週末レビュー1月5日: NYと東京、 NYと神戸、 卒業論文「国際的に短期間でスケールする日本食ビジネスのビジネスモデルと商材の成功条件」

今週は、ニューヨークから日本に一時帰国したので、その環境の違いの中から感じたことを書きたいと思う。また、年末年始は、「海外展開に適した日本食とそのビジネスモデル」という題で修士論文を書き終えたので、それについての話。

ニューヨークと東京、ニューヨークと神戸

12月30日に日本に半年ぶりに帰国をして本当に驚いた。今まで、カナダ、ブラジル、韓国に長期間住んでいたので、海外から帰国することは今までなんどもあったこと。ただ、今回は特別日本って幸せな国だなと感じた。この一週間は東京と神戸両方に数日ずつ滞在した。まず、汚くて苦手だった渋谷が本当に綺麗な街に感じられた。神戸に至っては、本当に自分がここで育ったのかというくらい自分に馴染みのないようなものに感じた。ここまで綺麗で便利で余裕のある街で数日いると、逆に不安になってくる。

それはもしかするとニューヨークが今まで住んだどんな環境よりも過酷だからなのかもしれない。ニューヨークの街は本当に汚い。人も親切とかいう人もいるけれど、自分が今まで住んだどんな街よりも、人に余裕がない。デフォルトで半分切れている。余裕があるのはお金を持っている人だけで、そうではない人は毎日しのぎを削って生きているという感じだ。お金を持っている人は親切にしてもらえる権利を得るが、そうでない人は相手にされない。悪い風に言えば冷たい。良い風に言えば、人間的で正直な街だ。

この住みやすさや便利さの違いに身を置くと、日本にずっと居座りたくなる。ただ、すぐにその気持ちは消えて行って、このままだと自分が成長しないんじゃないかという不安にかられる。おそらく自分が不安を感じている原因はそこにあるのかもしれない。

修士論文「国際的に短期間でスケールする日本食ビジネスのビジネスモデルと商材の成功条件」

約1年の時間をかけて表題の修士論文を書いた。論文の内容は表題の通りスターバックスやマクドナルドのように世界に通用する日本食とその販売手法を発見すること。NYを検証の場として、串カツ、海鮮丼、緑茶・抹茶のテスト販売を行なった。以下に論文の要旨を貼り付けたので、興味があれば、読んでみてください:

目的:国際展開に適している(小さな資本で海外における利益拡大が早く実現する)日本食レストランの商材とビジネスモデルの条件を発見することが本研究の目的である。

問題意識(何故それを解決したいか):近年日本食は世界的に注目を集めており、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録された。海外における日本食レストラン数は2017年時点で11.7万店鋪と10年間で5倍に増加している。そんな中、最も多く海外店舗を構えている日本企業は吉野家の938店鋪(2019年時点)であり、欧米企業などと比較して国際的に成功したと言える企業はないに等しい。本論文では、スターバックスのように世界で大きく成功するためには(2019年時点南北アメリカを除く海外店鋪11,852店鋪)どのような条件下で商材とビジネスモデルを展開する必要があるか提言したい。

研究方法 : 仮説検証型および仮説発見型の手法を取り入れる。検証では、場所をニューヨークとする。ニューヨークを検証の場とした理由は、世界で最も多様な文化背景を持ち、競争も激しい都市の1つである為、そこで得られた知見の再現性/汎用性が高いと考えたからである。検証の手順として、まず、収益性、スケール性、海外市場との親和性の3つの基準を設け、複数の日本食材の中から候補食材の洗い出しを行なった。次にニューヨークの屋台や路面店において候補食材のテスト販売を行なった。テスト販売から得られた顧客のデータ、売上データなどの結果から、改めて、収益性、スケール性、海外市場との親和性の評価を行い、結論を出した。

分析・検討・結果:収益性、スケール性、海外市場との親和性という評価基準で複数の日本食を比較した結果、緑茶・抹茶、海鮮丼、串カツの3点が最も高い評価となった。候補商材を選定後、テスト販売は2つのフェーズに分けて行った。まず、3つの食材を全米最大規模の野外屋台マーケットであるSmorgasburgと全米最大のナイトマーケットである、Queens Night Marketに出店し、テスト販売を行なった。次に、その販売実績から、結果が良かった緑茶・抹茶、海鮮丼の2つの商材をManhattanのEast Villageにある日本食店を貸し切り、テスト販売を行った。

結論・結果の解釈: テストの結果から、収益性、スケール性、海外市場との親和性という評価基準上、緑茶・抹茶が最も国際展開に向いている(向いている = 検証を行なった商材の中で、収益性、スケール性、海外市場との親和性の評価において最も優れている)という結論に至った。今回の検証結果の数値から国際展開に「適している」という断定は難しい部分があるものの、以下の課題を解決することがその可能性を大きく飛躍させることになる事がわかった:

a) ストーリーの伝達

緑茶・抹茶の健康効用を伝える事と緑茶と禅、メディテーションとの歴史的な関わりなどを伝える事で売上が上がった。この事からストーリーの伝達の質と量を改善する事が収益性を引き上げる1つの鍵である事がわかった。

b) 内的参照価格の把握

緑茶はニューヨークの市場において、高級な商材として認知されており、顧客から、価格が安いことを直接指摘されたことから当初考えていた内的参照価格が低い事がわかった。価格を少しずつ変えながら最終的には約2倍にまで価格を引き上げたが、販売個数に影響がなかった事から、収益性の高さを改めて確認できた。

c) ターゲットが存在するロケーションの選択

テストを通して、購入した消費者は健康意識が高い20〜30代の女性である事が確認できた。よって、同ターゲット顧客が頻繁に訪れる場所に店舗を構える事が重要である事が収益性を引き上げるもう1つの鍵である事がわかった。



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