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戦争と薬物

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疲労、飢餓、恐怖、睡眠不足、これらが戦争のもっとも基本的な要素である。薬物はこれらの問題を中和する手段である。個人の戦闘行動も、集団の戦闘行動も、すべてその当時の文化規範や道徳規…
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#ビール

ヨーロッパ戦線 銃後の乱痴気

かつて酩酊薬物がこれほど象徴的な重要性をもったことはなかった。 第二次世界大戦では、アメリカ政府は、戦地に赴く兵士の喉が渇いていることは許されないと、醸造業界に対し生産量の15%を軍用に割り当てるよう指示した。ビールメーカーは喜んでこれに応じ、戦争への貢献をアピールした。ビールは愛国心や士気を高める飲み物として描かれ、ビール酵母に含まれるビタミンBの栄養価の高さまで誇らしげに強調された。もちろん、国防省の職員にもビールは配給された。 イギリスも同じだった。食品大臣ウールト

ロンドン市民は兵士たちにビールを送り続けた

戦争と薬物の関係は深い。 精神に作用する物質は、兵士の勇気や士気、集団の絆を強めるのに不可欠であるが、退屈な時間を埋めたり、ストレスや疲労に対処するための化学的方法も提供する。したがって、兵士の薬物使用は、国家によって容認され、また促進もされてきた。 たとえば、アルコール(酒)である。 酒は脳内でエンドルフィンを分泌させ、ストレスを軽減し、精神を高揚させ、幸福感を増大させる。摂取量によっては、覚醒と鎮静の両作用がある。だから、酒は、勝利の乾杯や敗北を麻痺させるのに役立っ