恵方巻 ー極編ー
今年の恵方は北であった。して南極調査隊の面々は南極点における北とは何処かとひとしきり議論を重ねたのちに真下をむいて食べることとなり、各々基地の中や外の雪原など思い思いの場所で恵方巻を食べ始めた。
今年の恵方は北であった。して北極調査隊の面々は北極点における北とは何処かとひとしきり議論を重ねたのちに真上をむいて食べることとなり、各々基地の中や外の雪原など思い思いの場所で恵方巻を食べ始めた。
するとどうだろう、氷の底を覗き込めば氷壁の向こう側に同じく恵方巻を食べる北極調査隊の隊員たちがスノードームのように透き通って見える。
するとどうだろう、空を見上げればオーロラの向こう側に同じく恵方巻を食べる南極調査隊の隊員たちがプラネタリウムのように映し出されて見える。
お互いに少しギョッとしたものの恵方巻は黙って食べきらなければならないので黙々と食事を続け、最後の一口をグイッと口の中へ押し込んでしばらくモグモグやって完食する。
それからお互いに声を掛け合う。
「やあ、どうも今日は一段と冷えますなぁ。ところで、今年の恵方は反対側ですよ。」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?