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友情に感謝、帰ってきた1冊『無法松の一生』岩下俊作

40年以上前に友人に預けた本の話である。記事では『富島松五郎伝』と記載した。それがこの記事。↓

実は、友人に電話して、この本の話をしたところ、最初は覚えていないようであったが、実家で探してくれることになった。そして、自分が話した通りに、本があったことに彼は驚いていた。自分の方は、彼の本棚が40年そのままで、実家にあることに感謝したのである。

中表紙
中表紙
奥付け
奥付けの日付がすごい。1958年である。

この写真をよく見ていただくとわかると思うが、活版印刷である。活字が紙にしっかりと打ち込まれて印字されている。「発行所」「千代田区」「会社」「乱丁」「電話九段(33)0111」の表記にも時代が感じられる。

書き出しのページ
書き出しのページ。

書き出しのページである。この旧字旧仮名も嬉しい。そして、ルビ。子どもが目を悪くするからと、ルビは消えたと聞いているが、スマホの画面のブルーライトの弊害に比べれば、どれだけのものかと思ってしまう。何より、このルビで漢字が読める様になったのである。

実は、彼に連絡した後に、自分は図書館で「無法松の一生」を見つけて再読した。もちろん、新字新仮名であった。久しぶりに読んだこの本は、心打つ話であった。

そして、あらすじとは関係なく、この本を友人に預けた日のことを思い出していた。大学時代に宇都宮の彼の実家に遊びに行った折に、車中で読もうと古書店で買ったこの本を持っていった。気持ちよく夕食をいただき、2階の彼の部屋で話し込んでいた折に、自分は、この本を彼に預けたのであった。多分、卒業して、大学の寮を引き上げる時に失くしてしまうことを心配する気持ちがあったのだろう。

心優しい彼は、すぐに自分の頼みをわかってくれて、たくさんの蔵書が並ぶスチール製の本棚にしまってくれたのだった。そして、この40年経った後でも、本はそこにあった。彼は、ぴったりと本と本の間に入れたのだが、預かったことも忘れていた彼は、半信半疑で探したと言う。薄い文庫本が、汚れもせずに、静かに見つけ出される日を待っていたのだった。

彼は、自分に「よく覚えていたね。」と驚いて言ったのだが、自分は、時折、この本を思い出していたことを話した。ただ、今回、彼に電話で探してもらうことを頼むまでは、一度も話題にした事がないのも事実である。

本の全容 表
本の全容 表
本の全容 裏
本の全容 裏

彼と当時のことを電話で話したが、また、機会があれば、ぜひ、彼に会いに宇都宮に行きたい。親友とゆっくりと酒を飲みながら、あの頃の話をしたい。

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