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2024年8月のよんだ みた きいた

8月は前半と後半で大きく過ごし方が異なる月になった。お盆前後はたっぷり夏期休暇として身体を休めた。本当は旅行でも行きたかったが、子供達がじゅんぐりで体調を崩し(四人もいると一つの病気が順番に移っていくのでキリがない)、お盆中は妻の実家でひたすら本を読み続けた。

仕事に関係がない本(と言っても結局は関係しちゃうんだけど)を読み散らかすときがとにかく楽しい。僕は本を読むのが好きだ。読んでいる最中の時間が好きだ。

茶杓や茶筅、器にこだわり、お軸や花でもてなしの心を添える。そして嗜むいっぱいのお茶。それをいただいているときの時間が最良なように、本も、何を読むかを本屋で選び、その時の感情や気分に合わせ一冊を手に取り、自分でちょうどいいクッションや椅子で具合を整え、飲み物や焼き菓子を隣に備えておき、いざ読み進める。お茶の道で茶道があるように、読書の道で読書道。あるいは読道(書道はすでにあるし)というものは確実に存在する。

読道の先人であった知の巨人も、先週惜しくも故人となった。ずいぶん昔に丸の内の書店で見たあの陳列の方法に、新入社員だった僕は心を躍らせたものだ。奇しくも15年くらい経って、なんだか同じようなことを試させてもらっている。

よんだ

「よんだ」のゆるルール
・初めて読んだ本であること
・最後まで読み通した本であること
・買った、借りた、紙、電子は気にしない

1.差し出し方の教室/幅允孝

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発売当初に買って、すぐ読み始めたものの、読み切ったのはこの8月。とてもいい本。造本もきれい。とくに前半の、各分野のプロフェッショナルな論議には下を巻く。後半のブックディレクションについては、そうですよね、という答え合わせのような時間に。

2.その日暮らし/坂口恭平

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多作である坂口恭平本のなかでも、これはかなりの良作。力が抜けている。素直に響いてくる。作品ごとにジャンルを横断するミュージシャンが、ギター一本でアルバムを作ったらこうなる、というようなイメージ。結局、セウ・ジョルジもボウイのアコースティック・カバーアルバムしか聴かないもんな。

3.mitosaya 薬草園蒸留所で作る13のこと/江口宏志 山本祐布子

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mitosayaには、去年初めて行った。メディアで映っているところとそうでないところのギャップが結構大きいな、と思っていた。具体的には、庭が全然手入れされていないな、という印象だった。

それが、この本を読んで納得、というか解決できた。そういうことだったのか、と。40代半ばで自分たちの場所を作り、それで仲間を増やして商売を続けている江口さんを見て、あと2年半で40代に入る自分は何をなすべきかを考えた。

4.文化資本の経営/福原義春

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かと思えば、大きな企業を率いて、それでしっかりと自分のビジョンを経済活動に変換した経営者の本を読んだりもする。文化資本、とはブルデューの継承した考え方だが(ディスタンクシオンはずっと積読にしてある)、福原さんの文化資本の経営は、もっと実際的で、抽象的で、ロマンティックなものだ。一度通読しただけでは理解したとは言えないので再読予定。

5.僕の複線人生/福原義春

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福原さんの人生に興味を持ち、続けて自伝的な本を購入。企業が文化を取り入れるその前線にいたんだな、と。堤清二さんの名前も何回か出るし、ああ、その時代か、と。

いまの自分と照らし合わせながら、面白く読んだ。

6.響き合うリーダーシップ/マックス・デブリー

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「僕の複線人生」のなかで紹介されていたので手に取った。これも面白い。ハーマン・ミラーの2代目社長のリーダー論。平易な言葉でとても深みのある文章。

7.権不十年/細川護煕

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さらにさらに、僕の複線人生で出てきた細川護煕さんのエッセイ集。これもめちゃくちゃ良かった。文化と効率、行政府と政治、など今の僕が勉強しなければと思うことがたくさん。

みた

「みた」のゆるルール
・初めて見た/観たコンテンツであること
・リアルorオンラインは気にしない
・映画、展示など広義の"みた"

1.シアスター・ゲイツ展 アフロ民藝/森美術館

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Apple TVオリジナル「Home」というシリーズが好きでよく見ている。そのなかでも、シアスター・ゲイツの回がかなり好きだ。廃屋を自分で買い、リノベーションして地域に開放する。

そんな彼の大規模展がやっていることは4月から知っていたが、まあいつでもいけるだろうとタカを括っていたら結局最終日の三日前に駆け込むという次第。

展示自体はエレガントで膨大で暴力的でとてもよかった。民藝、と名付けちゃうからミスリードになる部分もあるかもしれないが、蒐集と編集、見立てと意味付けがあれば、それは民藝と名乗ってもいいのだろう。

きいた

「きいた」のゆるルール
・初めて聞いた/聴いたコンテンツであること
・購入orサブスクは気にしない
・心が動き数回繰り返して聴いていること

いやもう、先月からひたすらDr.dogとAnnie Williamsの新譜を聞き続けています。飽きない。後半はオアシスをずっと聴いていた。

9月は、NADA SURFの新譜が出ます。

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2024年8月のよんだ みた きいた|染谷拓郎