伝説の料理「チリチリイ」の謎
「チリチリイ」という料理をご存知だろうか。
豚バラ薄切りにニンニク、ショウガで下味をつけ、しょうゆ、みりん、酒、砂糖を煮からめたものだ。仕上げに炒り胡麻を振った。生姜焼きとも言えるし、照り焼き風でもある。今回は豚バラを使ったが、お安く豚こまでもいいと思う。
これと言って特徴のない料理だが、「チリチリイ」という名前が引っかかる。おそらく「そんな料理知らん!」という人がほとんどだろう。
実はこの料理、実家でよく作ってもらっていた。野菜嫌いの子供だったが、野菜のかけらも入っていない「チリチリイ」は好物とも言えるものだ。それほど頻繁に食卓に上った。
さて、その名前について。勿論親のオリジナルネーミングではない。よく親が使っていたレシピ本に「チリチリイ」があったのだ。もう何十年も前の本で、先日確認したが物持ちのいい親が保存していた。表紙などはとれ、ボロボロではあるものの、「チリチリイ」が確認できた。
時代を感じるレシピ本。確かにここに「チリチリイ」は存在する。しかし、「チリチリイ」がいったいどこの料理で、名前の由来は何なのかなどの説明は当然記載されていない。
幼い頃から馴染んでいたので、「チリチリイ」という料理について疑問に思ったことはなかった。結婚して、「それぞれの実家で食べていた料理」が何かについて話していた時、「『チリチリイ』? 何それ?」みたいな感じで、この料理が決して一般的なものではないことに気がついた。確かに実家で食べた以外、お目にかかったことはない。
わからないことがあったらすぐ調べられるのが現代のいいところ。早速Google先生に聞いてみた。
おお、何ということでしょう。検索結果7件。Googleが探して7件というのはゼロに等しいのでは。
検索結果トップはCookpad。早速確認してみると、レシピはほとんどコチラのものと変わりない。しかし、料理名が「チリチリ(炒)」ですと?! なるほど、チリチリに炒めるから
「チリチリイ」なのかと納得しかけるが、料理名の語尾に「イ(炒)」を付けるのはあまり例がない。またなぜこの名前なのか、どこの料理なのかの手がかりもない。
残りの検索結果はブログやInstagramのもの。かろうじて「チリチリイ」の存在が確認できる程度だ。同じ料理でも「チリチリ」って名前だったりする。言うほどチリチリな料理だろうか?
さて、実は「チリチリイ」関連ででブログに2エントリー上げているのが、アメブロのチビスケさんである。
「チリチリイ」を他で聞いたことがないという、まさに同じ疑問を持っていらっしゃる。そしてお母さまが作っていたということで、古いレシピ本を確認してみると・・・。
おおっ! どこかで見た記憶が! 本note2枚目の画像と比べていただきたい。全く同じ写真。そう、チビスケさん家に伝わる「チリチリイ」のレシピも、同じ古(いにしえ)のレシピ本が発祥だったのだ!
極端に少ない検索結果、子どもの頃作ってもらった料理、同じ本のレシピ発祥などという事実から考察するに、おそらく「チリチリイ」は、このレシピ本のレシピしか存在しない、唯一無二のメニューである、という推測が成り立つ。そこから想像を広げれば、「チリチリイ」はどこかの国の料理でも何でもなく、このレシピを考案しレシピ本に掲載した人が作り出した創作料理なのではないだろうか。
なぜ「チリチリイ」?という当初の疑問には答える術がない。レシピ考案者を探し出して問い詰めればわかるかもしれないが、本の古さから考えるとかなりのご高齢か、ひょっとすると物故者となられているかもしれない。もしそうなら、「チリチリイ」の謎は永遠に解明されることはない。
神秘のベールに閉ざされた「チリチリイ」。残された我々にできることは、このレシピを守り、料理を作り、その美味しさを語り伝えていくしかないのかもしれない。
※細かいレシピについては、チビスケさんのブログをご参照ください。また、「チリチリイ」についての新たな情報がありましたら、是非ご連絡ください。名前の由来が知りたいです。