高校同級生・吉田亜美の証言 【小説】どの顔もあの女#17
もしもし。はい、蒼山高校20期生ですけど。高梨真矢さんですか？ すみません、誰ですかね……？ ちょっと思い出せなくて。高校時代の同期生で、２年間一緒のクラスだった？ そんな人いたかな。記憶にないです。他のクラスじゃないですかね？ せっかくお電話いただいたのに、申し訳ないです。えっ、卒業アルバムの写真をメールに添付して送りたい？ ｘｘｘｘｘ＠ｇｍａｉｌ．ｃｏｍです。はい、お願いします。
（１分後）あぁ、いた、いた！ いたわー。確かに同じクラスでしたけど、１年に１〜２回くらいしか話さなかったです。いや、いじめてたとか、そういうんじゃないです。なんかクラスで浮いてたっていうか、自分からみんなの輪に入ろうとしなかったっていうか、みんなのなかでは「よくわからない子」的な感じだったんですよね。だって、クラスの誰とも話さないから。授業中、必要なことがない限り、高梨さんでしたっけ？ あの子は話してなかったと思います。
昼休みになると教室からいなくなってた、ですか？ うーん、覚えてないです。意識してないので。
普通の10分休みとかはトイレで会ったりしてましたね。私たちは同じグループの女子でトイレに行くのが普通でしたけど、高梨さんはいつもひとりでした。友達、いなかったんじゃないですかね。存在感、なかったです。ただ、成績は良かったと思います。いつも学年10位以内には入ってて。400人いるなかで10位ってすごいですよね。
でも、それ以外、全然目立たなかったですよ。とにかく地味だったし、おしゃれでもなかったので。真面目で何を考えてるかわからないタイプ、という記憶しかないです。
で、高梨さんがどうしたんですか？ 亡くなった？ え、マジですか。全然交流なかったし、同窓会も来ないし、卒業してからだから15年くらい会ってないですけど、さすがにびっくりですね……。お兄さん、高梨さんの彼氏さんですか？ つらいですね。また何かあれば連絡ください。私よりも高梨さんのことよく知ってる人、紹介できるかもしれないです。
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