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戦争と薬物

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疲労、飢餓、恐怖、睡眠不足、これらが戦争のもっとも基本的な要素である。薬物はこれらの問題を中和する手段である。個人の戦闘行動も、集団の戦闘行動も、すべてその当時の文化規範や道徳規…
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#ベトナム

ベトナムでは兵士がビールを薬のように浴びた

ベトナム戦争(1965-1973)は、おそらく軍隊が毎日大量のアルコールを供給していた最後の戦争だった。ベトナムの戦場でアメリカ軍の規律に深刻な脅威を与えたのはヘロインやマリファナだったが、アルコールの問題もそれらに劣らず深刻だった。当時の国防総省の調査によると、9割弱の兵士が勤務中に飲酒しており、しかもその量も半端な量ではなかった。下士官の7割、将校の3割が、飲酒に関して何らかの問題を抱えていた。 ベトナムでは、兵士に1日1人当たり缶ビール2缶が支給されていたが、基地内の

きれいな尿はいくらでも手に入った

1971年、ニクソンが大統領であったとき、彼の机に腰を抜かすようなとんでもない「報告書」が置かれた。 ベトナムに派遣された兵士のうちで3万数千人がヘロインの依存症になっているというのである。これは戦っている兵士の30%に近い数字である。 報告書に目を通したニクソンは、アメリカの麻薬問題の主要な部分というわけではないが、その中でとくに心を痛めるのはベトナムで麻薬を使用した兵士たちであると述べ、国防長官に対して、「能力を失った兵士を戦場から離脱させ、軍の即応性を維持すべきだ」