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【小説】どの顔もあの女

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自宅マンションで絞殺体として発見された、自称小説家の高梨真矢(33歳)。一体なぜ、誰に彼女は殺されたのか。真矢の恋人が遺された“資料”をもとに、真矢の過去を知る人々のもとを訪ね、… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

父・高梨昭夫の証言 【小説】どの顔もあの女#33

 はあ、あなたが真矢とお付き合いしとった方ですか。そうですか……(しばし沈黙)。真矢が男の人を家に連れてきたのは、哲哉くんだけやったね。ああ、離婚しましたけど、結婚してた相手です。籍を入れた年の正月に連れてきて。「この人と結婚したよ」言うてニコニコしてました。一回しか会ってませんし、連絡も取ってないので、ほとんど覚えてません、哲哉くんのことは。  ほんで、今日は何を聞きたくて来られたんですか? 真矢がどんな子どもだったか、ですか。はあ……。私もね、娘のことはようわからんので

セフレ・吉川瑛太の証言 【小説】どの顔もあの女#32

 真矢ちゃんとの出会いは半年くらい前です。きっかけは出会いアプリですね。SNSで共通の友達がいる人と出会える、みたいなアプリです。なんでそのアプリを使い始めたか、ですか?  僕は恋愛や結婚相手探しというより、セフレ探しが目的でした。彼女は欲しくないんで。だって、時間を取られるじゃないですか。だから、いらないかなって。仕事が忙しいからセフレがいれば十分です。  真矢ちゃんも彼氏が欲しいとか、結婚したいとか、そういう考えはないみたいでした。だから僕と似てたんですよね。ニーズが近