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戦争と薬物

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疲労、飢餓、恐怖、睡眠不足、これらが戦争のもっとも基本的な要素である。薬物はこれらの問題を中和する手段である。個人の戦闘行動も、集団の戦闘行動も、すべてその当時の文化規範や道徳規…
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#ウォッカ

アルコール依存国家

ロシアがむかしから「アルコール帝国」と呼ばれたのは、国家そのものがアルコールによる税収に強く依存していたからである。 これは、15世紀にイヴァン3世がウォッカ産業の国営化を進めたときに始まった。帝国最盛期の19世紀には、酒税がロシア国家予算の3分の1を占めており、軍事予算はもとより、贅の限りを尽くした冬宮殿の建設費もこれでまかなわれた。そのため、政府はウォッカを国民にいっそう奨励した。 こうしてロシアでは、人びとがウォッカを飲めば飲むほど、国の金庫に金が入ってくる仕組みが

ロシア軍はウォッカについて驚くほど自由で寛容だった

なによりもロシア皇帝軍の特徴は、ウォッカについて驚くほど自由で寛容なことであった。浴びるほどウオッカを飲むことが軍隊での習慣であり、そしてその習慣が規範にまで高まり、国民性の重要な一部分となった。軍隊では大酒は決して軍務と相容れない行為ではなく、むしろ節酒が政治的な逸脱行為だとみなされることもあった。 毎日30杯以上のワインを飲んでいたピョートル大帝(1672-1725)が、18世紀の初めに皇帝軍の水兵に週3回のウオッカの配給を許可した。その後、チャルカ(charka)と呼