連載「私の好きなミニコミ」第二回


 自費出版メディア、ミニコミ。最近はZINE(ジン)と言うらしいが、おそらく中年諸氏の方にはミニコミという言葉がしっくりくるのではないか。文字情報がネット・メディアに移行した昨今だが、まだまだミニコミは生き永らえて、独自の文化を発信し続けている。

 1970年代からある超老舗の新宿『模索舎』、トーク・イベントも活発な下北沢の『B&B』、3年まえに千駄木から池之端に移転した『古書ほうろう』、数年前に蔵前に出来た『Readin’ Writin’ BOOK STORE』などなど、これらの店では一般書籍同様にミニコミも大きく取り扱っている。ちょうど雑誌がつまらなくなった2010年以降、私はそういった店でミニコミを購入し続けてきた。

 九龍ジョー氏が主催のサブカルチャー誌「Didion」、既にB級グルメ評論家になった感のある刈部山本氏の「デウスエクスマキな食堂」、飲食関連エッセイが白眉な木村衣有子氏の「のんべえ春秋」友田とん氏の「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」など、従来の雑誌ではまったく味わえないテイストをこれらのミニコミで堪能してきた。私が感銘を受けた同じ感情を皆様と共有できればと思い、ペンを取った次第である。

 さて今回ご紹介するのは家からほど近い『Readin’ Writin’ BOOK STORE』で見つけた雑誌「月刊ドライブイン Vol.3」。この中のエッセイ”1966年のピザハウス”の中で、かつて渋谷にあった『レストラン・ジロー』の文字と南佳孝のレコード・ジャケットにも使われたE,ホッパーの「ナイトホークス」の挿絵で即購入を決めた。この『ジロー』は、「月刊てりとりぃ」にかつて私が連載していた岩崎トヨコさんの評伝「ライク・ア・ローリング・ロック」にて、彼女の初の個展が開かれた場所と記したことがある。その『ジロー』が、1968年に等々力にドライブインを初めてオープンし、その先駆的存在だったということを今回初めて知った。当時トレンドであったドライブインがアメリカ文化の大衆化により、昭和の遺物になってしまう過程をつぶさに描いた好エッセイだ。併せて掲載されている平塚のドライブイン『ペッパーズ』も興味深い。アメリカンな外観だが、メニューがカレーオンリーという独自展開。しかし、その和洋折衷具合にお客は懐かしさを覚え、リピーターも生まれているということらしい。

 実はこの雑誌よく見たら2017年6月20日発売。なんと5年前の雑誌で、調べたところ、既に2019年のVol.12号で廃刊になっていた。恥ずかしながら、たまたま残っていたバックナンバーをゲットしたという事だが、結果としてはまずまずの良き出会いであった。

◎「月刊てりとりぃ」復刊1号(令和4年7月30日)より転載。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?