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虚構日記:再婚ドキュメンタリー

五十八歳と八十六歳の男性研究者同士の再婚ドキュメンタリーが流れている。わたしは見知らぬうす暗い部屋にいて、そこにある小さなテレビで、その番組をぼんやり見ていた。

男性はどちらも子持ちで、それぞれに娘がふたりずついるらしかった。
「ふたりとも料理が好きではないので、食事の準備が一番大変ですよ」と言っていたが、用意された食事はどれも美味しそうだった。

テレビが来たから頑張ったというが、娘たちは特に喜ぶ様子もなく、普段の食事内容とあまり変わらない様子がうかがえた。
五十八歳男性の方の次女が美味しそうに唐揚げを頬張っていた。

ふたりは、それぞれ理系の研究者だが勤務する研究所は別で、研究している内容もまったく関係ないのだという。

「顕微鏡か望遠鏡かのちがいですよ」というようなことを話していたので、どちらかひとりは宇宙関係の研究者なのかもしれない。

機密保持の観点から放映時間は短かったが、研究所での姿も少しだけ映った。ふたりとも格好よかったが、とくに八十六歳のお爺ちゃんが白衣できびきびと部下らしき人に指示を出しているのは実に頼もしかった。

それぞれ研究所を出て、駅で待ちあわせて、ふたりで買い物をして帰る。

家には四人の娘がいる。
室内は、ほどよく散らかっていて、ほどよく整理されている。
六人もいるのに空気が澄んでいる。

画面越しにもいい匂いがしてくるような温かい家庭がそこにあった。

六人で総菜屋のコロッケを頬張っている。
インタビュアーもご相伴にあずかっている。

どこかもわからないうす暗い場所で、わたしは腹が減ってきた。

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