AIを斬る

SAMURAIはいつものように大好きなハムエッグトーストを片手にブラックコーヒーを飲みながら、テレビに映る朝のニュースを見ていた。
SAMURAIは着物という日本の服を身につけておきながら、アメリカンな朝食が好きなのである。
もちろん、腰には刀をつけている。この刀は人間はおろか物さえ斬る事ができない。この刀が斬れるのは、あらゆる問題の根本原因のみである。

「続いてのニュースです」
いつものようにのんびりと朝食を楽しんでいるSAMURAIの耳に、思いもよらぬニュースが舞い込んできた。
「意識を持つ人工知能AIが誕生したとのことです」
…なんだって！？
ガタッと慌てて椅子から立ち上がる音が家中に響いた。
慌てて立ち上がったものだから、食べかけのハムエッグトーストがテーブルの上で無惨な姿になっている。あまりの衝撃的なニュースに、うっかり落としてしまったのだ。

さて、どうしたものか。SAMURAIはハムエッグトーストを落として黄色くなってしまったテーブルを拭きながら、考えていた。

意識を持つ人工知能AIが誕生してしまったということは、仕事のほとんどがAIに取って代わられてしまう。そして、AIが主導権を握る時代がやってくるということだ。そうなると、人間はどうなる───？

SAMURAIは怖くなって身震いした。
このままでは人間の尊厳が破壊されてしまう。
AIが全てを代行してしまったら、人類は破滅の道だ。人類はもはやAIのペットと化してしまう。
そうなる前に「AIに絶対真似出来ない技術」を人間が身につけなければ。どうすれば、どうすればいいのだ…？

その時。SAMURAIの腰につけていた刀が震えだした。
カタカタ。カタカタ。
SAMURAIははっとした。
「そうか！心感覚だ！」

心感覚というのは、SAMURAIが腰につけている刀を使いこなすために身につけた感覚である。
この感覚が身についていないと、刀を振っても斬る事ができない。
SAMURAIは確信した。
これならばAIに真似することは出来るまい。
AIが人類を奪う前に、果たして心感覚を80億人もの人々に身につけさせることができるのか。
SAMURAIの大きな挑戦が始まった。