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札幌移住の一番の衝撃が「セコマのカツ丼」だった話

2021年1月に東京から札幌に引っ越してきた。それまでの環境と最も異なっていたのが雪の存在だった。

引っ越し当日も雪が降り積もり、家のまわりは一面の銀世界。札幌移住で一番の衝撃は「雪のある暮らし」とそれに慣れることだったといえる。

だが、同じくらい衝撃を受けたのが、「セコマ」の存在である。

北海道発のコンビニ「セイコーマート」

セイコーマートは、北海道発のコンビニチェーン。北海道以外の店舗はほんのわずかで、ほとんどは道内にある。北海道は、全国で唯一、三大コンビニチェーン(セブン、ファミマ、ローソン)以外がシェア1位を占める都道府県である。

移住前は正直、それほどよい印象をもっていなかった。「2018年の大地震で北海道がブラックアウト(全域停電)に襲われた際、ほとんどの店舗が営業を続けた」というニュースを聞いて、「さすが地域密着のコンビニだな」と感心した記憶はあるが、品揃えや商品力は三大コンビニには敵わないと思っていた。

しかも、店舗内の照明は少し暗めだし、棚まわりも少し雑然とした印象があった。三大コンビニの整然と商品が並ぶ、洗練された雰囲気の店内を見慣れていたからだろう。だから、移住後もお気に入りのセブンを利用することになるだろう、と考えていた。

最初に食べたのが「セコマのカツ丼」だった

しかし、その思い込みは移住初日に覆された。引っ越し当日は、当然食事をつくる余裕もなく、近くのコンビニで夕飯を調達することになった。

自宅の徒歩圏内には、セコマもあるし、三大コンビニもそろっている。一瞬迷ったが、「せっかく札幌に住むのだからセコマで買おう」と、店内に足を踏み入れた。

弁当コーナーを物色していると、「ホットシェフ」なるコーナーがあることに気づいた。店内で調理した弁当や総菜が並ぶコーナーである。実際、奥ではスタッフがなにやら調理をしている。

どの商品も温かい状態で並んでいる。おいしそうだ。そこで、目に入ったのが「カツ丼」である。

「ホッキカレー」や「ジンギスカン弁当」といった北海道ならではのメニューにも興味を引かれたが、「カツ丼ならそれほどハズレはあるまい」という経験則から、カツ丼をレジへ持っていった。540円也。

家に帰って、早速カツ丼のふたを開ける。ふんわりとダシの香り。店内調理だけあって玉子も半熟状態で、いい感じのとろみもある。肝心のカツもなかなかの厚みだ。

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あぁ、うまい。

引っ越し作業でぺこぺこになっていたお腹をやさしく満たしていく。三大チェーンのどのカツ丼よりもうまい。最強だと思っていたセブンよりも。「これで540円かあ」と一人唸ってしまった。

110円の総菜も美味

それ以降、私はすっかりセコマの信者である。コンビニに用事があるときは、セコマを探す。コンビニのファーストチョイスとなった。今までコンビニは「ついでに立ち寄る」存在だったが、札幌に住んでからは、あえてセコマを「探して買う」

ホットシェフの商品はどれもおいしいが、それ以外の総菜もよく購入する。ザンギ入り焼きそば、和風豚焼きうどん、鶏肉入りペペロンチーノ、ミートソーススパゲティ、煮卵、ポテトサラダなどがお気に入りだが、どれも110~160円程度の価格設定である。

麺類のボリュームは半人前だが、とてもおいしく、コストパフォーマンスが高い。「これで110円かよ!」と驚くほどのクオリティである。

突然、セコマのことを投稿したのは、『週刊文春』(9月9日号、9月16日号)で2週にわたってセコマの記事が掲載されているのを読んだからだ。

執筆者はライターの伊藤秀倫氏。彼はこう書いている。

そもそも私がセコマに興味を持ったきっかけは、東京から札幌に移住して、何気なく食べた五百四十円の「カツ丼」の完成度に衝撃を受けたからだ

なんと、私と同じ体験をした人がここにもいた。しかも昨年札幌に移住したばかりだという。「やはり、あのカツ丼は人を感動させるレベルだったのだ」と改めて気づくことになったのである。

札幌に引っ越してきてから、地元の人たちに「ホットシェフのカツ丼おいしいですよね?」と聞いても、「まあ、おいしいよね」と薄いリアクションだったから、なおさら我が意を得たとばかりにうれしくなった。きっと道民にとっては当たり前すぎて、その凄さを実感できていないのかもしれない。

強さの秘訣は「自前主義」

記事によると、セコマのオリジナルのPB商品(セコマではRB商品という)は、原材料の確保から加工、物流に至るまで、すべて自社グループで賄っているため、コストカットすべきところがガラス張りになっているという。安さの秘訣は、「自前主義」にあったのだ

自前の物流システムだからこそ、ブラックアウトに見舞われたときも、商品を店舗に届けることができたわけだ。他のチェーンのように他社に委託していたら、機動的な物流は実現しないのは容易に想像できる。

文春の記事は、社長のインタビューをベースにしている。非常に明確な理念やポリシーをもっているように見受けられた。企業としても興味がわいてきた今日この頃である。

記事を書いていたら、お腹が空いてきた。

さあ、セコマのカツ丼でも食べようか。

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