『レプリカたちの夜』読んだ話

読んでいる間ずっと夢と現実の間を歩かされている感じがした。はっ!寝てた?を繰り返していく感覚。

『レプリカたちの夜』一條次郎著

動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。(裏表紙より)

いやこれ引用しながら思ったけど、裏表紙のあらすじ書いた人すごいな。「ミステリーかどうか、そんなことはどうでもいいなあ、と感じるほど僕はこの作品を気に入っています」と伊坂幸太郎さんが帯に寄せているように、本書は「そういえばミステリーだった」と時折思い出すくらい、ミステリーという感じがしない。

物語冒頭は、「スパイは誰だ」とか「こいつは嘘をついているのでは……」というようなシーンが続くのだが、だんだんと「往本さん大丈夫?なんかおかしくない?しっかりして??」という雰囲気になっていく。はじめはトリックだ伏線だと思っていた違和感が、気づくとめちゃめちゃ大きな歪みになっていて、物語中盤からはずっと、往本と一緒に頭を抱えるような気持ちになっていた。

あと、中盤からは読んでいる最中に『アンドロイドは電気羊の夢をみるか?』(フィリップ・K・ディック)を読んだ時と感覚が似ているなぁ、とウンウン唸っていたのだが、解説でもこの本のタイトルが出てきてとても嬉しかった。過去に読んだ本が繋がると自分の本選びを褒められているようで嬉しい。エヘエヘ。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?