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『ハドソン川の奇跡』

『ハドソン川の奇跡』2016年
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、フランク・マーシャル、ティム・ムーア、アリン・スチュワート
脚本:トッド・コマーニキ
撮影:トム・スターン
編集:ブル・マーリー
音楽:クリスチャン・ジェイコブ、ザ・ティアニー・サットン・バンド
キャスト:トム・ハンクス、アーロン・エッカート
上映時間:96min

あらすじ
エアバス1549便がハドソン川に不時着水した。奇跡的に155人全員が生還し、機長のサリーを世間は英雄扱い。しかし、裏では判断ミスの追及が進む。

後期イーストウッド
2010年代に入ってからのイーストウッドは、実話をベースにして英雄譚を描きながら体制批判に持ち込む手法で特に多くの作品を撮っている。
今年の初頭に公開された『リチャード・ジュエル』は、マスコミの報道によって勘違いを受けてしまう英雄を描いた。
ただあれに関してはかなりマスコミへの嫌味が強くて、中立の立場で描いたほうがいいのではと思ってしまうほどには偏った映画になってしまっていた。
その点、『ハドソン川の奇跡』の奇跡は途中までバチバチ戦いながら、敵を嫌な奴に見せながらも最後は丸く収める様に演出し、観客の心の中に悪者が残らないよう注意深く作られていた。
トム・ハンクスの演技もピカイチだった。
操縦室であくまで冷静にトラブルに対処し、副機長に焦っている姿を見せないよう毅然とした態度にはリアリティがあった。
着陸後も、乗客の生存を第一に気に掛ける必死さが本当の機長にしか見えない。
往年のキャリアを通じて獲得した落ち着きと気怠さのような雰囲気から、キャスティングしたスタッフは大変優秀だと思う。
トム・ハンクス以外にサリー機長を演じられる人は思いつかない。

ちなみに、現役の映画監督で万能なトップ3を挙げろと言われれば、ゴダール、スピルバーグ、イーストウッドだと思う。
彼らは何というか映画を本当に自然体に創り上げてしまう。
もちろんそこには演出や編集があるのだが、その存在を良い意味で感じさせない魔法のような力を持っている。
あと何年彼らの新作が観続けられるのかは分からないが、彼らが創作を続ける限り、フォーローしていきたいと思う。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!