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温泉ライターが年末年始の温泉を避けるワケ

「年末年始は温泉に入りながらほっこりと過ごしています」――などと報告したいが、温泉には行かずに自宅で過ごしている。例年通りである。

温泉ライターの立場を考えればどうかとも思うが、この仕事を始めてからは一度も年末年始を温泉で過ごしたことがない。

一方で、年末年始に温泉地で過ごしている温泉ファンのSNSの投稿を見ながら羨ましいなと思っている自分もいる。

季節柄、叶うものなら温泉に入り、宿でぬくぬくと時間を過ごしたい。だが、それでも年末年始に温泉に行かないのには理由がある。

年末年始と温泉の相性について

年末年始に温泉に出かけないのは、年末年始と温泉旅行の相性が悪いからだ。特に、私が普段実践している「ソロ温泉」や「温泉ワーケーション」との相性は最悪である。

第一に、年末年始の温泉地は混雑する。実は、20代の頃に一度だけ正月を温泉で迎えたことがある。

正月ということもあって宿泊したい旅館はどこもいっぱいで、いわば妥協する形で旅館を予約した。その時点で満足度は下がっていたが、大型の温泉ホテルだったので、館内はどこに行っても宿泊客だらけ。バイキングの食事も「奪い合い」のような雰囲気であった。

肝心の温泉についても、芋の子を洗うほどではなかったが、浴室は混雑し、酒の入ったおじさんたちがバカでかい声で話していて、温泉を愉しむどころではなかった。

おまけに帰路はUターンラッシュに巻き込まれ、普段なら2時間の距離を5時間くらいかけて帰った。「何のために温泉に行ったのだろう」と、激しく後悔した。このときの経験が今もトラウマになっているのだ。

サービスが落ちるのに割増料金・・・

今の温泉街はどこも閑古鳥が鳴いているーーというのは普段の平日の話。年末年始は別である。人気の宿はたいてい早くから予約で埋まってしまう。

首尾よく予約できたとしても、交通機関や高速道路は大混雑し、温泉宿もキャパシティいっぱいに予約を受けているから何かと混雑しがちだし、スタッフのサービスも落ちる。

にもかかわらず、宿泊料金は普段よりも割高である。年末年始は特別料金で3割くらいは高い設定になっていることが多い。

致命的なのは、「ソロ温泉」は圧倒的に不利だということだ。

年末年始は放っておいても予約が入るので、一人旅は後回しにされがちだ。たとえ受け付けていても、びっくりするような料金設定になっていたりする。

たとえ金に糸目をつけず、ソロで出かけたとしても、いつも以上にまわりは家族連れやカップルだらけで、孤独感に襲われることになる。

「温泉ワーケーション」の場合はどうだろうか。

そもそもワーケーションは仕事をすることが前提なので、年末年始にわざわざ出かけてワーケーションをするのはピントが外れた話である。もちろん、仕事をするのも自由だが、わざわざこの時期に「温泉ワーケーション」をする必要もないだろう。

「ソロ温泉」にとっても「温泉ワーケーション」にとっても、年末年始は相性が悪い。だから、家でおとなしくしていたほうが無難という結論になる。

ただ、もっと大きな視点でいえば、温泉ワーケーションやソロ温泉で平日も含めて温泉を楽しむのが当たり前になれば、あえて年末年始に温泉に行かなくてもよいと思う人が増えるかもしれない。

温泉ワーケーションやソロ温泉の普及は、年末年始の混雑を緩和するという意味でも価値があると考えている。

それでも年末年始を温泉で過ごすなら・・・

全体的にネガティブなトーンになってしまったが、年末年始を温泉地で過ごすのも風情があってよい。正直、正月から温泉に入りながらゆっくり箱根駅伝でも見ていたい、という願望もある。

ということで、どうすれば年末年始でも満足のいく湯浴みができるか考えてみた。現状、私が思いつく選択肢は1つ。

馴染みの湯治宿で連泊することだ。湯治宿の場合、年末年始でも料金設定が変わらないケースが多く、仮に割増料金だとしても比較的リーズナブルに抑えられている。

昔ながらの客層も常連が多く落ち着いているので、必要以上に浮かれた雰囲気もない。さすがに初めての湯治宿に連泊するのはリスキーだが、一度宿泊して勝手を知っていれば問題ない。鄙びた温泉地で過ごす正月も趣きがありそうだ。

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というわけで、2021年の投稿は最後となる。2022年も変わらずに毎日投稿する予定だ。

みなさま、よいお年をお過ごしください。


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