25.怠惰の王

「敵将を探せ!敵将だ!」

皇子の声がこだます。しかし、敵軍の勢いが盛り返してきた今、支えるだけで精一杯になりつつある。

このとき、私はふと不思議に思った。

将軍というものは敵にその存在を知らしめて勝ち己の功とするものではないか?

しかし、今敵将は隠れて見えない。

いや、隠れているのではない、動いていないだけなのだ。

なんらかの理由で動けないのだ。

「皇子!動きのないところを突け!敵将はそこだ!」

「よし、分かった!」

皇子の指示はすぐに全体に伝わった。

そして、まったく動く気配のない異様な部隊があるとの報告を受けた。

最左翼、もっとも戦闘から遠い場所、全隊がこちらに攻撃を集中するなか、まったく持ち場を離れようとしないのだという。

「敵将はそこだ!そこを襲え!手柄を立てよ!」

皇子の言葉に後衛部隊が進路を変えた。それを見たパトスが私の背を押した。

「お前もゆけ、ここは私が支える。お前の力がいるはずだ。」

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