争が起こるという危機にある。だから、広島市は胸を張って世界に堂々と訴えていく義務がある。義務もあるし、権利もある。私達は広島市がそうあるべきだということから、実際の期待が虚しいことも片方では感じながら、やっぱり言い続けていかないといけない

記者:
この78年、広島で積み上げてきたものが尊重されてないというか、それが崩れることへの危機感が強いと思うが、その表れとして、いろいろ挙げられていることがあると思います。今危機感を抱く状況になっている背景、理由というか。それは、どうご覧になってるか。78年という時間の経過なのか、今の広島市の体質なのか。あるいは、社会全体の構造なのか。どういうことが根本にあるとお考えか。

森瀧さん:
私はね、やはり今の日本政府の取ってるいろんな施策・政策ですね。特に安全保障の政策をめぐって、次から次にあり得ない、今まで考えられるようなことを平気で進めているじゃない。大軍拡っていうことで。ですから核なき未来をと岸田首相が言っても、まったくそれを裏切る行動ということになるわけですね。現に武器供与の自由化も今図ろうとしていたり。憲法そのものが邪魔になるから、(故・)安倍(元)首相でさえ小出しに用心しながら出していた憲法改悪の問題を、今やまったく問題にしないかのような、憲法がないかのような行動を平気でしているじゃないですか。

だから、全体にそういう自民党政権が結局長く続くからということもあるんですけど、今の岸田政権が広島出身であるというのは、むしろもう、私たちにとっては害にしかなっていない。それを利用してるだけだと思う。いろんなところでやってることを考えると。国民の命を守るんじゃなくて、例えば軍需品の海外輸出だって軍需産業を守るためじゃないですか。そう考えたら、やっぱり為政者のあり方が大きく、今の広島の松井市政にも影響を及ぼしてるんじゃないと思います。

渡部さん:
わたしも思います。今日本の国のあり方をみていると、先ほど私が広島市政のことで言いましたけど、きちんと議論を積み重ねて物事を決定するということではないですね。今の日本の国会の様子を見ていても、ほとんど内閣の閣議で決めて、あとは一方的に通達っていうか、そういう形でどんどん進めていく。それと同じ形が、小さいサイズでこの広島で起きているということは、私自身は今、非常に大きな危惧を持っていて、日本中にそういう機運がある。そして、即断即決なんです

本当にそれで良いんだろうか。本当に広島市であれば使命があるはずだけど、使命については忘れられている。亡くなった人の声を聞かない。そして後から先ほどのような説明をして終わってしまう。本当にそれでいいのか、ということは、足元の民主主義も危ういんじゃないかと思っています。

そういう中での一つの表出ではないかなと、大きな危惧・心配があって。でも広島がもし核抑止政策を容認したと、この文書に広島ビジョンという名前がついてますから。一体お互いどこが核兵器廃絶。広島は旗を降ろしたと、みんな思ってしまいますよね、世界中が。そうなったら、この世界の中で核兵器を使わせない歯止めになってきた、それがなくなってしまう。必ず広島が変質すれば、核兵器は使われるという、そういう大きな危惧というか心配というかおそれがあるんですね。

本当にそれは実現のものになりかけてますよね、今の世界の状況を見たとき。だからやっぱりきちんと声を上げていかなきゃいけないと思って今日来ました。

記者:
これまでもそうですけども、かつてないぐらいにG7を経て、平和宣言の重みがすごく問われる夏になるんじゃないかと思うんですが、先ほど渡部さんからの問題提起にもありましたが、議論を積み重ねて決めないという。例えば同じ被爆地である長崎は、起草基委員会はフルオープンで、若者・学生さんも多分入ってると思います。傍聴席も設けている。かたや広島というのは、頭撮りのみの非公開で、なかなか見えない中で行われてる。二つお聞きしたいんですけども、そういうありようについて、今後どうあるべきかということを思われるかってことが一点、もう一つは、でもそれを市民がそれでいいと認容してきたんじゃないかと思うんですけども、その2点について渡部さんにお聞きしたい。

渡部さん:
最初の質問に対しては、開かれたものであるべきだと思います。これが本来の姿です。これがやっぱりこれまで広島が培ってきたものの一つの象徴的な力だと思うんです。平和宣言っていうのは市民の想いが込められている。市民の、それこそ血と汗と涙がそこにこめられてこそ力を持っていた。今だんだんその力が小さくなっている。失わつつあると思う。それを何とか取り戻したいと思ってるんですが、もう一つは、その市民の側もきちっとそういう目で批判的に市政を見たり、あるいは自分自身も考えてみたり、そういうことが、特に若い世代よりも、そうでない世代。自分も含めてなんですけど、そこでも易きに流れてしまうような、そういう暮らし方だったり、関わり方だったり、そういうものがあると思いますから、先ほどパールハーバーのことでも勉強会をというのはそうなんですね。一人ひとりの市民が目を覚まさないと、この町はまた元の力を取り戻すことができないと思います。

あるんですよ、潜在的には。だけど、忙しかったり、経済が悪かったりいろんなことがあります。その中生活に追われていたらできない。でもそうじゃなくて、今やらないと、明日がなくなるんだから。もう1回それを取り戻す、そういうことをやっぱり丁寧にやっていきたいし、一番の力は市民だと私は思ってますので。若い世代だけじゃない、すべての世代がこのことについて真剣に考える場を、これをきっかけに持っていきたいと思うし、私自身は5年後にまた更新しないという形になれば。それは先のことですが1個ずつやっていきたいと思う。

市民、私達自身が実は問われてると思うんですね。広島市に問うたことはすべて自分に返ってくると思ってます。だから、やっぱりどんなことがあってもやり続けるし、声を上げ続けるし、そして仲間を増やしていかないと。一人ひとりの力は本当に小さいですから

でもそのときにメディアの力は大きいですから。私はぜひ一緒にやっていきたいと思っています。明日がなくなるんですよね。このままで行ったら間違いなく。そういう気がして、ヒロシマがヒロシマでなくなる。私はそれは嫌です

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