NORDIC COMBINED NEW WAVE #1 【木村幸大】
2024年春、スキー・ノルディックコンバインド競技で更なる高みを目指す選手達は、それぞれの新天地へと進みました。今回は新社会人として2024-2025シーズンに挑む選手へインタビューを実施。
まず最初に登場するのは、中学生の頃から世界大会を経験し、常に世代のトップとして活躍してきた木村幸大選手(岐阜日野自動車SC)です。
◾️日本チームの金メダルに憧れて
___コンバインド競技を始めたきっかけは何ですか?
私は男5人兄弟の末っ子で、兄弟全員がスキーをするスキー一家でした。
2番目の兄(大志)と4番目の兄(吉大)が先にスキージャンプをしていた影響もあり、兄達の背中を追いかけるようにして、地元の鹿角ジャンプスポーツ少年団に入団したのが小学3年生の時です。
2009年に開催された世界選手権のコンバインド団体で、日本チームが金メダルを獲得したのが、私がスキージャンプを始めた頃で。同じ秋田県出身の小林範仁さんが、強豪国を相手にトップでゴールする瞬間をテレビで見たときに、「自分もコンバインドで活躍したい」と思ったのが、今も記憶に残っています。
◾️最高に楽しかったあの舞台で戦い続けたい
___中学3年生の頃から世界ジュニア選手権に出場し、コンチネンタルカップ、ワールドカップなど多くの国際舞台を経験してきたと思いますが、今までで一番印象に残っている試合は?
大学2年生の時に出場したOslo(オスロ)でのワールドカップで自己最高の13位に入った試合が一番印象に残っています。
前半のジャンプで良い位置につけることができて、前半11位でスタートすることができました。レースの途中まで5位集団で走ってたんですけど、上位集団で走るのは初めてで。イエロービブのLamparter(AUT)や、レッドビブのHerola(FIN)、渡部暁斗さんもその集団にいて。今まで沢山の試合に出場してきましたが、「あぁ、コンバインドってこんなに楽しんだ」と心から思えて、今までで一番楽しめた試合でした。
その年は北京五輪が行われたシーズンで、残念ながら私は代表メンバーには入れなくて。オリンピック後に調子が上がってきたのが悔しいところでしたが、ずっとこの舞台で戦い続けたいと思いましたね。
◾️自分たちの世代でノルディックコンバインドを盛り上げる
___中央大学を卒業して、岐阜日野自動車SCに所属。社会人になってみての感想は?
社会人になり、競技に集中できる環境をいただいているので、学生の頃と比べて時間が増えました。トレーニング量も格段に増えましたし、競技について考える時間も多くなりました。
岐阜日野自動車SCはオリンピックのメダリストも輩出してきたスキー部の名門ですし、会社や岐阜県からのサポートも手厚く、充実した日々を過ごせています。だからこそ、これまで以上に結果として期待に応えたいですし、会社の看板を背負って世界で活躍したいという思いがあります。
___ちなみに、初任給の使い道は?
覚えてないです。笑
一人暮らしをしているので、何も考えずに使った気が…
初任給ではないですが、BCクロカンの用具が今一番欲しいものなので、シーズンが終わったら一式揃えて、山スキーを思いっきり楽しみたいですね!
___社会人として競技を継続する選手が他の世代と比べて多いと思いますが、同期の存在はどう感じていますか?
私たちの世代はスペシャルジャンプの選手も含めて多い年だなと思います。ジャンプの同級生では二階堂蓮(日本ビール)や、竹花大松(土屋ホーム)などもいますし、同期が多いことは嬉しいし心強いですね。
中学校の頃から切磋琢磨してきた私たちが社会人選手として活躍する姿を見て、競技を続けるか迷っている下の世代も続いて欲しいなと思います。私たちの世代でスキー界を盛り上げていきたいです。
___畔上祥吾選手は大学の同期であり、社会人でもチームメイトとなりました。どんな存在ですか?
祥吾とは大学の頃から一緒に切磋琢磨してきて、世界を目指すチームメイトが隣にいることは大きいです。一緒にトレーニングできるところは一緒にやって、別々の時はそれぞれで行うなど、良い距離感の中でやれているなと思います。
今シーズンは祥吾がワールドカップの開幕戦メンバーに選ばれて、私はコンチネンタルカップからのスタートだったので、悔しい部分もありましたし、負けてられないなという思いはあります。
◾️海外勢に引けをとらない走力が持ち味
___自分の強みだと思うところは?
クロスカントリーの走力が自分の強みです。後半のクロスカントリーで追い上げるのが自分のスタイルだと思っています。
昨シーズンのOberstdorf(オーベストドルフ)のワールドカップでは、クロスカントリーのラップタイムが9位と、初めてトップテンで走ることが出来ましたし、日本のコンバインド選手の中でも一番という自信はあります。だからこそ、課題であるジャンプを克服していきたいです。
___今季の開幕戦を振り返って
今シーズンはフィンランドのRuka(ルカ)で行われたコンチネンタルカップが開幕戦となりました。Rukaのジャンプ台は、自分でも苦手としている台で。ジャンプの出遅れが大きく響きました。クロスカントリーでは気温がとても低くなるタフなコンディションで、今ひとつ力を出しきれなかったかなと思います。最低でも6位入賞を狙っていたので、シーズンのスタートで悔しい結果になりましたね。
今回の遠征は事前合宿も含めて、初めて選手だけで回ったんですけど、移動や宿泊の手配、ジャンプ台の予約など全部自分達で行いました。海外で運転することも初めてでしたし、日頃からコーチ・スタッフの方々にどれだけ支えてもらっていたかありがたみを感じるとともに、選手としても良い経験になりましたね。
◾️オリンピックでのメダル獲得を目指して
___2024-2025シーズンの目標について
今シーズンは世界選手権があるので、そこに出場することが一番の目標です。ワールドカップでも安定してポイントを獲得して、来シーズンに迫るオリンピックに向けて、弾みのつくシーズンにしていきたいと思います。最低でもワールドカップの総合ランキングで55位以内に入りたいです。
___競技者としての最終目標は
オリンピックでメダルを獲得することが自分の最終目標です。
絶対にメダルを取るという気持ちで、練習に取り組んでいきます。
◆ 木村 幸大(きむら こうだい)
2001年6月生まれ。秋田県鹿角市出身。
中央大学法学部卒。岐阜日野自動車SC所属。
小学3年生から兄の影響で複合を始める。
花輪高校2年時にW杯初出場。
2020年世界ジュニア選手権では混合団体種目で銅メダルを獲得。
2021年世界選手権代表。2022年にオスロで行われたW杯で自己最高の13位を記録。
趣味は山スキー。チームメイトからの愛称は「全力少年」。
Instagram:@kimurakodai66
所属先Facebook:岐阜日野自動車スキークラブ
写真:本人提供