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知っておいて損はない映画の基本3.2~ジャンル~

そもそも映画をジャンルに分ける発想はどこからやってきたのかなんて、みなさん考えたことあるだろうか?
映画業界で働く人なら簡単に分かると思うのだけど、やっぱり一番の目的は宣伝を格段にしやすくすること。
宣伝ってのは短時間にどれだけのお客さんに観に行きたいと思わせるかが肝だから、あーだこーだとあらすじを語るよりも、これはこういう映画です!ドン!とアピールしちゃいたいわけなのです。
そこで超便利なのが大体の人間に共通知識として組み込まれているジャンル。

これはあれがこうなってこういう人が出てきてこんな展開になるんですって説明するよりも、これはSFです!これはミステリーです!って分かりやすい方がお客さんとしても劇場に観に行く決心がつきやすい。
なんせ2000円近く払って2時間を過ごすわけだから、よくわかんない状態で映画を観に行く一般客はそういないと思う。(映画オタクは別)
だいたいCMが長ければみんなスキップしちゃうからね。
簡略化のためのジャンルというわけなのだ。

それからもう一つ知っていただきたいのが「ジャンル映画」と対を為して存在する「作家の映画」。
要はジャンルに縛られない、その作家独特のスタイルに統一感がある映画のことで、インディーズで活躍する監督がよく製作する。
昨日紹介したペドロ・コスタ監督なんてのは作家性の極みみたいなタイプ。
もちろん作家性重視の監督でもジャンル映画の枠組みの中で話を作る場合もある。
その映画がジャンル映画なのか作家の映画なのか判別がつかない時は、その映画が時代や国を入れ替えても同じような映画が撮れるかを考えよう。
要はジャンルはテンプレの形でより一般的な形式をしているから、どの時代にもどの国にもはめ込みやすい。

ジャンルの一つ下のグループとして「サブジャンル」という概念もある。
例えばホラー映画の中にはゾンビ映画や吸血鬼映画、幽霊を扱うオカルト映画、あるいはSF映画には宇宙映画やタイムトラベル映画があるように、ジャンルの中でもさらに小分けが可能な分野があり、これをサブジャンルと呼ぶ。
サブジャンルについてもそれなりの共通知識はみんなが持ってるから、宣伝のときはこちらでも十分に効果的だろう。
TSUTAYAとかの並びはジャンルで分けていることが多い。
たぶん分けすぎるとそれはそれで分かりにくいのだろう。

それから最後にもう一つ。
ジャンルは往々にして融合して、新たな境地を生み出す。
歴史的な実例からすると、フィルム・ノワールというジャンルは1950年代以前に全盛期を迎え、以降はほとんど作られなくなったのだが、近年ではフィルム・ノワールに他のジャンルを付け加えることで復活を遂げている。
『ブレードランナー』はSFにフィルム・ノワール的要素を足しているし、『アンダーザシルバーレイク』はオカルトにフィルム・ノワールを足している。
これらは新生のフィルム・ノワールとしてネオ・ノワールと呼ばれることもある。

このようにジャンルひとつとっても映画についていろんなことが語れるし、少し知っているだけで映画の話がしやすくなる。
お気に召されたらぜひ覚えていただきたい。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!