仮想少女は橙色の夢を見るか②

※VRChatの拙ワールド「あの日の橙色幻想」のネタバレを含んだ、エクストラストーリーです。
先にワールドをプレイしていただくか、ネタバレを気にしない気持ちをご用意頂くかのいずれかを推奨します。











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 メモを残すことにした。

 この橙色の世界で見つけたもの、感じたこと、それらをまとめておく備忘録として。かつ、後からこの世界にやってくるかもしれない誰かの為の、案内メモとして。


——などでは、断じて無い。


 騙す為に。

 何処かでわたしを見てほくそ笑んでいる誰かを騙す為に、こうやってわざわざメモを残している。

 何かがわたしに介入してきていることに気が付いたのは、割とすぐの事だった。
 学校に到着したわたしは、自らの中に違和感を抱いた。

 何故、学校にいるんだろう。

 さもそれが当然の事のように学校に来てはいるが、それが小さな矛盾を生み、膨らませる。あの家から学校までの記憶がない。わたしが学生であるという自覚もない。そもそも、学校に来ることが、どうして当然と思ったのか。
 ただ、手掛かりが無さすぎる。何せ、自分の頭の探索だ。どこかに物的証拠があるわけでもない。
 それでも、自分の記憶に不自然があることはわかる。というより、不自然が“生まれた”ことが自覚できている。となれば、『誰かがやった』と考えるのが自然だ。自然なんだ。

 そう仮定すれば、次はその条件になる。それを確かめる為に、こうやってわざわざメモを残している。

 学校の中には、光る壁があった。その先へ進む事を拒むように、素早く動いている。
 わたしは、何とかして向こうを見れないかと思い、意を決して飛び込んだ。まあ、結果は惨敗だった訳だが。

 壁に弾かれたわたしが次に目にしたのは、立方体の内部——のような、何かの部屋だった。

 家も教室も、窓から外を見ることは出来た。どちらも同じように空しかなく、幾つかの橙色が浮いているだけではあったが。しかし、この部屋には窓がない。あるのはこうやってわざわざメモを残している。




 これまでの2部屋とは違う、明らかに異質な空間。ここをスタート地点としよう。
 追ってくる人物を撒くためには、わざと違う道筋をさり気なく仄めかすことが重要になる。この部屋で目覚め、教室に向かい、帰宅した。そういうシナリオをでっち上げることにした。その為に、こうやってわざわざメモを残している。




 うん。メモはこんな感じで良いだろう。後は見つけやすい場所に隠しておこう。こうやってわざわざメモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。メモを残している。





——ああ、そうか。

 この頃から……いや、きっと最初から、わたしはおかしくなっていたんだ。


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