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『100,000年後の安全』途方もない未来へ

『100,000年後の安全』 2010年
監督・構成:マイケル・マドセン(タランティーノお気に入りの俳優ではない方の)
製作:リーゼ・レンゼー・ミューラー
脚本:イェスパー・バーグマン
撮影:ヘイキ・ファーム
音楽:カーステン・ファンダル
編集:ダニエル・デンシック
上映時間:75min

あらすじ
オンカロ。それは100,000年の耐久性を備えた放射性廃棄物の墓。これからの100,000万年を生きる人類のために施設員たちはオンカロを作り続ける。

想像してみてほしい。
あなたはこの先100,000万年を生きる人類のために、真剣に何かをしようと思えるだろうか?
普段働くのは誰の役に立っているだろう?
どんな大企業を創り上げたお金持ちでも、せいぜい自分、家族、社員、お客さんくらいなものだろう。
最近は環境への配慮を優先する企業が増えてきているが、さすがに100,000万年後の環境のために何かをしようという企業は存在しない。
そう、オンカロをつくる人々を除いては。

オンカロは海底や宇宙に捨てるのが危険な放射性廃棄物を地中深くに埋めるためだけにつくられている地下施設である。
‘つくられている’というのは文字通り、建造中であるということだ。
20世紀にはじまった工事は22世紀に完成予定だとされている。
22世紀に定められた量の放射性廃棄物が埋められれば、オンカロは永久に封鎖される。
入り口は分厚いコンクリートで固められ、誰かが強引に掘り起こさない限りは関係者ですら入ることは許されなくなる。
なぜ100,000万年という数が出てくるのかは、放射性廃棄物が生命に影響を及ぼさなくなるのに100,000年かかるからだ。
つまり、この先100,000年の間に誰かがオンカロを発見して発掘してしまえば(考古学者がピラミッドの中を覗こうとしたように)、一帯に危険が広まることになる。
しかも放射線は匂いも形もないから、もしその時代に放射能の知識が十分に広まっていなければ発見者は間違いなく死んでしまう。
オンカロにとって、最も重要なことは何か?
それは決して誰にも侵入させないことなのだ。

映画の中ではその点について2つの派閥がいることが映される。
忘れ去ることを忘れないようにと伝え続ける派と、完全に隠して封印する派である。
未来の人間が何を考えるかは全くもって予想ができないから、たとえ警告を残していてもそれが役に立つかは分からない。
言語だって今の主要言語で通じるかは分からないし、放射能の知識が今と同じくらいに一般的に広まっているかは分からない。
そんな分からないことだらけの未来の世界にオンカロを残すことの難しさがお分かりいただけるだろう。

オンカロが100,000年間誰にも触れられずに眠り続けるかは今建設している人には分からない。
そもそも自分が生きている間には完成すらしない。
それでも自分たちが生んだ負の遺産は自分たちで処理するという固い決心の元、彼らは働き続ける。
SDGsが取り沙汰される今の世の中、本気で未来の人類のために生きられる人は何人いるだろうか?

そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!