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鏡像

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皧迷

行ってはいけない場所に、行こうとしている気がする。ただの、単純明快な「すき」って感情だったのにそれでよかったのに「知りたい」なんて思っていて、わたしに理解なんてできなくて、しちゃいけなくて、それを分かっているからこそ、この感情がよけいに分からない 苦しい なんでこんなこと思ってるんだろう 気持ち悪い

迷路

こんなにも激しく雨が降っているのに
悍ましいほど轟轟と風は吹いて
秋の空よりも情緒不安定なこころで
乱立する蛍光灯の街を
雑なエモーショナルに浸りながら
ひた走り 走り続けて
和解 融合 なにひとつできないまま
会話 対峙 なにひとつ許せないまま
今日もおやすみなさい
果たせなくってそれでいい
今日もおやすみなさい

処女

こぼれかけたキャミソール

ちいさくなでた肩の真似

虚ろな目線の先にある

昨日も読まない乾燥標本

不謹慎で明白な

不気味で名誉な

そんな噂がたつほどに

薄く脆い存在であると

願い祈り また 乞い祈むだろう

巡皧

はじめて買った、アプリコットの香水
振り方も分からないから、とりあえず腕につけた
なんだか、遠い匂いがして
少女は こんなにそばで大人になってしまったのだと

循環

あの子が恨んだこの世界
あの子を生んだこの世界
同じだなんて、とても信じられないけれど

すべての時刻の正解に
あの子が立っているならば
もう一度愛そうかなんて

曖昧より、甘い。
戸惑い

春眠

できれば、抱かれたまま死にたい。

褪せる呼吸 遠のく目眩が

果てしなく愛おしく思えるような

幻にたどり着けるような

そんな死を夢みてる

病室のベッドでは、終わりたくないなあ

敬愛

いちばんすきなあなたの写真に
そっと話しかけてみた

微笑んだあなたのそばで
ただそれを恍惚と眺めるわたし

とても届かない存在で
けどそれでよくって
いちばん安心してる

できればわたしの腕を掴んで
そっと連れてって欲しいけれど

全てが歪んで

あなたの目がすこしわらった。

肺奥

病室で揺れる、白いカーテンがきらい。
(何よりも、愛していて)
柔らかくて、繊細で、生気のない けど暖かい
(そして、大切に仕舞っている)
あの子の腕によく似ていて
(そうだ、思い出した)

午前

身支度をして
電車に乗って
人と会話して

そんなことが当たり前に行われている、
『今』がこわい。

わたしにとって

暖かい布団を退かして
重たい体を起こして
向こうの眩い光を感じながら

カーテンを開ける。

それすら、こんなにも難しいことなのに

ひとと話すのはこわい
目を覚ますのもこわい

眠るのが、怖い。

朝では無い朝を迎えられる
そんな夜に行きたくて、

見つけるんじゃなくて
見つけ

もっとみる

喪失

淡く仄かな硝子の素肌
天使の翼は生えてない

どんなに雨が降り続けても
いま覚えている

歪ませた横顔のまま
振り向いて

どうせならそのまま
心地よく眠り続けて

いつの間にか遮られた光を
瞳の反射でふと想起する

理性の中にある時間経過の単位
押しつぶされて

あるはずもない天使の羽が
誰かに踏みにじられる

酔眠

口から零れた少しのお酒が
わたしには、言葉に見えて

どうしようもない惚気けた顔が
なぜだかとても、遠くみえて

こんなに近くにいるのに
知らない色に染まるから

声が出ない

いまてをつないで

銀波

朝の位置が知りたいの

夜に抱かれていたいから

濁った風味の街を歩いて
冷えた雨水に浸りたい

孤独を忘れていたいから

おつきさまは酷く静かで
今日もまた
一睡も出来ない

肌荒れしてる

愛おしいね

ナルコレプシー

ねえ 覚えてる
赤い果実を啄む鳥が
緑の草木生い茂る庭が

ひどく残酷に見えたこと

忘れないでね

わたしずっと
待っているから

徒爾

泣き出しそうな淡色が
銀のガラスの向こう側から覗く

朝露の溶けだす音とともに
ちいさな秋が落ちてきて

人工芝も季節に染る

隣の芝生は朽葉色
隣の花すらチョコレイト

命が終わっていく

窓際に映る切望が
きれいで、
きれいで