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知っておいて損はない映画の基本1~カメラワーク~

映画と写真が決定的に異なる点は時間的な広がりがあるか否かである。
もちろん空間だけでなく「時間」を感じさせる表現豊かな写真も存在するが、実際的に「時間」を内包するのは映画だけ。

では「時間」とは何か?
「時間」とはつまり変化であり、映画においては「運動」として捉えられる。
登場人物が何かを投げたり、犬が喧嘩したり、車が走り回ったり、つねに映画には時間に伴った変化=運動が起きている。
優れた映画は運動を魅力的に捉えるが、上記はあくまでフレーム内の動きであり、カメラが実際に動くことでも画面に運動を与えることができる。
運動、それこそがカメラワークの本質なのだ。

代表的なカメラワークを簡単にご紹介しよう。

パン:カメラを水平に動かす。人物がゆっくり移す視線を再現するといった使い方。三脚に固定して使うことがほとんど。

ティルト:パンが横方向であるのに対し、上下方向に動かす。こちらも普通三脚に固定して使う。

ハンディショット:手持ちカメラ。ある程度不安定な揺れが生じ、場合によっては荒ぶる映像になる。臨場感が出るため、終始手持ちカメラで撮影している映画もある。視点としては登場人物の目線に代替したショットが多い。近年、わざと揺らすことで手持ちカメラっぽく見せるカメラワークもあるが、是枝監督が意味のない試みだと言っていた。

ステディカム:手持ちではあるが、揺れを抑えスムーズな撮影を可能にする機材を使う。ジンバルと呼ばれる機材もあり、同じようなことができる。比較的小さな機材なので、臨機応変に動くことが可能。一説によると、キューブリックが手作りしたのが最初だとも言われる。ホントかは知らない。

ドリーショット:台車にカメラを乗せる撮影方法。レールを引く場合、前後左右に動けるよう設計する。ハリウッドの超大作でもメイキングを見れば、必死にスタッフが台車を押している姿を目撃できる。大爆発の中、無心で走るスタッフには感心する。ヒッチコックが『めまい』で使った階段のショット、スピルバーグが『ジョーズ』て使った浜辺の署長のショットなど、ドリーズームと呼ばれる不思議な撮影ができる。

クレーンショット:こちらもメイキング映像でよく見るクレーンを使ったショット。三次元的な空間を縦横無尽に動き回ることができる。おそらく一番お金のかかる撮影方法。まずインディーズでは使えないと思っておいた方がよい。

ズーム:ある一点を拡大したり、ある一点から全体へと引いていったり、カメラを物理的に動かすのではなく、レンズを使って被写体のサイズ感を調節する。実際にカメラが近づくのと、レンズでズームして近づくのでは全く違った印象になるし、フレームのサイズも変わってくる。

空中ショット:映画冒頭、町全体を俯瞰するショットで使われることが多い。ヘリにカメラを乗っけて撮影する。場合によってはクレーンよりもお金がかかるかも。

ドローン:視点としては空中ショットに近いが、ヘリよりも細かい動きや狭い空間での撮影もできる。ヘリに比べれば安価で撮影もできる。最近よく見かけるので、映画の現場でも使われるようになってきているはず。

以上が思いつく限りのカメラワークの種類である。
ほとんどのカメラワークは上記のどれかに分類できる。
現場では監督の意向に応じて撮影監督が最終的にカメラワークを選択し撮影を開始する。
どのようなカメラワークでも、自然に発生したものは存在しない。
すべては意図的に選択されたカメラワークであるから、必ず誰かの意思が存在することを忘れてはならない。
ぜひカメラワークの運動による効果の違いを意識した上でいろんな映画を楽しんでいただきたい。

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!