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父娘、旅に出る。Day5_180914

気ままな父のひらめきで、目まぐるしくスケジュールが変わる毎日。今日は、散歩からの帰り道に、父の47年来の友人Pepinに誘われて、みんなで馴染みのカフェへ。そして、父とPepinがなにやら楽しそうに相談していたと思ったら、ドライブが始まりました。

行き先は、アロラを見守るように立つ山、Monte Hacho(モンテ アーチョ)。

若かりし父が度々歩いてここを訪ね、ひとりで何時間も過ごした思い出の場所だということは、後ほど知ることになります。

舗装された道がなくなり、転がり落ちないかと気を揉みながら、草木の中をかき分けるように車を飛ばすこと15分。突然視界が開けて、アロラを一望できる場所へ着きました。

タバコに火をつけるPepin、カメラを構えるマオ、景色をただ眺める私。そして、向かいにある白い十字架の立つ小さな丘へと駆け下りる父。

それぞれに時間を過ごしている中で、ひとり離れた場所に立った父が突然、堰を切ったように泣き出したのです。

父が哀しんでいるのか喜んでいるのか、私にはわかりませんでした。でもどちらにしても、悪い涙ではないのだと思いました。そして、Pepinもマオもきっと同じ気持ちでいてくれたのだと思います。誰ひとりとして父に駆け寄ることなく涙の理由を尋ねることもなく、ただじっとそれぞれの場所にいました。

どれくらい時間が経ったかはわかりません。父は、日本語とスペイン語が混じり合う言葉で「ここへ来られてよかった。ありがとう」と言って、私たちのそばで、照れ臭そうにまた涙をぬぐいました。

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