暴力団について

 福岡県の工藤会の野村悟総裁への死刑判決、神戸山口組に属していた山健組の山口組復帰などヤクザにかかわるニュースが多く散見される。

 私の大学生時代、ちょうど2年生のころに京都産業大学に警察政策などを調査・研究する京都産業大学社会安全学研究所が開設され、元警察官僚などが教授として招聘され、当時、私が所属していたゼミナールが社会安全・警察学ゼミで、そこから私の政治への研究、社会の研究が始まった。

 近年の暴力団ニュースに触れて、少しばかり、暴力団とは何かについてなんとなく書いておこうと思う。

 日本の暴力団には非常にわかりやすい特徴がある。それは公然性と会社的組織であること。例えば、インターネットで「山口組 本部」と検索すればすぐに神戸市の篠原台にある豪邸を見ることができ、時に、暴力団が警察署において解散届を出し、暴力団の組織図とともに役職と氏名を簡単に調べることができる。また、指定暴力団となると団体名・代表者・本部所在地などが官報に載り、指定を受けるにあたっては関係者からの聴取の機会を得ることができる。

 海外のいわゆる「マフィア」との大きな違いはこの点にあると考える。メキシコのマフィアなどギャング集団はトップですらおぼろげだ。組織ごとの構成員どころか組織図もわからない。だからこそ、潜入捜査が役に立ち使用される。日本においては潜入捜査などしなくても、暴力団側が情報を開示している。本部や組事務所の場所がわかっていて、代表するものがわかっているだけで大きく違う。

 マフィアにおいて非合法的な収入策(麻薬、密輸、密売、みかじめ料・・・)に従事する者がいて、兄弟分の契りや「家族的」構成など日本の暴力団との類似点は多くある。

 だが、マフィアは本当にいわゆる個人事業主の集合体で、各々が非合法的収入源に基づき稼ぎ、会社が下請けに出すように俗にいうチンピラに危ない仕事させる。ここで日本の暴力団との似ているようで似ていない点が現れる。

 暴力団も非合法的収入を得る個人事業主の集合体という面があるものの、マフィアとの違いは家族的要素の強さよりも会社的要素の強さである。暴力団の一次組織はたしかに、事業主の集合体だろう。だが、三次団体、四次団体となっていくとこれはもう、普通の会社であるし、一次組織は財閥の上層部であり、財閥本体から構成企業に社長を送り、構成企業からは本体に社員を出向させる。末端の四次団体になると中小企業の社長と社員の関係に近いだろう。自らが事業を営み収入を上げるというよりも会社名を背負って営業活動しているに近いものがある。

 マフィアが事業主の集合体として各々がプロに業務委託するがために、社会的には姿が見えず、見える姿は失敗した業務委託先の姿のみであるため非常に金になるのだ。そして、自らに官憲の手が伸びないように、切り捨てる策も持っている。その点、暴力団は公然と姿を見せて、ある意味堂々としている。堂々としているがゆえに非情になれない。刑務所に行くのに箔がつく文化もこの点の違いがあるのだろう。

 今後、暴力団はどうあるべきか。私は現行の法制度を少し緩めて生かさず殺さずが一番管理はしやすかろうと考える。

 近年では半グレ集団という言葉もできたが、これはマフィアによる業務委託と近いものを感じる。暴力団による業務委託先としての半グレ集団だ。そして行き着く先は暴力団も非合法活動に関して半グレ集団に業務を委託することで公然性が薄くなっていくことを懸念している。

 暴力団が関わればすべて禁止とした場合、暴力団でなければ良いとなっていく。非合法的活動が発見された場合、これまでは暴力団は会社名を背負って活動するわけで、証拠はいくらでも集められただろう。多少いたちごっこでも、やりすぎたラインをオーバーしたところで警察の介入が入り止めることができただろう。

 これが暴力団と関わっただけでアウトとなれば、会社名を背負う上で必要な書類や名刺がない、これだけで誰がやったかという証拠が見えにくくなる。やりすぎたラインをオーバーしていることがわかり、事務所に聴取に出ても、真実が見えなくなる。また、メディアも暴力団と関わることで社会的に、合法的な世界から排除されかねないとなると、これこそマフィアに近くなっていくであろうし、ひいては今後、警察による対策も難しくなっていくだろうと考える。

 暴力団が暴力団である理由は公然性だ。公然と非合法活動をしている、これが良くも悪くも重要なのだ。現行の法制上では、公然とやるな、とシフトを促しているようにみえる。これによって見えなくなったら、警察の綱も切れてしまうだろう。綱から外れた猛獣は最悪だ。悪いことをして生計を立てることはよくないが、そうしないと生きていけないというのであれば警察に見えるようにやらせたほうがはるかにましであろうと思うのだ。


(続く)

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