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虚構日記:欲望デパート

ペンが欲しくて、久しぶりに欲望デパートに行ってみたら五階建てになっていた。

前に来たのはいつだったか。思い出せないけれど、そのときは、たしか十三階までは登った気がする。

ずいぶんと小さくなったものだ。最近は何でも買い控える人が増えているというニュースを見た気もするけれど、ここまで小さくなっているとは思わなかった。

高校生の頃を思い出す。
あの頃はいつ来ても五十階前後まであって、さんざん買い物をした後に最上階のレストランでどか盛りのミートソーススパゲティとケーキの乗ったパフェを食べるのが楽しみだった。

あのレストランはもう二十年近く前に消失して、それから一度も再生していないと聞いた。もう、どか盛りを出せるような時代ではないのだろう。

デパートの中に入ってフロアガイドを見る。

さすがに五階建てでは化粧品売り場の横に総菜売り場があったり、紳士服フロアのど真ん中で全国駅弁フェアが行われていたり、しっちゃかめっちゃかの散々たる様相。

文房具売り場がどのフロアか探していると、三階の婦人服ブランド名の文字がじわじわと滲み、静かに消えていった。

あのブランドの服をデパートで買う人は、もういないのか。
結局、文房具売り場も見つからなかった。

『欲望デパートへようこそ!』

剥げかけたフロアガイドの文字をそっとなぞって、外へ出た。

次に来るときは何階になっているだろう。
更地になっていないことを願ってみたものの、欲しいものがペン一本というわたしの欲望では、きっと何の足しにもならない。

そうかといって、ほかに欲しい物も思いつかない。

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