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こんな本は、もう二度と出ないだろうな『いい女のカーライフ』徳大寺有恒著 新潮文庫

自分が持っている本だけど、今は、ちょっとどこにあるか行方不明である。記憶の中の本として書こうと思う。1987年3月に発売の新潮文庫のカラー版である。

女性をターゲットとしたこの本は、あのひと頃、大いに流行った『○○○○年版 間違いだらけのクルマ選び』の作者である徳大寺氏が、執筆した本である。徳大寺氏は、外車にいつ国産車が追いつくかというような視点でのけっこう厳しい目のクルマ選びの論調であったと思う。他の方の類書が時折出たが、彼の優位は崩せなかったように思う。

寄り道してしまった。『いい女の〜』に戻ろう。この本は、クルマを知らない女性に向けて書かれている印象がある。運転法のコツだけでなく、クルマの構造、FF、FR、MR、4WDということから、アンダーステア、オーバーステアというあたりまで、もちろん、サスペンションの種類とクセまで、多分、この本を読めば、大黒摩季が歌う男に惚れ込んだ女性以上の学習となるだろう。どんなクルマが、どんな風に女性を演出していくか。あくまでも、徳大寺氏の価値観からであるが。

そして、カラー文庫の特性を活かして、カッコいい写真とともに、徳大寺氏が素敵な女性に乗って欲しいクルマが、外車多めで紹介されていく。

この本は、2022年においては、絶対に売れない本だと思う。文庫で出しても、女性は、手にとることは、ないと思うからである。現在のクルマは、徳大寺氏が見れば、どんな風に思うだろう。普通の大多数の人は、もう当時のようにクルマが、一つの夢を叶えるツールとは思っていない。車高が高く、居住性と、スーパーコンピュータの設計支援から、どれも同じに見えるシルエットで、わずかにライト回りや、ラジエターグリルのデザインの違いしかないような多くのクルマであるからだ。
徳大寺氏が、もし、ご存命であれば、この状況をどう思われることだろう。

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