マイナス50℃の世界 【somo somo! ブックス】

著者: 米原 万里、山本 皓一  出版社: KADOKAWA

 本書はロシアを構成する、サハ共和国(ヤクート自治共和国)を取材したものである。
タイトルにある通り、「マイナス50度の世界」である。平均気温が。。。
「マイナス50度の世界」とは、人間や動物のはく息、車の排ガス、家庭で煮炊きする湯気などの水分がことごとく凍ってしまって霧が発生してしまうほど厳しい環境である。
 この酷寒の地では、私たちの常識を覆すことが多くある。
 まず、サハ共和国の人にとって「寒いと氷は滑らない」のである。
真面目に理科を学習してきた人にとっては当たり前かもしれないが
氷そのものが滑るのではなく、氷の上に動くものが、氷の摩擦で熱が生じ
その熱で氷の表面が溶けて膜ができる。それが滑る原因である。
サハ共和国のような酷寒の地域では、摩擦熱では氷が溶けず膜ができない。
そのため、「寒いと氷は滑らない」ということになる。
スキーやスケートなどは、暖かい地域の遊びなのである。
 他にも、鉄などの金属製品に素手で触ると瞬間やけどで皮膚がくっついてしまう、
人口皮革製やプラスチックなどの石油製品は壊れるなど、当たり前が当たり前でないことが多くある。
 こんな地に住みたい人はいるのかと不思議になるが、寒くないと調子がでない人、厳しい寒さが恋しくなりこの地に戻って来る人が登場する。この地を好んで住んでいるのである。
まさにこの地に「慣れ」ているのである。
 日本は、サハ共和国に比べて、経済的にも豊かで四季にも恵まれている。圧倒的に住みやすい国であると思う。なのに、不平不満の声を聞くことが多い。
まさに「慣れ」てしまっているのである。
 一度、この酷寒の地で慣れてしまった感覚を凍らせて、溶かす必要があるのかもしれない。

written by 左利きは僕のあこがれ

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