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世界観へのなめらかな招待の仕方〜喋ってはいけないカフェの体験から考える〜

こんにちは!UXデザイナーの神谷です。

先日訪れたカフェの体験がとてもよかったので、皆さんに伝えたい。その想いだけで筆をとっています。
通称、喋ってはいけないカフェ。

なぜよかったか振り返ってみると、店主の方の作り出す世界観と、その世界観への招待のされ方がとてもなめらかで、印象深いものでした。
このnoteでは、そんななめらかさを感じさせてくれたいくつかの仕掛けを中心に、その時の自分の感情とセットで考察してみたいと思います。



賛否両論な口コミ

もともとそのカフェのことは知りませんでした。
久しぶりに鎌倉にいき、帰るまでに小一時間時間潰したかったので、Googleマップを開き周辺かつ高評価を条件にしてカフェを調べました。(自分がよくやる検索方法です)

そこでこのカフェを見つけたのですが、口コミをみると、賛否両論でした。
正確には9割以上が好意的なものに対し、1、2名が比較的詳細に、ネガティブなコメントをしていました。

出典:Googleマップ

これら口コミに若干の緊張感を覚えながらも、カフェなのに喋ってはいけないという強いコンセプトに惹かれ、お店に向かうことにしました。

緊張度:★★☆☆☆
感情:不安、好奇心

結界のような入り口

お店に入る前に改めて覚悟を迫られます。

補足すると、そもそもカフェ自体が小山の中腹部にあるため、鎌倉で買い物をしていてふと気づいて立ち寄るということはほぼありえません。その点で来るべく人のみ来る立地にて、更にこのカフェに入る前に改めてルールを提示されます。

そんな立地と入り口によって、自分の緊張度は高まります。
(ただ見方を変えれば、店主の方がカフェの世界観を保つためにここでしっかり線引きをしてくれているんですね。)

緊張度:★★★☆☆
感情:更なる不安、せっかくここまで来たしいってみよう

カフェの店内:
店主の想いが綴られた冊子

カフェの入り口というより人の家の玄関を入り、細長い廊下を進んでいくとカフェスペースがありました。壁に沿ったカウンター形式になっており、そのすべての席に店主の想いが書かれた冊子が置かれていました。

とても綺麗な文体で、なぜ静かに過ごして欲しいのか、なにを感じてもらいたいのか丁寧に綴られていました。
冊子をめくると、滞在時間のこと、カフェ内にある設備のこと、すべてに対してどう取り扱ってほしいのか、押しつけがましさ等一切なく、あくまで店主の想いが語られていました。

緊張度:★★☆☆☆
感情:丁寧、店主の方ははこんなふうに考えているのか、自分たち(お客さん)のことも考えてくれている

本棚

個人的にはここが一番感動したポイントでした。
(写真はとりませんでした)

カフェの店内には店主の方がこれまで読んでこられた本が200冊くらい並んでいる本棚がありました。小説から雑誌、有名な方の自伝までさまざまです。
これをみるだけで店主の方がどんなことに興味があるのか、どんな人なのか思いを巡らせることができます。

自分に置き換えると、本棚をみられるのはとても恥ずかしいことです。そこにはありありとこれまでの自分の葛藤が表れるからです。
それを惜しげもなく、むしろこれが今の自分を作っていますというメッセージのもと、自己開示をしてくれることに驚きがありました。

緊張度:★☆☆☆☆
感情:店主の方はこんな人なのかな、この本は自分も読んだことある、店主の方の頭の中を覗いているみたいでどきどき

静寂の中にある静けさ

店内で店主の想いに触れた後、席に座っていると普段聞こえない音が聞こえてきます。
コーヒーを淹れる水音、時計を鳴らす秒針、こすれあう葉音。
あれ、こんなに静かだったっけ?という気持ちにさせてくれ、後にいただくコーヒーもとてもおいしかったです。
そしてこれこそきっと店主の方が大切にされてるものであって、カフェという手段を使って伝えたいものなのかと思いました。

緊張度:☆☆☆☆☆
感情:静か、普段聞こえない音が聞こえてくる、心地いい

まとめ

以上が、喋ってはいけないカフェの体験とそれを印象深いものにしてくれた仕掛けの数々です。
いわゆる商業性(ビジネス)の面からみると、独自性の強いコンセプトや立地がネガティブに働くという捉え方もあると思いますが、想いを込めた丁寧なメッセージや押し付けのない自己開示等によって、こちらの感情の振れ幅を作り出すことにさえ使われているように感じました。
そしてそんな設計(デザイン)の先にある、何もせず静かに時の流れを感じられる価値は格別なものでした。

実は他にも隠れた茶室など、素敵な要素はたくさんあるのですがその辺は実際に行って感じてもらう方がいいと思い、書きやめます。

とても素敵な体験をありがとうございました。
またぜひお伺いしたいと思います。



カフェに限らず一緒に面白い体験をデザインしてみたい方、ぜひお話しましょう!


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