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一歩【そもんずエッセイ|全文無料】

気が向いた時に
エッセイや文章も残していこうと
ふと思いました。

というわけで、みなさま、よろしくお願いします。

10分くらいで読めると思います!


ときどき、誰かに背中を押されて、今まで手が出なかったことを「やってみようかな」と思いつく。

突如、ブラジリアン柔術の体験レッスンを予約したのだ。

目についたブラジリアン柔術愛を熱く語った友人のSNSの投稿。

やや狂気じみた投稿に圧倒されながらも、キックボクシングと中国拳法を初回の体験だけでリタイヤした過去にリベンジしてやろうと思いついた。

最初の一歩を後押ししてくれた友人に感謝しつつも「自分も誰かの一歩を押してあげられる存在でありたいなあ」と思った僕は、インスタグラムでサクッと投稿してみた。

「勇気づけてほしい人いませんか?」

最初はみんな探り探りで、なかなか書いてこないのだけど、1時間もすると、ポツポツと勇気づけてほしい声が投稿されてくる。

コメントは多種多様だ。

大学の学生さんや新社会人の方から、40歳前後の方々まで。

僕は1通1通に目を通しながら、気持ちを落ちつけて、その人の書いている状況を目を閉じてイメージしてみる。

言葉の使い方一つ一つに、背景となる感情、経験、葛藤がボヤッと見えるのに面白みを感じながら、さて、どうやって回答すればよいかと考えさせられる。

おそらく回答の一定数は「何も心に響かなかった」という人もいるだろうし、ときには、涙を流して文章を読んだとコメントをいただける。

みんな、自分の人生に必死で生きていて、色々な葛藤の中で、この道を選びたいのだけど、誰かにそっと手を差し伸べてほしいと思うのは、万人の共通したところなのだろうとそっと胸をなでおろす。

ある方のコメント。
「今の仕事だと成長できないような気がして転職迷うけど、HSPなので今の心地よい環境を手放せません」

イメージして、心の中に深くダイブしてみる。
海の中に潜るときのように。

この方は、色々なことに心を配れる気持ちのやさしい人なのだろう。

ようやく手に入れた心地よい仕事環境。

きっと仕事の中での人間関係がとてもよいのだけど、
仕事自体に慣れがやってきて、飽きている。

自分のキャリアの理想像と今のぬるま湯でよいのか?という葛藤が生じているんだろうな。

でも、転職を本当に考えたり、今後のキャリアを深く考えているような序文にも思えない。

単純に「コンフォートゾーンから抜け出して成長していきましょう」というゴリゴリマッチョな回答もできるのだけど、この方の性格とまだ動いていないことを考えるとそこにはギャップがあるように感じる。

人が成長を感じるときはいつなのか?

それは新しいチャレンジを立てて
向かっているとき。

今の挑戦が十分ではないか、今でも挑戦できることに気づいていないのだろう。

もちろん外部に求めることもできるのだけれど、それよりは、今の職場の中で新しいことを求めるほうが、覚悟の深さと気質から判断すると良いのでは?というアイデアが浮かんだ。

僕はこう返した。

「心地よい環境、実はなかなか手に入らないので
とても恵まれているかもしれません。

今の環境で、もっと成長できる目標をつくるというのは
どうでしょう?そして、上司と話をしてみる。

成長の中には、色々な成長の仕方があるかもしれませんよ!」

どこまでこの方に通じたのかはわからないけど、まずは一歩づつ、新しいチャレンジをしてほしいなあと、心から願った。

ある方のコメント
「長い間、一緒にいた方が急逝し、死別しました。
急に新たな人生を歩まなくてはならなくなりました」

コメントを見て、一瞬詰まった。

さて、どうしようか。

一緒にいた方とは誰のことなのか。

おそらくパートナーだろうけど、子供かもしれないし、親かもしれない。もしくは動物の可能性もある。

ただ、ひとつ確かなのは、人生の方向性を一緒に歩むことを考えていたことだけはわかる。

長い間という表現も気になる。

おそらく10年単位なのだろうけど、果たしてどれくらいなのか。

頭の中で、色々なパターンをイメージしながら
僕自身が今まで死別してきたときの感情も交えながら
自分に再現していく。

寂しさ、孤独感、なんともいえない空虚さ。

イメージしていた楽しい未来が
すべて崩れ去って廃墟の中に
ぽつんと一人佇んでいる感じ。

10年ほど前
福島の地震のあとに
炊き出しで訪れた
津波で流された浪江町のイメージが蘇る。

何も無くなった町。
愛する家族を一瞬で失った
一ミリも光の見えない漆黒の闇。
生き残った自分。
でも、生きていかなくてはいけない。

僕は炊き出しの暖かいラーメンを作りながら、被災者の方々のお話を聞くたびに、鎮痛の想いとか暗く閉ざされた未来の中でも、生きることだけは、まだ諦めない人間の強さを感じとった。


一方で
突然変わった状況を受け取るために
消化するためには、何が必要か。

自分の過去を振り返る。

肉親の死を想いだすと
そこには時間が必要だった。

最初は受け入れられないかもしれない。
絶望がつづくかもしれない。

思い出は時間とともに昇華されて
心の中に、今の自分で生きていくしかない
という抗えない事実と
今を受けいれられる心のエネルギーが戻ってくる。

人によっては、数ヶ月で戻るかもしれないし
10年以上かかる人もいるかもしれない。

でも、時間が解決してくれる。

人には、それだけの強さがある。

そんな希望をもって、僕はこう返した。

「心よりご冥福をお祈りいたします。

寂しさと虚しさと悔しさと、色々な感情がある中で、心の中に、ぽっかり穴が空いてしまっていらっしゃるのではと察します。

まずは、焦らずに、自分の心の整理をつけることにゆっくり時間を作って、特に負の感情を溶かしてくださいね。

時間の経過とともに、傷がやわらいできたら、少しづつでよいので自分の人生をまた組み立ててみてください。必ず、新たな人生を見つけられるはずです。大丈夫」

最後の「大丈夫」は、僕の祈りでもあった。

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