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手軽にマウントを取るための経営分析入門②~明光義塾のROE編~

※これは、2020年9月27日にアップロードした絶望の明光義塾~ROEの謎~をnoteに転記したやつです。少し文章変えましたが、ほぼ一緒です。

はじめに

どうも、最近会計クイズ作りにハマっています、ちゅーそんです。
会計クイズなんですけど、今回紹介するクイズ合わせてトータルで8つ完成しちゃいました。嬉しいです。
ただ、いつもは

①なんとなくその会社のビジネスモデルを知っている
②簿記の知識が多少ある

の2つさえあれば絶対に解ける問題を作っています。
しかし今回は、「こりゃ難しいなぁ」という会計クイズが出来てしまったので、ご紹介です。
てなわけで、今回は個別指導を展開している3社、東京個別指導学院と明光ネットワークジャパンとスプリックスの会計クイズを出題したいと思います!!

今回も例によって死ぬほど文章量が多いので、はじめに注意事項を!

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はじめに
①スライドだけ見れば中身は追えるようになってます。
 文章を読むのはかったるいので。じゃあスライドだけで良いよ!って方はこっちを御覧ください。

②ROEのデュポン分解について知っている人の方が面白いと思います。
 知らなくても内容は分かりますけど、一応。。

③これを読んでもモテません。
 あくまで一般論ですが、脳みそは2割が頭部、8割が陰茎に詰まっていると言われています。しかしいくらROEの謎を解明したところでモテやしません。陰茎で物事を考えがちな自分にとっては辛いですね。モテたいです。

ではさっそく会計クイズにいきましょう!

会計クイズ~ROEの謎~

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※新型コロナウイルスの影響によるイレギュラーな数値を避けるため、明光とスプリックスは最新の本決算ではありません。(明光は2019年8月期、スプリックスは2019年9月期、東京個別指導学院は2020年2月期)
※明光ネットワークジャパンは連結にすると明光義塾ブランド以外の事業が混ざってくるため、連結ではなく個別財務諸表の数値を使っています。
※スプリックスは自立学習型学習塾のRED等も展開していますが、これらは単一の会社によって行われており、またセグメント別の情報が十分に載っていません。しかし決算説明資料から森塾が売上の多くを占めると推定されるため、一旦スプリックス = 森塾として話を進めます。

 

さて!分かったでしょうか!

今回は理由の説明が圧倒的に長いので、回答を先に言っちゃいますよ!!

 

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正解はこちら!!

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正解できましたか?

ちなみにこれ、根拠を持って答えられた人は普通にすごいと思います。だって普通投資でもしてない限り個別指導塾の財務諸表なんか知らないもん。
さて、ここからはこのROEの「差」について徹底的に調べていきます!
この「差」を見た時、おそらく思う「謎」は3つあるでしょう。

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 同じ個別指導の学習塾なのに、

①スプリックスと明光義塾は回転率が低く
②東京個別指導学院は回転率が高く(約2倍!)
③スプリックスの純利益率が異常に高い(約2倍!)。

 これら3つの謎を解明していくぞ~!!
(ここからはちゃめちゃに長い文章が続きますが、どうかお付き合いください。。。) 

ROEの謎①スプリックスと明光義塾の回転率の低さ

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さて、総資産回転率の謎を解くにはまず「総資産回転率とはなんぞや」ってのを知っていなければならないので、まずその確認から。

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 とにかく、分母が総資産で分子が売上高なんだなぁということが分かれば、自ずと総資産回転率の差異が生まれる理由について分かってきます。

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考えうる理由は、①売上が少ない か ②総資産が多い かです。
ということは、またやるべきことが分かってきますね。
総資産回転率はあくまで「率」。
なので、売上高と総資産の額を具体的に比べていきます。

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 (単位:百万円)

東京個別指導学院の総資産がめっちゃ少ない
明光とスプリックスの総資産がめっちゃ多い
なら総資産を分析する必要性が出てきますが、そういうわけでもなさそうですね。明光はやたらと多いですが、今回は取り上げません。BSって分かりにくくてダルいので。
とにかく!インパクトが強くて分かりやすい要因から調べていきましょう!!

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東京個別指導学院の売上高は、他2社と比べて2倍もあります。
てなわけで、今回は売上高の差異について詳しく調べてみます!

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さて、ここでたかしくんは困ってしまいますね。

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「売上高を分析って言われても、具体的にどうすればいいの?」

なぜなら、たかしくんは普段陰茎の方の脳みそを用いているため、こういった真面目なことを言われると訳が分からなくなってしまうからです。

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「何から手をつければ良いのか分からん」
そんな時は、一旦小さい要素に分解するのが良いですね。
というわけで、売上高の中身を分解していきます。

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明光義塾は元々FC(フランチャイズ)で全国に教室を展開して大きくなっていった塾です。
そのためFC教室が多く、教室数の割合で言うと教室の8割がFCという驚異的なFC比率を誇ります。
一方東京個別指導学院は全教室直営かつ都心に集中出店するという、明光とは真逆の戦略を取っています。
森塾は「森塾ブランド」は直営中心、「REDブランド」はFC中心という方針を取っており、両者の中間のような出店戦略ですね。(ちなみに森塾は、フランチャイジーであった湘南ゼミナールを買収したため、今は実質全教室直営です)
さて、中身が分かったところで、分析するならまずは分かりやすくてインパクトの大きそうなところから分析したいですねぇ。

てなわけで、どの学習塾でも一番の売上がある(当たり前か)教室の売上高を分析していきましょう。

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「教室売上高」と1口に言ってもこれまた抽象的なので、もうちょい具体的に。

基本的に小売業だろうがなんだろうが、「売上 = 数 × 単価」なことが多いですよね。
個別指導塾もこれに当てはめると、
「売上 = 生徒数 × 単価(1人あたりの売上高)」で分析出来そうですね。
FC教室の場合はロイヤリティの分だけが会社の売上となりますが、パーセンテージは決まっているため、どのみち生徒数と1人あたりの売上高を比較すればイイ感じにはなりそうです。多分。

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「分解」が続いてちょっと訳分からんくなってきているので、ここで一旦復習しましょう!

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流れを再確認したところで、早速まずは1人あたりの売上高からやっていきましょう。
1人あたりの売上高、つまり1人の生徒から回収するお金は2つの種類に分かれます。

授業料か、授業料以外か」です。
「本業か、本業以外か」や「俺か、俺以外か」とも言い換えられます。

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そして、授業料、授業料以外ともに定期的なものか一時的なものかに分かれます。

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具体例がこちら。

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授業料の定期収入は、いわゆる「月謝」になります。
授業料の一時収入は、夏期講習やテスト前対策などの費用になります。
授業料以外の定期収入は、施設費などの諸経費です。
授業料以外の一時収入は、入塾費などですね。
教材費を分離していなければ、教材費も「授業料以外の一時収入」ってとこですかね。


例によって、これも分かりやすくインパクトのありそうなところから分析していきたいです。

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まず、おそらくですが、施設費などは大して変わらないイメージがあります。
就活のケース面接か何かで「売上を上げる施策を考えろ」と言われてもここに手を付けることは無いでしょう。。。
「低い授業料だと思って入ったのに授業料以外が高い」とかあったら不満の原因にもなりそうですし。

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次は授業料の一時収入ですが、これは普段の授業料に比例してそうです。
個別指導塾でアルバイトした経験のある方なら分かると思いますが、個別指導塾の特性上、夏期講習とは言えテキスト変えてコマ数増やすだけみたいなもんが多いですし、、、

なので、会社ごとの比較をする際には一旦除外して考えましょう。

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じゃあ普段の授業料を比較しましょう!って感じです。

取っている授業のコマ数も関係してるよねとか言い始めるとキリが無いので、とりあえず簡単に比較できそうな「一月の授業料」を比較してみたいと思います。
何でも良いから何らかの基準で一律に比べりゃ良いんです。
とりあえず通塾率が一番高い中学生で、かつ受験を控えているから通う人も多いであろう中3生が週1で通った場合の授業料を比較してみます。

しかし、公式サイトに情報が載っているのは明光義塾だけなので、このサイトから2社の料金を引っ張ってきました。(まぁ完全一致はしなくてもおおよその値段は変わらないはずなので。。。)

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キレーーーーいに差が出ましたね、良かった良かった。
1.5倍も差があれば、これは授業料の差がそのまま売上高の差に影響してそうな気がしますね。

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てなわけで、次は生徒数の分析…

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…ん?

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この声は…!坂上忍!!

 

さすがはワイドショーのMC、「生徒1人あたりの単価を比較するためには、生徒の学年も調べる必要がある」。なかなか良い指摘をしてきます。(ちなみに画像は勝手に使っているので、文句言われたら何も言い返せません。)

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なるほど。売上高の高い東京個別指導学院は高校生中心、それ以外は小中学生中心というわけですね。

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 そうですね。ある程度の傾向は分かりそうです。

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ありがとうございます!!助かります!!

 集計方法は、
塾ナビにアクセスする
②なるべく地域性による差を排除するために、「足立区の教室」のみの口コミに絞る
③「通塾時の学年」を集計していく
って感じらしいです。

 僕はワイドショーをあまり見ないのであまり分からないのですが、ワイドショーってこういう風に進んでいくんですね。
考えてみれば、ワイドショーは芸能人の不倫や犯罪に積極的に口を挟んでいく仕事。
つまり、「自分は他人を批評、批判出来るくらいにはまっとうな人間」であり、かつ「批評、批判を公共の電波に流しても問題無いくらいには裏取りを取っている」ことが日常的になっているのでしょう。
なるべく憶測でモノを言わない姿勢、自分はまっとうな人間であると思いこむ自己肯定力、僕も見習いたいものです。

さて、先程の結果がこちらになります。

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※学年が書いておらず不明な場合でも、内容から明らかに学年が特定出来る場合(目的が高校受験であるなど)は、自分で学年を特定して集計しています。

ちなみにですが…

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 ※2019年2月期決算説明資料より

東京個別指導学院の公式データと先ほどの口コミサイトの集計結果を照らし合わせてみると、こんな感じです。

・高校生…口コミ47%、公式52.2%
・中学生…口コミ35%、公式36.9%
・小学生…口コミ11%、公式10.9%

こうして見ると、口コミサイトの「通塾時の学年」を比較するというだけでも、ある程度その塾の学年層は把握できるというのが分かりますね。

 

…さて
今までのをまとめると、、、

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でも待ってたかしくん、まだやっていない、忘れていることがあるよ!

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そうだよたかしくん。

東京個別指導学院の生徒数がはちゃめちゃに多い可能性もあるよ!
まぁ単価と学年層がここまで差あると生徒数による差はあまり無さそうだけど、でも調べなきゃダメだよ!

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その通りだよたかしくん。

生徒数を単純比較すると、FCで全国展開している明光義塾が一番生徒多いだろうから、(いくら単価に若干の差があるとはいえ)明光が一番売上高くないとおかしくなるね!

どうしようか!!

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そうだね、FCと直営まとめて「教室売上高」で分析しようとしちゃったせいで実はすごいダルいよ。
だからこんな感じで比較してみました。

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まず、「生徒数は売上に完全に比例する」とします。

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ロイヤリティは売上高の10%となっているため、
「FCの売上×10% = 本部の売上」とします。

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つまり、FCの生徒数(=売上に比例) × 10% = 会社の生徒数(=売上に比例)
ということです。
こういう回りくどいやり方をするのは、後々のまとめの時に分かりやすくするためですが、結果として分かりづらかったらすみません。

てなわけで、生徒数比較をします。

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※スプリックスが湘南ゼミナールを買収する前の2019年9月期までは森塾FCの生徒数が公表されていなかったため、この生徒数の数字のみ2020年9月期のものを使用しています。

さっきの式で調整します。

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これで「ずば抜けて東京個別指導学院の生徒数が多い」となれば生徒数による影響が大きそうですが、これを見る限りそうでもなさそうですね。。。

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やはり、売上高の差異の原因の多くは、授業料の差異にありそうです。
というわけで、ここまでの教室売上高の分析のまとめです。

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(さっき訳の分からない計算をしたのはこのスライドを作るためです…)
(単価が明光>スプリックスになっているのは、授業料の差異は大きくないけど明光義塾は高校生が多いからです…)

結論!

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 たかしくん、よく出来ましたね。

つかれましたか。

でも

まだ

なぞは

ふたつ

のこってるよ

ROEの謎②なぜ東京個別指導学院は総資産回転率が高いのか

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便宜上「なぜ東京個別指導学院は総資産回転率が高いのか」を「謎」にしましたが、まぁここまで読めば一発で分かりますね。

そうです。

授業料と学年層が高い、つまり結局平均して1人あたりの単価が高いのが理由です。

さて、単価が高いのが理由ってのは分かりましたが、そこで疑問が出てきちゃいますね。
「何で東京個別指導学院は単価が高いの?」
ということです。

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「同じ業態のはずなのに単価が高いなぁ~」って疑問は、大きく2つの疑問に分けられます。

「なぜ会社は値段を高く設定するか」
「なぜ顧客は高い値段でも買うのか」

今回はこの2つの疑問に分けて考えていきたいと思います。

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そして、「なぜ会社は値段を高くするのか」については出店戦略
「なぜ顧客は高い値段でも買うのか」については広告戦略
がそれぞれ肝になっているのでは?と思われます。

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 というわけで、まず出店戦略について。
東京個別指導学院の出店戦略については皆さんご存知でしょうか!

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ドミナント戦略です。

東京個別指導学院はこの「ドミナント戦略」をずっと明確に戦略として示しています。

じゃあこの東京個別指導学院が掲げる「ドミナント戦略」とは何ぞやって話になりますね。

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ドミナント戦略とは、とにかく集中的に出店しようやという戦略のことです。そんで、下の画像は2018年2月期の決算説明資料から抜き出したものです。

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これを見ると「毎年8教室を目安に新規ドミナント出店」とあり、明確にドミナント戦略を打ち出していることが分かります。

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「わざわざ集中的に出店したら、同じ教室同士で顧客を食い合っちゃうから意味なくない?」と思ったたかしくん。

「メリットはなんだろうか」と考えます。

でもたかしくん。

きみは入院中ろくに勉強もせずにこればっかり書いてるよね。
「法学部の大学生なのに、こんなことやってても意味なくない?」
「君を生かしておくメリットは何?」
「こんなことやっても将来何の役にも立たないよね?」
こんなこと言われたら悲しいでしょう。
あんまり意味無いとか言うのはやめましょう。楽しければそれで良いのです。

ドミナント戦略のメリットは色々ありますが、東京個別指導学院が意識しているであろうメリットは3つあります。

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まず1つ目、「広告効率上昇」について。

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広告効率の上昇、つまり、1地域に集中的に広告を打てばそれで済むということです。全国規模のCMや全国規模のチラシは必要ありません。

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例えば、(これはドミナント戦略は少し違いますが)北海道にのみ展開しているセイコーマート。このコンビニは北海道にのみ展開しているコンビニなので、わざわざ東京で知られる必要性がありません。北海道でのブランド認知にのみ力を注げば良いわけです。

これと同様に東京個別指導学院も、東京など都心部のみで広告を展開すればブランドの認知としては成功します。この記事ではTVCMからWeb広告に切り替えたという内容が書いてありますが、とにかく徹底的に広告費の効率を良くする方針なのは決算説明資料からも明らかです。

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2つ目のドミナント戦略のメリットは「口コミ効果」です。

さっきの広告と話はかぶりますが、こちらは教育業界ならではの事情が絡んできます。

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学習塾というのは「口コミが命」

もっと言えば、「口コミと行きやすさ命」だからです。 

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次に示すグラフは、このnoteから引っ張ってきた、

「塾・予備校検討の参考にした情報」「塾・予備校を選んだ決め手」になります。

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こうして見ると、いかに「口コミ」が重要なのかが分かると思います。

つまり、「1地域内でのブランドを確立させる」というのが塾・予備校ではまず取り組むべき課題であって、そのためのドミナント戦略なのではないかというわけです。

あと、よく見てみると(実際に行く先を決める)親が参考にした情報はチラシやDMよりもインターネットが上回っており、東京個別指導学院が完全にWeb広告に振り切るメリットがここからも読み取れます。

塾・予備校業界においていかに口コミが重要かというのが分かったところで最後、採用効率の話です。

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自分で書いといてアレなんですけど、これは正直自分がよく分かってません。(ドミナント戦略の狙いとして明確に採用効率を掲げているので、何らかのメリットがあるのは確実なんですが。。。)

多分、人手不足との時に他教室から人員を回してもらいやすいってことかなと。。。まぁ分からんところはサラッといきましょう。

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長々とドミナント戦略のメリットについて語ってしまいましたが、当然デメリットもあるわけです。

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それが今回の値段につながってくる話。

それはずばり、家賃です。

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そういうことです。

関西や関東の都心部に出店しまくる、特に東京個別指導学院は駅チカが多い傾向にありますから、家賃が高くなるわけですね。

実際に、売上原価の内、どれだけ家賃が割合を占めているのかをグラフにしました。

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他2社とくらべて2倍もあります。

東京個別指導学院は売上も2倍、つまり分母の数も大きい中でパーセンテージも2倍なのですから、いかに家賃のインパクトがデカイかが分かると思います。

まとめます。

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さて、出店戦略のお話が終わったので、次は広告戦略についてです。

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まぁ本当に品質に満足しているから顧客も高い金を払いますし立地も少なからず影響はあると思うんですが、よりビジュアルで分かりやすい差は広告なので、広告戦略に着目しようと思います。

他2社に比べた東京個別指導学院の特徴は2つ。

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1つ1つ見ていきます。


まずはメッセージについて。
発している「メッセージ」に注目してそれぞれの広告を見てみます。

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…なんかもう雰囲気からして全然違いますね。

まとめるとこんな感じになると思います。

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明光義塾は、YDK(やれば出来る子)やサボロー(サボろうと誘ってくる黒いアレ)が印象的ですが、つまり「サボっちゃうようなお子さんでもやれば出来ますよ~」という、補習塾である点を打ち出しています。

森塾もやり方は違いますが、「先生1人に生徒2人までですよ~」「成績上がらなかったら返金しますよ~」など、こちらも補習塾である点を打ち出しています。

一方、東京個別指導学院のみ、「講師力」を全面に打ち出しています。
また、カラーリングも青で落ち着いており、「質で個別指導塾を選ぶならここだよね!」というメッセージを発しています。

「補習塾」vs.「講師の質が高い塾」なら後者の方が高いお金を出すのに抵抗は無さそうです。 

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さて、次は起用モデルについてです。

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今度はさっきよりも起用モデルの年齢層が分かりやすい広告にしてみました。

明光義塾はCMや広告で基本的に「キャラクター」を出してきやがるので、公式HPにある「生徒の声」を拾ってみました。

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東京個別指導学院はどの広告見ても大体高校生が主役です。
森塾は高校生っぽい人は本当にあまり出てこないですね。

明光義塾は広告でもHPのトップページでも明確に生徒の年齢層を示すことは無いように見えました。
ただ、「生徒の声」に「出来ないことが出来るようになった(つまり元々レベルが高い層をさらに引き上げたわけでは無い)中学生」しか採用していないところを見る限り、チラシとかも(ちょっと出来の悪めな)中学生をメインターゲットにして作っているんだろうと思います。

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まとめると、そもそも広告でターゲットとしている学年層が違うということが分かりました。

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復習なので文章は省きます。

てなわけで謎3つ目!!

ROEの謎③なぜスプリックスは純利益率が高いのか

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ようやく最後の謎に入れました。嬉しいです。

「スプリックスの純利益率が高い」と聞いた時、そこそこ会計知っている人ならこういう意見になると思います。

「森塾って単価低いから利益率低くなりそうじゃない?」

「特別利益とかが出ているだけかもしれないから、営業利益率を比較しよう」

あくまで本業で出した利益かどうかが知りたいですもんね。

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てなわけで、営業利益率を比較してみましょう。

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おっ営業利益率も2倍ありますね。

ってことはつまり、森塾はすごい!森塾バンザイ!

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てなわけで今回のブログは終了…

 

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…ん?

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この声は…!コナンくん!!

 

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確かに、森塾と明光義塾ははFC展開もしてるし(原価率の低いはずの)教材販売もしてるから、売上規模が少ない代わりに利益率が高くなりがちだよね…!
そう言うと思って、バフェットコードから明光義塾(連結)の売上高と収益性の推移のグラフを持ってきたよ!!

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※連結のグラフを引っ張ったのは、めんどくさいからです。個別財務諸表における売上高と収益性の推移はバフェットコードには無く自分で作るしかありません。さすがに10年分の数字ペタペタ貼る根性は僕にはありません。。。

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見ての通り、明光義塾の収益性は年々悪化しているんですね。。。どっちかと言うと「森塾がすごい」というよりも「明光義塾がドンドンヤバくなってる」んです。(もちろん森塾もすごいけどね)

てなわけで、これからは明光義塾の収益性低下の謎について追っていくことにしましょう。

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 何で収益性が悪化したのかっていうのは、決算説明資料を読む限り、

生徒数の減少によって直営、FCともに収益性が悪化したためです。

個別指導塾は損益分岐点が高いから生徒数の減少は収益性悪化に直結しますし、不採算教室を解体したりする費用もかさんで余計に利益率が悪くなります。

つまり、僕たちが考えなければならないのは、「何で明光義塾の生徒数は減少しているのか」って話だと思います。

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そんで、ここからは完全に僕の考えですが、おそらく「明光義塾のビジネスモデル自体が教育業界の現状に合わなくなってきている」のが理由だと思われます。

(スライドを作るのが飽きてきたので、段々と文章中心になります)

スライド99

「そもそも教育業界って今どんな感じなのか」って部分はおそらく皆さん知っての通りなので、詳しくは説明しません。

ざっくりいうと、

①子供は減っているけど、その分1人にかけるお金が多くなっているので市場規模は横ばい。
②集団塾よりも個別指導塾の市場が伸びている
③都心部への人口集中がとまらん!

って感じです。

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では、これら3つの現状と明光義塾のビジネスモデルについて、比較しながら見ていきます。

まず、子供の数が減っている代わりに1人にかけるお金が多くなっているということは、それだけ質が求められるということです。

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「質が高い」というのが何を指すのかは難しいところですけど、とりあえずさっきの広告戦略の時に見た「発しているメッセージ」を復習したいと思います。

スライド104

東京個別指導学院は言うまでもなく「講師力」つまり「講師の質の高さ」がウリ。

「所詮大学生講師がやっているんだから質なんて大きく変わらなくない?」
「なんなら東京個別指導学院ってアルバイト比率高くない?」
「そういえばカタリバってボランティアの頑張り比率高くない?」

という批判をするのはやめにしましょう。あとついでにカタリバ批判をするのもやめましょう。

森塾はなんと言っても「先生1人に生徒2人まで」挙句の果てには「成績が上がらなければ返金」とかいう面倒見の良さ。これに惹かれて自分の姉も森塾に入り、実際にゴリゴリに成績を上げました。

明光義塾は最近になって「MEIKO式コーチング」とかを謳い始めましたが、あそこは基本的に放置プレイが趣味です。僕は明光義塾に一時期通ってました。僕はあーだこーだ言われるのが好きじゃないし、SかMかで言ったら断然Mなので、放置プレイで良かったんですが。。。問題解かされて、採点だけして、あとはいなくなっちゃうっていうのは普通に指導されたい人からしたら嫌だろうなぁというのは想像に難くないです。

つまり、「質の高さ」みたいな観点からすると、明光義塾はかなり弱いわけです。

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2つ目の「集団指導よりも個別指導」についてですが、つまりこれは世の中のニーズが「もっと1人1人に寄り添ってよ~」という考え方にシフトしてきたからでもあります。

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ここについてもさっきの話とかぶりますが、、、
東京個別指導学院は料金プランがそもそも1対1か1対2しかありません。
森塾はコンセプトがもう「先生1人に生徒2人まで」となっています。

一方、明光義塾はそういった「生徒数の縛り」がありません
公式サイトの料金シュミレーションからもこれは明らかです。

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つまりこれは「1人1人に寄り添ってよ~」という現代のニーズからは離れていると言えるのでは無いでしょうか。

スライド102

3つ目。

これは明光義塾のビジネスに大打撃だと思うんですけど、今って前よりも都心部への人口集中が進んでるんですよね。

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東京個別指導学院は前に説明したとおり、ドミナント戦略を明確に掲げて東京や関西地方に突撃しています。
森塾も、ドミナント戦略とは言っていませんが、基本的に関東圏にしか教室がなく、ニーズの高い場所に集中出店していく方針なのは間違いないと思います。
一方、明光義塾だけが(FCの強みではありますけど)全国に拡大しており、これがかなり厳しい理由にはなっているはずです。

個別指導塾というのは損益分岐点売上高が高く、稼働率が非常に重要なキーとなってくるビジネスです。
少子高齢化に加えて地方から人そのものがいなくなってくると、1教室の収益性が悪化するのは目に見えています。

スライド108



てなわけでまとめです。

明光義塾の収益性が悪化した理由はおそらく3つ。
①「質の高さ」につながる明確な強みが無い
②「1人1人見てほしい」というニーズに合っていない
③都心部に人口集中している中、全国規模で塾を展開するのは収益性が厳しい
ということですね。

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長くなっちゃったので、最後に

①会計クイズの答え
②1つ目の謎の答え
③2つ目の謎の答え
④3つ目の謎の答え

のスライドを復習用に載せました、見てください!!

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スライド111

スライド112

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まとめ

今までのまとめです。

明光義塾と東京個別指導学院とスプリックスを比較した際、明確に差があったのは2つです。

①総資産回転率 ②純利益率


①総資産回転率

 東京個別指導学院の単価が他2社と比較して高い→売上が高くなる→総資産回転率も高くなる

 ※東京個別指導学院の単価が高いのは、1,会社視点…ドミナント戦略により都市部に集中出店しており、家賃が高いから 2,顧客視点…「講師の質が高そう&高校生のための塾っぽい」から

②純利益率

 森塾はFC中心なので利益率が高い。同じFCでも、明光義塾は数年前から収益性が悪化しており、利益率が低い。

 ※収益性悪化の原因は、少子高齢化や東京一極集中などによるもの

って感じになります。

最後に


これで会計クイズとその謎解明はおしまいです!
ひとえに「ROEが高い」と言っても、背景には色々あるんだなぁという話でした。
そして、ここまで読んでくれた方、ありがとうございました!!
あと、これを書くために色々友達に聞いちゃったこともありますが、僕からの質問にわざわざ答えてくれた方、本当にありがとうございました!!
そして、強制的に読ませられている俺の友達、すみません!!

 

あとがき


「あとがき」というか「付け足し」というか。。。

本編では商品売上について普通にすっ飛ばしましたけど、明光義塾の商品売上の原価率は6割くらい、スプリックスの商品売上の原価率は3割くらいで、結構な差があります。全体の利益率にどのくらいのインパクトがあるのかは特に計算してないですが、こういうところでも利益率の差につながってそうですね。差がある理由については有報見てみると分かるかもなので、興味ある方は是非。

あと、「やたらと東京個別指導学院を持ち上げるなぁ」と思った方、鋭いですね。実は東京個別指導学院の社長は日本最高峰、日本の中央、中央大学出身なのであります。中央大学こそ日本の中央!要!中央大学バンザイ!

そんでこっからは会計クイズとは関係無い、明光義塾の復活戦略についてです。
一応明光義塾もこの現状について対策を打っています。協業とM&Aです。

今の明光義塾の状況は、SWOT分析で言えば「強み×脅威」なんですかね。今まで強みとしてきた「とにかく生徒数で稼働率稼げやオラァ!」「利益率の高いFC教室を全国に拡大させろやオラァ!」というビジネスモデルが少子高齢化によって立ち行かなくなっている。

同じようにSWOTで明光義塾の復活戦略を見てみると、協業は「強み×機会」M&Aは「弱み×機会」といえるだろうなという話です。

まず、協業についてですが、明光義塾は自立学習型学習塾REDにおいてスプリックスと資本提携を結んでいます。具体的にどういう提携なのかは読んでいないのでよく分かりませんが、FC展開のノウハウがある明光義塾が、地方でもイイ感じに利益出せそうなREDの展開を支援することでなんかイイ感じになるってことだと思います。よく分かんないんですけど、とにかく「FC展開のノウハウ」という「強み」を生かして「IT化で利益率の高い事業を地方でも出来る」という「機会」を掴みに行っているんだと思います。しらんけど。なんならスプリックス以外にも色々なところと提携し始めていてなんかすごい雰囲気があります。

次に、M&Aについてです。明光義塾のビジネスモデルにとって、教育業界の現状はもろ「弱み×機会」と言えると思うんですよね。「質の高い個別指導塾がキテる!」という「機会」を言われても、「いやウチそこ強くないし…」っていう。そういう「弱み×機会」に対してどういう策を取るのがベストかっていうのはこの本『コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法』によると、M&Aまたはアライアンスが有効だそうです。つまり、自社の弱い部分は買っちゃえ!提携しちゃえ!っていう笑

だから、業績が落ち始めたあたりから色々と企業買収している明光義塾は結構戦略としては正しい感じなんだと思います。財務も健全で体力あるし。(個人的には中大出身の社長がいる東京個別指導学院だけが伸びればいいと思ってますけど)頑張れ明光義塾。



社会人になったら今回のブログみたいな「何でこうなってるんだろう」だけではなく「これからどうしていくべきか」に着目して頭を捻らなきゃいけないので大変ですね。こんなんで社会人やってけるんすかね俺。こわ。おしまい。

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