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「雪国」を語り尽くす かだい図書倶楽部

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photo byかもめ通信 川端康成「雪国」ファンブック。 本が好き! で書いた書評プラスa企画
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編集前記

編集前記

書評でつながる読書コミュニティ・本が好き!で開催中の書評イベント「復活!課題図書倶楽部・2015」がきっかけで読んだ川端康成の代表作「雪国」に思いがけず大ハマりしたので、作ってみました。

単なる思いつきなので、ずっと工事中のままになるかもしれません・・・。

雪国とアート

どのフレーズも、どうやって作ったのかわからない超絶技巧の工芸品のように端正で美しい「雪国」。読みながら、フレーズが描写している情景とともに、脳裏に浮かんでくるアートがある。

“「駅長さん、弟をよく見てやって、お願いです」悲しいほど美しい声であった。高い響きのまま夜の雪から木魂して来そうだった。”

アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」

“女の印象は不思議なくらい清潔であった。足指の裏

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研究:国境の長いトンネルを抜けると・・・「いき」の世界であった。

研究:国境の長いトンネルを抜けると・・・「いき」の世界であった。

九鬼周造は『いきの構造』でこう言っている。

“要するに、「いき」は「浮かみもやらぬ流れのうき身」という「苦界」にその起源をもっている。”

『北国』というタイトルからはとんと想像もしていなかったのだが、本作はその「苦界」にある女を、物語の話者である男が訪ねてゆく話である。

その女は十九。ひなには稀な美しい女だった。

芸者というわけでもないが全くの素人とも言えない、ワケありの女だった。

片田

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レビュー:惚れたアタシが悪いのか

レビュー:惚れたアタシが悪いのか

走る汽車の車窓から外を眺める男。
暮れゆく雪景色を背景に、そこに映り込む乗客の娘をジッと観察し続ける目線から物語は始まる。
主人公である駒子とこの語り手の男の関係が本作の柱であるが、語り手の男・島村は「観察する者」としてこの世界に存在している。
彼の人となりを形成する背景もチラと垣間見えるが、本筋とはあまり関係なく、あくまで「駒子が惚れた男の描写」としてのみ存在するように思える。
けっく、ヒロイン

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