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「温泉」と「仕事」の共存がもたらすメリット

「せっかく遊びに行くのだから、仕事を持ち込みたくない」

ワーケーションに否定的な人の中には、「ワーク」と「バケーション」が混在することに抵抗感をもっている人が少なくない。「仕事は仕事、余暇は余暇」と割り切りたいというわけだ。

だが、仕事と余暇が隣り合い、混在している環境こそがプラスに作用することもある。今回は、「ワークと温泉は分けるべきか」というテーマで考えてみよう。

ワークライフバランスの精神に反する?

温泉ワーケーションについても、「せっかく温泉に行くのだから仕事のことは一切考えず、ひたすらリラックスしたい」という意見もあるだろう。その気持ちは理解できる。私も温泉に入るときは、湯と向き合うことに集中したいほうだ。

ワークライフバランスの観点からワーケーションに否定的な見解をもつ人もいる。「ライフ」の分野に「ワーク」が入り込むおそれがある働き方は、ワークライフバランスの精神に反するという。

Wikipediaによると、ワークライフバランスは、こう定義されている。「一人ひとりの人が自分の時間を、仕事とそれ以外で、どのような割合で分けているか、どのようなバランスにしているか、ということ」

この場合、ワークとライフは分けるべきものであり、対立する概念ととらえているように感じる。

だが、この考え方には違和感を覚える。そもそもワークとライフは、明確に分けられるものなのか。単に働きすぎている状況を改善すれば、ワークライフバランスが実現しているといえるのだろうか。

私は、キャリアコンサルタントの池田千恵さんの考え方に共感する。「NIKKEI STYLE」のインタビューの中で、池田さんは「ワークライフバランス」について、こう定義している。

「仕事と遊びを、どちらも同じ土俵に上げて、同じ視線で考えることで、それでこそ、仕事にも遊びにも創造力が発揮でき、人生が楽しくなること」

起業家は「仕事と遊びの境目」が曖昧

私は仕事柄、成功している経営者や起業家といっしょに仕事をすることがある。彼ら彼女らは、ほぼ例外なく仕事が好きだ。仕事中毒というくらい働く人もいる。

もちろん、365日働き続けることはできないので、経営者や起業家も休みはとる。だが、ぼんやりと家でゆっくり過ごすという休暇の使い方をする人は少ない。短い休みであっても、遠出してアグレッシブに余暇や趣味を楽しんでいる。「仕事同様、遊びも全力」。そんな印象である。

経営者や起業家は、仕事と遊びの境目が実に曖昧である。遊んでいる最中も仕事を完全に切り離すことはしない。遊びの中からユニークな着想を得て、それを事業アイデアに取り入れるケースもよくあるという。

池田千恵さんは、同じインタビューの中でこうも述べている。

「ずっと仕事のことを考えていて頭が切り替わらないなんて息が詰まる」と思ってしまいがちです。しかし、完全にOFFにするのではなく、ずっと緩いONモードになっているからこそ、卓越したアイデアが浮かぶものです。皆さんも心当たりはありませんか?「新しいアイデアを考えるぞ」と机にかじりついてずっとうなっていても一切浮かばないのに、旅行中に温泉に入ってぼーっとしていたらよいアイデアが浮かんだ、なんてことが。

そう、仕事と余暇を完全に切り分けないからこそ、温泉に最中によいアイデアが浮かぶこともある。仕事オンモードの時間と、オフモードで温泉に入っている時間が共存しているからこそ、相乗作用が生まれ、仕事でも好ましい結果が得られるのではないだろうか。

温泉は仕事と余暇を分ける境界線ではなく、その境をあいまいにする緩衝地帯である。入浴時間をうまく活用することで、自らの創造性を引き出すことができるかもしれない。

「温泉ワーケーション」と「ソロ温泉」を使い分ける

もちろん、「仕事は仕事、余暇は余暇」と割り切りたい人は、無理して温泉ワーケーションを実行する必要はない。

私も仕事のことは忘れて、温泉だけに集中したいときは、仕事をもたずにひとりで温泉地へ出かける。そして、ひたすら湯と向き合う。私はこれを「ソロ温泉」と定義しているが、「温泉ワーケーション」と「ソロ温泉」は、目的によって使い分ければよいのだ。

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