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絶景温泉200#6【飯豊温泉・川入荘】

新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。

第6回は、飯豊温泉の川入荘(山形県)

車で山道を分け入っていくと、ぐんぐん緑が深くなっていく。どこを見渡しても緑の森と山ばかりである。

山形県の南西端、新潟県との県境に位置する小国町は土地の95%をブナなどの森林が占める。豪雪地帯でもあり、ブナの幹と雪の色のイメージから「白い森」というキャッチフレーズが使われている。

町の南部にそびえるのは飯豊(いいで)連峰。その主峰である飯豊山(標高2105m)は「日本百名山」のひとつで、選定者の深田久弥氏は「大きな残雪と豊かなお花畑、尾根は広々として高原を逍遥するように楽しい」と、著書の中でその印象を語っている。

その飯豊山の登山口に湯けむりを上げているのが飯豊温泉だ。約800年前に熊が湯で傷を癒やしていたところをマタギが発見したと伝わる。

飯豊温泉には3軒の温泉宿がある。「国民宿舎 飯豊梅花皮(かいらぎ)荘」「梅花皮荘別館 川入荘」が並び、さらにその奥にあるのが「飯豊山荘」だ。いずれも第三セクターが経営する宿で、飯豊山荘の2キロ先から湧く源泉が引かれている。

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絶景温泉があるのは「川入荘」。内湯とは離れた場所にある露天風呂は、脱衣所と湯船がつながった素朴な浴室だが、太い木が柱や梁、屋根にふんだんに使われ、雰囲気よし。

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5~6人が入れそうな湯船からは飯豊の山々の眺望が見事。真夏に訪れたにもかかわらず、見事な残雪を拝むことができた。深田久弥氏が見た「大きな残雪」と同じものだろうか。飯豊連峰を源流とする玉川も景色にアクセントを加えている。

湯に包まれながら深呼吸。体の内と外からエネルギーを充電するかのような心地となる。

泉質は ナトリウム・カルシウム・塩化物・炭酸水素塩泉。文字の並びが多いのは、さまざまな成分が豊富に含まれている証拠。

湯の色は基本的に透明だが、一見、赤茶色に濁っているような印象を受けるのは、湯船の底に湯の花が沈殿しているから。宿のスタッフさんから「毎日しっかり清掃しないと、湯の花が湯船などにこびりついてとれなくなるほど」という話を聞いて驚いた。これも温泉成分が豊かな証拠である。

加温、加水、循環ありと掲示があるが、湯のオーバーフローが多いため、それも気にならない。入浴感はきわめてかけ流しに近い。

川入荘の本館で隣接する「国民宿舎梅花皮荘」の浴室もすばらしい。木がふんだんに使われた浴場は男女別の入替制。露天風呂はないが、ガラス窓の向こうに雄大な飯豊連峰がそびえ、眼下には涼しげな玉川の渓流が流れるのは、川入荘と同じ。食事は山の幸が中心で、イワナの刺身や熊汁、山菜などが美味い。

飯豊温泉①

雪深い土地でありながら梅花皮荘は通年営業である。ただし、「川入荘」は冬の期間は休館で、オープンは4月下旬となる。雪溶けを待って訪れたい。なお、川入荘は立ち寄り入浴可で、梅花皮荘の宿泊者は川入荘の浴室も利用できる。

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