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お手上げ

「さあ観念しろ、地球のことを洗いざらい喋ってもらうぞ」

ウルペ星人の頭頂部に生えている十本の触覚が黒色から金色に変わった。

これは連中が感情的になったことの合図だと前に軍曹から聞いたことがある。

俺は椅子に拘束されていた。首と胸を背もたれに脚を台座に肘おきに腕をそれぞれ固定されている。佇まいこそ玉座のようだが今や俺の立場は奴隷よりも卑しいのだ。

連中の手にペンチのような器具がくっ付いているのが見える。ウルペ星人の楕円形の掌には指が無かった。代わりに粘性の体液を分泌して物をグリップしているらしい。ペンチであれば地球でもポピュラーな拷問器具だ。もっとも、これから行われる拷問がポピュラーなモノとは限らないのだが。

「これからひとつずつ引き抜いていくからな。観念しやがれ」

ペンチを持った奴が触覚をゆらゆらさせながら俺の前に躍り出る。

もはやこれまで。

俺は覚悟を固め指先の神経を張り詰めた。いや、この場合は神経を鈍らせた方が良いのだろうか。

こういう時はやけに脳が饒舌になる。走馬灯は死の直前に脳味噌が解決策を講じようと必死になって過去にヒントを求めることが要因だと何かで読んだがこれもその類か。

俺はこの星間戦争における最初の捕虜になったことを悔みながらキッと歯を食いしばった。

…だがしかし、一向に痛みは襲ってこなかった。

おそるおそる薄目を開けて連中の様子を見てみれば何やら話し込んでいる様子。

「触覚を7本も引き抜いてやったのにあいつは叫び声の一つもあげない。地球人の頑丈さはどうかしているぞ」

ウルペ星人たちは楕円形の指も無ければもちろん爪も無い手で頭を抱えていた。




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