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イタリアワインを楽しもう⑭・・モダンバローロ、バローロボーイズとは?

こんにちは、イタリアワインを愛してやまない ソムリエ T です。

さて、皆様、「バローロ・ボーイズ」「モダン・バローロ」というフレーズを耳にしたり、見たことはあるでしょうか?近年のバローロの歴史上、とても重要なムーヴメントの一つです。その背景とポイントを纏めてみました。

1 戦後から1970年頃までランゲやバローロの生産者は決して豊かではなかった。アメリカやイギリスで評価され復興を遂げたフランスワインとは対象的。また当時のバローロは品質が良くても飲み頃になるまで時間がかかるものが多く、中には粗悪なバローロも存在した。

2 一部の生産者がブルゴーニュに学び、最新の醸造技術、設備を取り入れるようになってくる。この当時は地元のランゲを離れてワインを学びにいく考え方がほとんどなかった。

3 ワイン商マルク・ディ・グラツィア氏を中心に、革新を望む何人かの生産者が飲んで直ぐ美味しいバローロを作りだし、それをアメリカ中心にプロモーションを展開。1980年~90年代の頃。それが「モダン・バローロ」であり、後にこの何人かの生産者が「バローロ・ボーイズ」と呼ばれる。

4 この「モダン・バローロ」が特にアメリカで称賛され「バローロ」という銘醸地が世界に知れ渡る。また当時は伝統的な作り手との対比の構図があった。

5 現在は消費者の嗜好の多様化や生産者がそれぞれ個性を出していることもあり、「モダン」と「伝統的」の境界線はなくなってきている。

1970年代、当時のイタリアの、特に地方の人々は保守的で、革新的なことや新しいことを進んでやろうとはしませんでした。ですが、それに危機感を持った一部の生産者達がマルク・デ・グラツィア氏とともに、新しいバローロを作り、世界にプロモーションをかけます。生産者が行った代表的な試みは以下の3つです。

1 熟成させるための樽を替えた。大樽→小樽(バリック)に替え、より樽の風味をつけ複雑味を出した。ただこれには樽の風味に負けない良質なブドウを栽培しなくてはならない。

2 栽培方法を変えた。特に収穫するブドウの品質を上げるために、まだ実が緑色の段階で、いくつか切り捨てる方法をとった。これを「グリーン・ハーヴェスト」と呼び、現在も必要に応じて世界中で多くの生産者が実行している。またこの方法は病害を防ぐなど衛生的な部分でも効果がある。

3 ロータリー・ファーメンターの導入(バローロ・ボーイズの中でも一部の生産者)これは回転式発酵槽といって、回転させることによってより果実の風味と色素を短時間で抽出させます。

このような試みで産まれた「モダン・バローロ」は特にアメリカで大きな支持を得ます。また伝統派バローロとの比較の図式が出きそれが更にバローロの知名度を上げることとなるのです。もちろん彼ら「バローロ・ボーイズ」は伝統派バローロの作り手を否定する意図はありません。自分達の思い通りにバローロを作り、そして当時のランゲ全体を覆っていた窮屈な現状を打破したかったのです。

そして現在では、それは作り手の個性となって表れています。大樽とバリックの中間の大きさの樽を使う生産者もいれば、一部のワインのみロータリー・ファーメンターを使う生産者など、その考えは同じバローロであっても様々です。私たち消費者が自分の好みにあったバローロを選べるのです。

最後に「バローロ・ボーイズ」と呼ばれる代表的な生産者を挙げておきます。後から入った人もいれば、技術は取り入れたものの、マルク・ディ・グラツィア氏とはあまり行動をともにしなかった人など様々で一概に言えないのですが、下記の5名は「バローロ・ボーイズ」として有名な生産者です。

エリオ・アルターレ Elio Altare

ドメニコ・クレリコ  Domenico Clerico

パオロ・スカヴィーノ Paolo Scavino

ルチアーノ・サンドローネ Luciano Sandrone

ロベルト・ヴォレルツィオ Roberto Voelzio

今回のワイン・・バローロ・モンフォルテ 2017/ドメニコ・クレリコ Barolo 2017/Domenico Clerico

6,380円(※写真は2015年ヴィンテージです)

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