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コロナが生んだおすすめ短編映画

コロナが映画界に与えた影響は言うまでもなく強大だが、それでも映画館はなんとか営業を続けてくれているし、これからも映画は生き続けるのだと信じている。
ただまあもちろん業界にいる方々はお給料皆無の時期もあったことだろうと思うし、その苦労は計り知れない。
SAVE the CINEMA運動が先日ようやく実を結んだようだが、そういった動きが少しでも業界人の救済となることを願ってやまない。

さて、そんな危機の中ではあるが映画人という生き物はいつだってその歩みを止めることはない。
外に出れないとか、役者が集まれないとか、そんな壁をアイデアの力で超越した監督たちはコロナに負けず映画を生み出している。
コロナ映画はアイデア一発芸の域を過ぎないという方もいらっしゃるだろうが、今日はやはり映画監督は偉大なアイデアマンだと感じた二本を紹介しよう。
どちらも4分に満たない短編作品で、YouTubeで公開されているからいつでもどこでも観賞できる。
寝る前の4分間でぜひご覧いただきたい。


・『move/2020』深田晃司監督
こちらはSHINPAが企画した在宅映画作りの内の一本だ。
全ての作業を在宅で行う条件で、若手監督24人がアイデアを絞り出した映画が24本あるわけだが、その中でも光る一本なのだ。
深田監督が撮った映像は、ただ部屋の中でじっとしている女性のみ。
計3カット(クレジット後にもう1カット)の女性のみの映像で、外界にカメラを向けることをしていないのに、強烈に外の世界を感じさせる、ある演出が施されている。
外に出られなかったあの時期に観ていればもっと強烈に感じられたのかもしれない。
ごく単純で基本的な演出ではあるし、考えてみれば誰でも思いつきそうなものでもあるのだが、これが素晴らしい。
演出法を言ってしまえば、もう映画の核心に触れてしまうのでここでは伏せておく。
ぜひご自分の目で(耳で)感じていただきたい。
ちなみにSHINPAの他の23作品も面白いものが揃っている。暇があればそちらも。

『move/2020』はこちらから


・『来訪』ジャ・ジャンクー監督
こちらは言わずとしれた中国の大巨匠ジャ・ジャンクーの短編映画。
彼の作品が無料でYouTubeで観られるだけでも感謝しなければならない。
内容は(おそらく)ウィズコロナの世界で来客を迎えるだけのプロット。
マスクをした男性二人(片方は監督本人)がコロナを前提とした日常の動きをするだけ。
それだけならウィズコロナ時代のサンプルムービーのようだが、最後の2カットが突如異様な重みをもって襲い掛かってくる。
実は最後の2カットは過去のジャ・ジャンクー作品からの引用なのだが、まさに昔の日常が破壊され、新たな日常に馴染まざるを得ない現状を的確に表現している。
どんな2カットを使っているかは、こちらも映画の核心部分なのでぜひその目で確かめていただきたい。
一つ注意なのだが、実は中国語字幕しかない。映像だけ見れば分かるようなシンプルなものなので問題はないのだが一応。

『来訪』はこちらから


映画のプロたちがこうやってコロナ禍でも映画を魅せてくれるのはオタクとして本当に幸せだ。
ペストの流行が『デカメロン』を生んだように、今後もっと大々的にコロナをテーマにした長編映画がいくつも出てくるだろうが、極短い時間でここまで的確に現状を描いた作品がコロナ禍で密かに生まれていたことを忘れないでいただければと思う。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!