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SOME LIE JAPAN

野球観戦を楽しみたい。

最近になって急に芽生えた漠然とした欲求だった。

突然だが私は子供にとっての野球は2種類あると考えている。「観る野球」と「やる野球」の2つだ。どちらが先になるかはさておき大抵の場合その二つはセットで受け入れられている野球を嗜む少年でどちらか一方という人は少ないのでは無いだろうか。そこで、高校を卒業し部活動などに代表される「やる野球」が遠ざかった今、私の目の前に残されたのは「観る野球」だった。どうやら私と野球との間で障壁となっていたのは「やる野球」だったらしい。

ありきたりだが私も小学校の時、父の勧めで野球部に入った。(多くの「父」は「息子」とのキャッチボールを好む傾向にある)しかし、退屈なランニングや思いのほか複雑なルール、炎天下で溶けた脳味噌にキャップの上から流し込まれるコーチの大声などなど私には合わない要素がたっぷりですぐにやめてしまった。思い起こすとあのスポーツサングラスの釣り上がったレンズは怖いからやめてほしい鬼コーチは垂れ目のスポーツサングラスで恐ろしさを緩和すべきではないだろうか。

閑話休題、その一方で同時期に連れて行ってもらった球場での野球観戦は楽しかった事はよく覚えている。大人数で一体となって1つの事柄に打ち込む異様な空気は選手やルールを知ろうと知らまいと問答無用で万物を飲み込む。周りが盛り上がれば私も盛り上がる。球場の中の父はいつもより気前が良くなってアイスクリームも奮発してくれる。

なにより、私が憧れたのは野球を観る大人たちの様子だった。顔を真っ赤にして立ち上がって大はしゃぎする大人たち。それは普段学校や街で見る大人、両親や先生、鬼コーチからは考えられない姿だ。小学生の子供にとって大人とは賢くて冷静なイキモノなのだ。それなのに、やっていることはやんちゃな小学生の子供と変わらない。しかし、どうしてもその姿は子供には真似ができないのだ。その興奮するハートを子供は味わうことができないのだ。なぜなら、子供にとって野球は「観る」だけでなく「やる」ものでもあるからだ。(それと少しのアルコール)

今の私ならその興奮が味わえるだろうか。それとビールも。


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